インバウンドコラム

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第18回 「九州は日本のクルーズ先進地になれるか? 『福岡クルーズ会議』から」

急速な広がりを見せるアジアのクルーズ市場。1月に開催された「福岡クルーズ会議」では、「アジア・クルーズ産業白書」を元に、市場動向や日本の港湾が取り組むべきことについて提言がなされた。世界の中で、九州だけではなく、日本全体としてクルーズマーケットを取り込んでいくことができるのか? 福岡への寄港時の受入体制も含めて検証してみたい。

目次
1.未曾有の可能性を秘めたアジア・クルーズ市場
2.福岡・日本は寄港地として選ばれるのか? 大型化への対応
3.望まれる入国審査のスピード
4.博多港、九州のクルーズ受入の強化

 

1.未曾有の可能性を秘めたアジア・クルーズ市場

 img01-41月22日に開催された「福岡クルーズ会議」は、福岡市主催、アジア・クルーズ協会が共催。

「全国クルーズ活性化会議」の会長を務める福岡市が、各会員が展開している「クルーズキャンペーン」の全国レベルの取組として、クルーズ事業にかかわる関係者を対象に実施した。

世界初のアジア・クルーズ市場に言及した研究レポートである「アジア・クルーズ産業白書」を元に発表が行われ、「急速な拡大を続けるアジア・クルーズ市場」を強烈に印象づけた。

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この白書を手がけたアジア・クルーズ協会は、主要クルーズ船社がメンバーの、世界的な組織であるCruise Lines International Associationのエリア(アジア)組織。
基調講演を行った協会会長のジナン・リウ(Zinan Liu)氏は、現在ロイヤル・カリビアン・クルーズのアジア地区副社長であり、ロイヤル・カリビアン社入社時より中国担当責任者として主要3ブランドの成長の指揮をとった実績もある。いわば、アジア、特に中国発クルーズの成長を牽引してきたといっても過言ではない。そのリウ氏が「今がアジア・クルーズ市場のファーストステップで、これからの10年までの成長がすさまじい」と語る。

img03クルーズ産業はもともと欧米で定着し成長。
カリブ海、地中海を中心にした世界のクルーズ人口は今や2000万人といわれている。
アメリカで1200万人、ヨーロッパで500万人、それに比して2013年にアジアでは134万人となっているが、2020年には394万人に成長していくと試算されている。

アジアマーケットの船社の構成は、スタークルーズ27%、ロイヤル・カリビアン社、コスタ・クルーズが各22%と3社で約70%のシェアを占める。
中国から福岡・九州に寄港するロイヤル・カリビアンとコスタ・クルーズが約半分を運航していることになり、特に東アジアで大きな影響力を持っていることになる。

 

2.福岡・日本は寄港地として選ばれるのか? 大型化への対応

いくらアジアのクルーズ市場が大きくなろうと、日本に寄港しないとその恩恵を享受することはできない。
アジアマーケットのボリュームゾーンである中国は、有給休暇をとれる期間の関係から7泊以上のクルーズは難しい。4~6泊のタイプに一番人気が集まるという。

本会議で、海外のクルーズ船社の立場から「クルーズ船社が日本の港湾に望むこと」を発表したロイヤル・カリビアン・クルーズ・アジア地区副支社長、ジアン・フェン・トン氏は、中国の港から行くことができるクルーズの泊数を日本の地図上に表し、5泊以内に九州がすっぽり入ることを示してくれた。(横浜を含む本州以西は7泊が必要となる)

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Quantum of the Seasが寄港可能な港とその泊数。福岡、長崎は対応できる港湾で、かつ5泊かそれ以下で寄港可能なことを示している

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ロイヤル・カリビアン・クルーズ アジア地区副支社長 ジアン・フェン・トン氏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主催者である髙島福岡市長も、北京や天津から5泊、上海から4泊で可能な福岡の地理的優位を力説していた。この面からみると、福岡・九州は日本の他の港よりショートクルーズを受け入れることができ、圧倒的に有利であるといえる。
実際に、博多港は2010年、2012年に外国籍クルーズ客船寄港数日本一となっている。

しかし、問題は日本国内の競争ではない。「2013年にはアジア全体で117の寄港地があった」(ジナン・リウ氏)といわれ、その中で選ばれるには港湾の整備と拡充というハード面の整備が必須となってくる。

新しくなり、大型化する船に対応できる港の設備】
成長する中国マーケットに対して、新しく大きな船がどんどん投入されていく。
例えばロイヤル・カリビアン社(以下RCI)では、乗客定員4180人の「Quantum of the Seas」や乗客定員5400人の「Oasis of the Seas」の登場が想定される。
「Oasis~」はクルー定員が2200人なので、7600人を乗せた巨大な船への対応となる。

img06以下、「Oasis of the Seas」で必要な条件
・岸壁の長さは380m以上
・埠頭付近の深さは-10.5m、進入するChannelの深さは-12.5mなど必要
・ターンする際に必要な港内の幅470m
など
これに対応できる日本の港湾は、博多(福岡)、神戸、名古屋など限られてくる。

 

【クルーズ客船にふさわしいターミナルの整備】
上海や香港は、大型クルーズ客船を受け入れるにふさわしいクルーズターミナルがある。また大連や青島などの中国のほかの港もターミナルを建設中。
博多港も新しいターミナルとバス駐車場を整備中だ。単に設備が整うだけでなく、クルーズ客の気分を高める雰囲気や、都心部への公共交通の整備なども求められる。「Oasis of the Seas」クラスであれば、乗客を輸送するバス駐車場も岸壁の近くに200台必要とされるなど、ハードルの高い課題が多い。

 

3.望まれる入国審査のスピード

港湾の整備は、予算面をクリアしても、基本構造の面で改善できないこともあるが、「入国管理の迅速化」は日本全体で早急に求められている要件であり、キーポイントであるといえる。例えば、韓国では中国人旅行者は通常ノービザであり、寄港時のイミグレーションもきわめて早い。これは寄港地決定の際の大きなアドバンテージとなる。
本会議では、この部分の簡素化および迅速化がどの船社からも出されていた。あるいは中国の港から日本の入国管理官が乗り込んでの入国審査も要請されていた。
他都市、寄港地より日本を選んでもらうには、このポイントは国をあげて臨まなければいけない。

 

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2月4日、コスタアトランチカが寄港した際の下船風景 バスでターミナルまで運び、入国審査を行う

 

4.博多港、九州のクルーズ受入の強化

博多港では2008年からの経験を生かし、入国審査官の数を増やしての入国管理の対応、観光ツアーへのスムーズな導入に成功しているように見える。

img08また、九州全体においても2012年の226回を最高に、2010年の152回、尖閣諸島問題で関係が悪化した2013年でも75回の寄港となり、日本全体のクルーズ産業の要であるのは間違いない。九州全体で、中国以外のアジアに拠点を有する船社の開拓や香港、台湾での新クルーズ商品など新たな九州クルーズの商品造成に努めている。

しばしば、クルーズによる経済効果を「寄港時間が短いので、売上増加や地域への貢献が少ない」と嘆く人がいる。もちろん、航空便でエリアを選んで来てくれる旅行者に比べれば、どっと押し寄せて対応もしにくい状況は否めない。
だが、中国人旅行者は他国の旅行者よりも購入額は大きい事実は変わらない。また、せっかく寄港してくれた旅行者の何割かでも「またゆっくり来たい」と思い、リピーターにつながるのならしめたものである。

とはいえ、寄港時間や予定がめまぐるしく変わる、日本人旅行の繁忙期にはバスもガイドも足りないなど、理屈ではない大変な状況は今まで関わった経験から痛感する。例えばボランティアガイドを手配していても、寄港時間が数時間変わり、あわてて手配をやり直すことも珍しくない。
不測の事態や船社の要望にどれだけ柔軟に対応できるかが大型クルーズ客船をお迎えする鍵になる。また、公共交通や市中のわかりやすいサインや、何より市民のウエルカムなおもてなしが必要になってくる。これは、大型MICEや真の観光立国になるための「受入体制向上のための厳しいトレーニング」と考えたらどうだろう。困難な状況に対応していくほど、外国人対応の底力があがっていくのではないだろうか?

月4日はコスタ・アトランチカが博多港に寄港した。40人乗りのバスが約60台動いたといわれる。しかし、着岸時間は早朝から午後1時に変更になり、関係各社はその対応に追われた。多くのツアーバスが入ったキャナルシティ博多で、春節キャンペーン対応の中国人留学生を手配していた私は、施設側の連絡を受けて稼動時間をスライドしなければならなかった。まだ暗い空の下を続々とバスが到着し、キャナルシティ博多では、団体バス停留所img09へバスが続々と到着した。写真では見えにくいが2階の通路を行列をなして中国人旅行者が渡っている中国人旅行者がバスを降りて館内にあふれる。電化製品やドラッグストアの袋のほかに、靴や洋服などをこまごまと購入している中国人も多かった。彼らに、福岡の街はどう映ったのだろう。また、来たいと思ってくれただろうか?
 飛行機と組み合わせたフライ&クルーズや、船内泊、またはスモールだけどラグジュアリーなクルーズなど多様な要望に応えていける福岡・九州になれるか。今年はまた勝負の年である。

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