インタビュー

印刷用ページを表示する

2011.12.09

国際自動車株式会社 代表取締役社長 東京ハイヤー・タクシー協会 理事 藤森健悦氏

快速するインバウンドへの注力がタクシー業界の変化へと繋がる

誕生から100年を迎えた日本のタクシー。歴史ある産業でありながら、ドライバーの高齢化や企業淘汰など、あらゆる問題を抱えている。業界を牽引する国際自動車株式会社の代表取締役社長である藤森健悦氏は、サービスのクオリティが世界レベルである日本のタクシーが、現状に甘んずることなく、常に進化を続けることが必要だと説く。業界の発展とインバウンドにおけるタクシーの役割について語っていただいた。

プロフィール

長野県諏訪出身
昭和36年 3月:株式会社三和銀行入行
平成 7年 4月:株式会社三和銀行よりケイエムリーシング株式会社へ出向
平成 9年 11月:ケイエムリーシング株式会社営業第一部長に就任
平成13年 6月:ケイエムリーシング株式会社取締役に就任
平成16年 9月:国際自動車株式会社取締役に就任
平成19年 3月:国際自動車株式会社 専務取締役に就任
平成19年 12月:ケイエムリーシング株式会社代表取締役社長に就任
平成20年 6月:kmホールディングス株式会社取締役就任(現在に至る)
平成21年 11月:ケイエムリーシング株式会社 代表取締役社長を退任
平成22年 6月:国際自動車株式会社 代表取締役社長就任(現在に至る)
      :ケイエムリーシング株式会社取締役に就任(現在に至る)
平成25年 5月:一般社団法人東京ハイヤー・タクシー協会理事に就任(現在に至る)

 

タクシー業界の地位向上を目指す『ホスピタリティ・ドライビングkm』

村山

御社では、インバウンドに対する取り組みを実施されているとお聞きしますが、どのような見地から施策を打ち出されてきたのでしょうか。

藤森

羽田空港に来られた外国人観光客の方は、初めて触れる空港の案内係の方々の対応により、日本そのものの印象が決定づけられると聞きます。
同様に、私どもが運行するタクシーやハイヤーのドライバーの印象も重要であると考え、「私たちの背中はkmの顔です。私たちの背中は東京の顔です。私たちの背中は日本の顔です」というキャッチコピーを配布して、ドライバーの意識向上に努めてきました。

さらに、今年の1月に新たな企業理念を発表。kmグループにある4600台の車両(タクシー3200台、ハイヤー1200台、バス200台)、9000人強のドライバー全員に対し、お客さまへの感謝の重要性、そしてkmブランドの向上を通じてのタクシー業界の発展、ひいては社会貢献への取り組み、この根幹となるのが『kmのホスピタリティ』であることを改めて訴えたのです。これはすなわち、全社員の意識を変えることで、業界の地位を向上させようという狙いがあり、それが目下の私にとって重要なミッションであると捉えているのです。

 

村山

業界の地位向上がインバウンド促進に繋がるというお考えなのですね。

藤森

その通りです。目指すのは、お客さまの笑顔を私たちの喜びとする「ホスピタリティ・ドライビング」。
マニュアル通りではなく、「その時」、「その場」、「そのお客さま」に最善と思われるサービスを提供することが必要ですが、人間の意識というものは、急に変えることはできません。特に、東京のタクシードライバーの平均年齢が57.9歳となり高齢化が進んでいるわけですから、状況は深刻です。新しい考え方に対して柔軟性にとらえ、労働集約型の産業であるがゆえに人材の質は大変重要です。

このままでは、インバウンドへの対応はおろか、業界そのものが、時代から大きく取り残されてしまう可能性もあるのです。危機感を強くもって取り組まなければなりません。

 

そこで私たちは、4年前から新卒大学生、および外国語を話せる人材の登用も進めつつ、現場で活躍してきた優柔な人材、特に40代の社員たちを、子会社の幹部とするなど、世代交代を進めてきたのです。この取り組みにより当社の平均年齢は52.9歳と効果が出始めていると実感しています。

 

村山

若返りを図ることで、時代の変化に対して柔軟な対応ができる組織づくりを進めているのですね

藤森

真っ白なキャンパスに新しいタクシーの可能性を描いていく。すなわち可能性のある人材を確保し、育成することでインバウンドへの取り組みを強化し、同時に業界全体の発展に寄与していきたいと考えているのです。

 

バイリンガルドライバーの拡充と観光タクシーサービスの強化

村山

外国人観光客に向けて、具体的にどのようなサービスをご提供されているのでしょうか。

藤森

元々、外国から国賓やVIPの方々をお招きして実施される国際的なイベントにおいて、私たちkmのハイヤーが利用されることが多く、外国語ができるドライバーの登用には積極的でした。現在タクシーでは、英語を操れるドライバーが500人以上、中国語、韓国語が堪能な者も数多く在籍しています。今後のインバウンド需要の増加に向け、さらなる拡大を画策しているところです。

 

村山

それは、タクシーを呼ぶ際に、バイリンガル対応のドライバーを指定できるということでしょうか。

藤森

そうです。
現在では、WEBやスカイプ電話によるご予約に対応しており、こちらにもバイリンガルのオペレーターを配備し、親切丁寧にご案内をしています。

また、最近では、マレーシア、シンガポール、台湾や香港などアジア各国を中心にアメリカ、イギリス、フランスなど欧米からお越しになられる観光客のご利用が増加しているため、各国語が堪能な社員の採用も本格的に検討しているところです。

村山

多くの外国人の方々がkmタクシーを利用されているのには、何かその背景に特別な営業施策などがあってのことなのでしょうか。

藤森

中国や韓国をはじめシンガポールなどアジア諸国の日本旅行者に配布するパンフレットへの広告掲載、在日外国人の社交クラブの会報誌やその他在日外国人情報誌への広告掲載、観光業界が主催するトラベルマーケットなどのイベントに、当社のサービス案内を配布するなど各種プロモーションを積極的に実施しています。

その甲斐あってか、利用料金が定額となる「成田定額タクシー」「羽田定額タクシー」の空港送迎サービスや、6人乗りのワンボックスタクシーも、グループや家族単位の観光客の方々にとって単価がお安くなることで好評を博しています。また、東京の名所・旧跡を巡る観光タクシーも人気が高まっており、さらに注力していきたいと考えています。

 

村山

観光タクシーは面白いですね。ドライバーの方がご案内をされるのでしょうか?

藤森

当社の観光バス部門のバスガイドがお客さまに喜んでいただけるノウハウや観光スポットのデータとマニュアルを保有していますので、このデータを編集、英訳し活用しています。


さらに、一歩踏み込んだサービスとして、それらの名所・旧跡が、来日される外国人の方の母国とどのような関係性があるのか。過去の歴史などを盛り込みながらご説明できれば喜んでいただけるのではと検討中です。いうなれば、私たちは、感動を与える観光を推進したいということです。

 

さらに、タクシー以外に、路線バス事業として「お台場レインボーバス」と「kmフラワーバス」を運行。全車両に公衆無線LANサービスを搭載し、こちらも外国人観光客の方々にご好評いただいている状況です。

 

さらに進化を遂げることで日本のタクシーサービスは世界に飛躍

村山

業界の発展に寄与していきたいとおっしゃる藤森社長ですが、今後の展望をお聞かせいただけますか。

藤森

日本にタクシーが誕生してから100年が過ぎました。これは、他の乗り物と違い、ドアツードアで利用ができる独自性があるがゆえのこと。良い意味でも悪い意味でも、変わることのない業界だと言えます。だからこそ、改革を進める必要があるのです。

私の持論ですが、サービス、ホスピタリティの面においては、当社とライバル会社である日本交通のタクシーはともに世界レベルだと自負しています。

確かにイギリスのロンドンタクシーやアメリカのイエローキャブも世界的には評価が高いのですが、前者はドアも自動ではなく、ドライバーが開けてくれるわけでもありません。後者に関しては、決してサービスが良いとは言えず、チップを必要とするから、価格的にも日本のタクシーと変わりません。ハード、サービスの面においては、この二つに引けを取ることはないと思うのです。

 

村山

確かにおっしゃるとおりですね。私もアメリカに留学していたので、イエローキャブの実情は理解します。それだけレベルの高い日本タクシー業界では、海外における事業展開も可能ではないのでしょうか。

藤森

サービス業としての日本のタクシーを高く評価する国民性がある国であれば、海外進出もあり得るとは考えています。

東京では、従来、法人客が多かったのですが、リーマンショク以降、法人の契約数が大幅に減少し、その半面、個人客の利用が増えています。個人のお客さまは、どのようなときにタクシーにご利用になっているか。急いでいるとき、雨が降っているとき、荷物が多いとき、病院に行くとき。つまり、「困ったとき」です。私たちの願いは、そのようなお客さまをはじめ、もっと気軽にタクシーを利用していただくことです。そのためにも、もっとお客さまに心を寄せていかなければいけないと考えています。

近距離でご利用になるお客さまが、「近くて申し訳ありませんが・・・」と言われてご乗車になることがよくあります。利用するお客さまが、サービスを提供する側に気を使われる、サービス業として考えられない現実です。外国人の方々にとっても同様でしょう。こうした現実を変えていくために、会社自らが変わっていかなければなりません。

 

村山

確かに、料金が安くなれば、外国人観光客の方々もタクシーを利用しやすくなりますね。最後に、インバウンドを盛り上げるアイデアなどございましたらお聞かせいただけますでしょうか。

藤森

東京を象徴する文化ということで、江戸城の天守閣の木造で再建することを提案します。大阪、名古屋などにお城があるのに、首都にないのは寂しいですし、江戸城は天下泰平、平和の象徴です。
外国人観光客にとっても魅力的な観光スポットになるに違いありません。

 

村山

それは、大変面白いアイデアですね。

藤森

とにかく、新しいことにチャレンジしなくては、その場で足踏みして停滞するだけです。当社は、常に新たなサービスを導入し、進化を続けることが重要だと考えています。

 

村山

本日はありがとうございました。

 

最新のインタビュー

バックナンバー

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年