インタビュー


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2011.06.09

原宿表参道欅会 商店街振興組合 理事長 松井 誠一氏・副理事長 穐山壮志氏

商店街、住民、企業が一体となる街づくりが実効力あるインバウンドに繋がって行く

外国人にも人気の観光スポット「原宿・表参道」。今回は『原宿表参道欅会』の理事長である松井誠一氏と、インバウンド担当副理事長の穐山壮志氏にお話しを伺いました。1973年に設立された前身となる“原宿シャンゼリゼ会”の発足当初から「キープ・クリーン/キープ・グリーン」というスローガンを掲げ、商業振興と地域環境の両面で活動を続けておられます。2010年から本格的にインバウンドを意識するようになったものの、銀座や新宿のように団体客を受け入れるのが難しい地域。そこで“3段階の施策”を打ち出し、実行に移されています。

 

松井 誠一 理事長プロフィール
1951 年青森県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。学生時代から表参道にある父親の店を手伝い、卒業後「原宿シャンゼリゼ会(欅会の前身の商店会)」理事に就任。以来、表参道の街に関わり続ける。2006 年7 月より第4 代理事長。趣味はダイビング。

 

穐山 壮志 副理事長プロフィール
1968 年6 月東京・練馬生まれ。1991 年3 月慶応大経済学部卒。同年4 月森ビル入社。2008 年11 月から表参道ヒルズの2 代目館長。同年、原宿表参道欅会副理事長に選任。2010 年からインバウンド3 ヶ年計画を陣頭指揮して推進。モットーは「誠心誠意」。趣味は「深掘りせず、間口を広く」と常に心がけている。

 

商店街振興組合原宿表参道欅会について
昭和48年4月表参道と神宮前交差点両側の明治通り沿いを区域とする「原宿シャンゼリゼ会」として設立し、昭和60年8月商店街振興組合として法人化。平成11年9月原宿の発祥の地に位置すること、歴史的に明治神宮の表参道であること、シンボルである欅(けやき)から「原宿表参道欅会」と名称を変更。平成24年12月時点の会員数は230社で加盟店は約500店舗。原宿表参道地域の生活環境の向上と商業の健全なる発展を目指すことを主たる活動目的として、その目的の達成手段として良い環境作りということに重点を置いている。人間が幸福になる街を創造するということが最も大切であると考え、民間レベルで活動し得ることを最優先に商店や企業、住民とが一体となって上記目的の達成のために活動している。

 

先進的な理念と独自の地域連携が現在の魅力的な街を形成

村山

本日は原宿表参道欅会の理事長である松井誠一さんと、インバウンド担当副理事長でいらっしゃる穐山壮志さんのお話を伺います。私もこの街が大好きなのですが、改めてその魅力や存在価値について、お考えをお聞かせいただけますでしょうか。

松井

この緑豊かで美しい景観と、どの路地に入って歩いてもまったく問題のない安全性。これは商業以前のもっとも基本的な街の魅力といえるでしょう。そのベースの上に商業があるし、そしてオフイスや住宅などがバランスよく存在している。

ビジネスや住宅街など、ある目的や機能に特化した街ではなく、日常的に必要とされるすべてのものがそろっているのです。そういう意味では、例えばアウトレットや大型ショッピングモール、あるいは新宿歌舞伎町が持つ“非日常性”ではなく、“日常のハイクオリティ”を有する街であると考えています。

 

村山

存在自体が大変ユニークな街といえますね。

松井

歩きたくなる街、歩いていて楽しい街という感覚でしょうね。私ども原宿表参道欅会の前身となる“原宿シャンゼリゼ会”は1973年に設立されたのですが、当初から「キープ・クリーン/キープ・グリーン」というスローガンを掲げて活動をしていました。
70年代初頭という時代に、ひとつの商店街が商業振興とかけ離れた環境意識を持っていたということが驚異的ですね。元々この地で商売をしていた私たちの先代にあたる人間たちは、この美しい環境を有する街のよさを共有できるように、立地的な価値に目をつけて次々に参入してくる企業さんや店舗に対して啓蒙していくことが、義務と感じていたのでしょう。

その思いがベースとなり、以降、街全体の発展に関わる取り組みに対して、住民も商業従事者も意識が高まっていったのでしょう。

 

村山

なるほど。地域内連携の素地が当時から出来上がっていたのですね。

松井

古くから商売を続けている人や新規参入してきた企業さん、さらには住人の方々とうまく連携を取っていくベストな方策というものは明確に示すことはできませんが、このエリアはそれがうまくいっている例だと思っています。

それは特色あるコミュニティづくりがよい効果をもたらした結果といえます。

一般的なコミュニティは住民中心か、あるいは商店街が中心に形成されるものですが、私どものエリアは、企業もそこで働いている人も、あるいはこの街が好きで買い物に来たり散歩に来たりしている人もコミュニティの一員と捉え、一緒にイベントや清掃活動などを行っているのです。

結果、単なる商業振興のためのイベントではなく、街全体を盛り上げるという意義を持ったイベントになりますし、さらに街の景観や安全を自主的に守っていこうという意識付けにつながっていく。

商業と住宅という対立図式ではなく、それぞれの立場の人間がそれぞれ利害から離れたところで、一緒に街づくりを進めていこうということで、真に一体となっていくことができるのだと思います。

 

段階的なインバウンド施策と東京ファンウィークがもたらしたもの

村山

そんな魅力的な街が実施するインバウンドへの取り組みとは、いったいどのようなものなのでしょうか?

松井

以前から少しずつ取り組んでいたのですが、本格的にインバウンドを意識するようになったのは2010年から。

この原宿・表参道エリアは、銀座や新宿など他の街とは違って団体観光客を呼ぶことが難しく、どうしても個人客が中心となってしまいます。したがって、この街に何度も来て下さるリピーター作りが必要不可欠となってきます。

こういった根本的な発想から3段階の施策を打ち出し、実行に移してきました。
まず1段階目として、この街でストレスを感じないで、あたかも自国でリラックスして過ごすことができるような環境をつくっていくことを意識し、言葉の問題やショッピングにおける決済習慣の違いをクリアしていきました。もちろん、商売としての対価を得ることは大切ですが、それ以前に、ストレスを軽減することで、この街を楽しみ、滞留していただくことを目的としたのです。
そして、第2段階として、SNSなどのインターネット・サービスを活用し、外国の潜在客に対して情報を発信。
そして、3段階目として、旧来の旅行代理店など通じ、積極的な誘致を進めていった経緯があります。

 

村山

効果はいかがでしたか?

松井

アメリカやヨーロッパの方々は、これまでも比較的多くいらしていたので、ターゲットとして東アジアを意識し、情報発信を強化したことで、この2月末まで実施していた訪日客促進キャンペーン「東京ファンウィーク」では、シンガポール、マレーシア、タイの方々が多く参加されていました。

穐山

「東京ファンウィーク」の趣旨は、あくまで“この街を楽しんでもらう”こと。したがって、参加店の割引優待ではなく、もっと立体的な、例えばツアー形式で街を散策してもらったり、スタンプラリーを実施したり、公共FREE Wi-Fiを設置してSNSと連動したり、普段の観光では味わえない街の魅力を伝えることを主眼としたイベントとしました。

企画に関してはコンサルや企画会社を入れず、すべて観光協会さまと欅会の実行員会で一緒に考え、アイデアを出し、文化祭のようなノリで進めていきました。コスト面もそうですが、自分たちの手ですべてを企画したことで、画一的なものではなく、この街の本質、すなわち“多様性”を表現することができましたし、参加されたお客さんとの距離が非常に近くに感じられた、意義あるイベントとなりました。

松井

街全体がこのキャンペーンに賛同して積極参加をしてくれたのも、スムーズな運営が可能となった要因のひとつでしょう。先にも述べたように、この街に属するすべての人の意識が高いということ、そしてこれまでのコミュニケーションの積み重ねが功を奏したのだと思っています。

 

キーワードは自己の財産の再発見と人の心をつなぐコミュニケーション

村山

今回のイベントを終え、商店街がインバウンドを実施する上で起こるべく問題点など、改めて見えてきたことはございますか?

穐山

やはりコストの問題でしょう。今回は、東京観光財団やVISAさんが強力にバックアップしてくれたことで充実した内容のキャンペーンを実施することができました。しかし、これも商店街単独ではなく、街全体を巻き込んで実行していたからこそ応援してくれたという部分はあると思っています。

 

村山

なるほど。周囲と連携することで協力者を得るということは重要かもしれませんね。

穐山

商店街同士の連携も必要ですよね。外国人観光客から見たら、街と街との間に線を引いているわけではないのですから、周囲と連動して、連続した多様性を提供していくべきだと思います。それは10年後、20年後のビジョンを共有することで一体化できるような気がします。行政と連携することで可能となるのではないでしょうか。

 

村山

おっしゃる通りですね。それぞれに素晴らしいコンテンツを持っている街が連続することで、さらにその魅力も拡大していきそうですね。ところで、現在のインバウンドにおける問題点について松井理事長の考えをお聞かせいただけますか?

 

松井

外国人の方々が日本のどこにいきたいか、なぜそこにいきたいのか、どういう楽しみ方をしているのかを分析し理解すべきですし、そして自分たちが何を持っているのか正確に把握すべきだと思います。恐らく、多くの方々が、これまで東京というのは観光とは関係のない場所であると思っていたでしょうから、これをよい機会とし、自らの観光資源や財産を再発見すべきだと思います。あとはコミュニケーション。対話を積みかさねることも大切ですね。

村山

せっかくよいものを持っていても、伝える手段がないと意味がありませんからね。

松井

言葉を交わすだけではなく、感動や体験の共有から生まれる意識の交流ほど、いつまでも人の心の中に印象として残るものはありません。

私たちが主催している“スーパーよさこい”には、ベトナムのチームも参加しています。彼らが国に帰って、知人に街の様子を話したり、また数年後に観光に訪れて「この街で踊ったんだ」という思い出を持ってもらうことで、ここはその人にとって特別な場所になります。
これも意識の交流の一種です。
現在、“スーパーよさこい”はタイやゴールドコーストのお祭り紹介イベントにも参加し、各地で強烈な印象を残しています。自分たちが持つよいものを武器に、海外の人々の心に響く形でアピールしていくことが重要なのではないでしょうか。

村山

本日は、ありがとうございました。

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