インタビュー

2015.12.24

UDS 代表取締役会長 梶原文生氏

外国人に刺さる宿泊施設をプロデュース

斬新な宿泊施設の企画・デザインを手掛けるUDSは、インバウンドの考え方をいちはやく導入していた。人口減少の日本では、外国人旅行者のニーズも大切だとクライアントに訴え続けたのだ。また一方で、自社運営する宿泊施設もあり、そのノウハウが積み上がり、企画の幅も広がったという。
そんなUDSが新しくバックパッカー向けの格安のホステルを浅草に2015年12月に開業。どんな魅力が詰まった宿か楽しみだ。

目次:
UDSの概要
なぜインバウンドに参入
BUNKA HOSTEL TOKYOを新しくてがける
インバウンドで気を配っている点

1:貴社の概要を教えてください

私たちは設計事務所が大きな柱になっています。
設計事務所というと設計だけをやる会社が多いですが、私たちは他に企画とオペレーションの計3つのセクターでやっています。ひとつの専門領域だけではなかなか答えが出ないことも多くあります。例えば、ホテルのオペレーションを担うことで別の視点が加わり、ホテルの設計も充実するなど、好循環になります。

最初はコーポラティブハウス事業を行っていました。マンションの購入希望者に集まっていただき、みんなで土地を買って設計して工事を発注します。みんながマンション建設を目的にした組合の組合員となり、一緒になって事業を進めていくイメージです。

ホテル業もやり始めたのは13年くらい前です。旅館はすごく日本的なものですが、ホテルはヒルトンさんやシェラトンさんなどの欧米から来たものが多い。そこで、もっと日本らしい形のホテルがあってもいいのではないかと思ったのがきっかけです。

個人的にはコーポラティブも自分の住みたいものを作るという考えから始まりました。当時は友人に紹介したくなるようなホテルがあまりありませんでした。新しいホテルを企画しては提案していましたが、仕事はいただけませんでした。それなら、自分たちでやってしまおうということで、自分たちで借り上げて始めてしまったのです。

自分たちで古いホテルをリノベーションして経営を始めました。それがCLASKA(クラスカ)というホテルです。
基本的にはクリエイターの集まる場所という捉え方をしていて、ギャラリーが2階にあり、3階にシェアオフィスがあります。今ではシェアオフィスは一般的ですが、当時はとても目新しいものでした。4階と5階にホテルが入り、6~8階はサービスアパートメントを複合させたものになっています。
ホテルのターゲットは欧米人です。海外でもいろんな賞をいただき、今でも欧米の方に人気です。

欧米人はホテルの形態を好みますが、せっかくだから日本らしいところに泊まりたいという方も多くいます。日本らしいというのは、古典的な和風やアニメーションなどいろんな解釈がありますが。

CLASKAを手がけてからもホテルの設計を数多く受けていますが、ホテルに投資をするというのがどういうことかわかっていると、相手の立場に立って考えることができますね。

2:なぜインバウンドに参入されたのですか?

最近は人口減少が大きく取り沙汰されていますが、これは10数年前から予測できていたことです。私たちが他の産業と違うのは、人口減少になると需要が減ってくるということです。
しかし、建物を作ってしまうと50年、100年も維持することになります。1億2千万の人口に対してすでに十分なだけの建物があるので、これから人口減少になると新しく建物を作る必要がなくなってきます。

だから設計事務所としては仕事が減っていくことはわかりきっていました。だったら、古い建物のリノベーション、あとは海外に目をもっていく、他の産業に目を開いていくしかありません。いろんなことをやっていかないと、生き残れないのではないかという危機感がありました。

そこでインバウンドを視野に入れたホテルを目指していこうと。

経営者と話していると、どの方も人口減少のことは頭にはあります。出生率が2.0を超えれば人口を1億人ほどで保つことができますが、今の1.4とか1.3という数字でいくと65年後には人口が半分近くになります。これを言われるとドキッとします。でも、言われないとみんな知りません。

みなさんリスクを取りたくないのでインバウンドはあまりやりたくありません。たとえば、ホテルに中国人を入れるとサービス対応ができないし、日本人のお客さんに迷惑がかかるという考えの方もいます。しかし、これから人口が半減するという数字を見せると、そんなことを言っていられる状況ではないことに気付きます。

今はインドネシア、中国、フィリピン、ベトナムは6~8%程度の成長率を見せています。彼らが成長していく中でビジネスチャンスは発生します。今のインバウンドを捉えて考えることも大事ですが、10~20年後のインバウンド業界はどうなっているか、日本のマーケットはどうなっているか。その中で宿泊業として、レストラン業として、不動産業として、鉄道業として、ちょっと想像をしましょうよと。そうすると、やらざるを得ません。でも、そのときにスタートしても間に合わない。今やるしかないという話をしております。

3:BUNKA HOSTEL TOKYOを新しくてがけられますが?

海外のお客さんが多様化してきています。
欧米系のアッパークラス、一般のファミリーの方、若いバックパッカーの方もいます。日本はアッパークラスのための宿が揃いつつありますが、若い方など宿泊にお金をかけたくない場合は安いビジネスホテルに行くか、古い旅館やゲストハウスに行くかしかありません。
しかし、外国の若い人たちが日本に興味をもってくれている現在、ローコストの宿泊施設もすごく大事で、その人たちのために部屋を安く提供しなくてはいけません。2段ベッドタイプのホテルのニーズも確実にあります。
そこで今度、新しく浅草にBUNKA HOSTEL TOKYOというモダンな格安宿を開業するのです。

ホテル業界は人手不足で、夜勤もあるので楽ではない仕事です。ですが、私たちはありがたいことに採用にはあまり苦しんでいません。他のホテルよりも特色があるので、こういうところで働きたいと言っていただけることが多くいらっしゃいます。

4:インバウンドで気を配っている点について教えてください

コンセプトをどう決めるかはケースバイケースですが、既存の建物を見て判断します。需給バランスも意識しています。ビジネスは需給バランスで決まるところがあるので、供給が少なくてお客さんがたくさんいれば稼働率は高くなります。
私は建築出身の人間なので、企画と設計と運営をもっているという強みを感じます。

私たちが運営しているホテルカンラ京都という高級ホテルは稼働率90%を超えています。仏壇屋さんとセブンイレブンの間の細い路地を入っていき、目の前にはふつうの民家があり、決して良い場所ではありません。もともとは予備校だった建物をリノベーションしていますので、ホテルに適した環境ではないのです。

ただ、今はインバウンドの取り込みに成功していて、客単価も上げている状況です。

私たちが運営で意識しているのはコミュニケーションをしっかり取ることです。単純に宿を提供して泊まってもらうだけではなくて、せっかく日本に来ていただいたいているので、的確に情報を届けることを充実させています。それによって大規模でなくても、場所が良くなくても、4万円近くの値段がとれるようになります。そのあたりを評価していただいて成功しているのかなと思っています。

取材後記:
早い時期から国際感覚を持ち合わせたホテルの企画・設計さらに運営を手掛けている。スタッフも他国籍の外国人が多く、情報がフィードバックされるのだろう。人材についても先日やまとごころキャリアでサポートしたのだが、応募が多かったのは、やはりその魅力に共感する人が多いからだ。今後もどんなホテルが出現するのか目が離せない。

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