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12回 インバウンド施策成功の秘訣は恋愛と同じ!?

2015.09.24

ひとくちに外国人と言っても、どの国のどういう人を対象にしたいのか、するべきなのか?外国人観光客のハートを掴むためにはターゲットを絞り込み、相手を分析し、相手が魅力と感じるためのアピールをすることが必要不可欠だ。これって、なんだか、好きな相手を喜ばせて、自分を好きになってもらうために努力する恋愛と同じ!?
<2015年9月24日>

目次:

“インバウンド“という言葉、いつから使っていますか?
アフター“爆買”のリスク分散は?
インバウンド施策の成功は恋愛と同じ!?

 

“インバウンド“という言葉、いつから使っていますか?

今年に入り、毎日のように“急増する外国人観光客”について、あるいは中国人観光客の“爆買”についてメディアが報じている。
弊社にも毎日のように海外でのプロモーションや外国人観光客向けの広告展開について問い合わせがあるが、このブームに多少の違和感を覚えるのは筆者だけだろうか?

そもそも“インバウンド”という言葉は、旅行会社やホテルなどの旅行業界用語であり、一般の人が使うことはほとんどない言葉だった。

海外で、“インバウンド”という言葉を使うのは団体旅行客を対象にしている飲食店やお土産店くらいで、街中の一般的な店舗が“インバウンド”という言葉を使う例は非常に少なく、一般的ではない。

もちろん、外国人観光客市場拡大は日本の国策でもあり、お金をたくさん使ってくれる外国人観光客を呼び込んで、店舗の売上をあげたい、地域を活性化させたいという気持ちはよく理解できる。しかし、なぜ外国人観光客市場に参入したいのか、また外国人と言っても、どの国のどういう市場を獲得していくのかを明確にしていかなければ、その施策は迷走しかねない。ここが非常に危惧する点だ。

日本における外国人観光客誘致拡大、そして日本の魅力を世界に発信し続けることは、日本が抱える様々な問題解決につながると信じている。だからこそ、一過性での“インバウンド”ブームで終わらせるのではなく、今後長い時間をかけて、ずっと継続して行っていくことが大切であると思う。
そのためにまずは、インバウンドの真の目的、理由、具体的な方向性を明確にすべきだなのだ。

 

アフター“爆買”のリスク分散は?

今の“インバウンド”ブームは、中国人観光客、特に団体旅行客の“爆買”ばかりにフォーカスがあてられ、このブームに乗り遅れると時代遅れとでも言わんばかりの印象を、メディアが煽っているように感じられる。インバウンド施策=中国人“爆買”客獲得というような方程式は安直に思え、残念でもある。

先日、大阪では、ある大手広告代理店のインバウンド担当者が、雑談の中、いまの大阪では“アフター爆買”が深刻なテーマになっていると話してくれた。

ある飲食店では、旅行会社が送りこんでくる中国人団体旅行客を受け入れるようになり、店の売上も伸びたが、もともと来ていた日本人客の数が激減してしまい、中国人団体旅行客頼みとなってしまっているそうだ。

確かに中国大陸からの観光客数は急増しているが、いつまでも増え続けるとは限らない。そして、この懸念は大阪に限らない。昨今は中国の株価暴落の影響も気になるところだし、日中間の外交問題などで、大幅に観光客が激減しないとも言い切れないはずだ。

インバウンド=外国人観光客の集客に力を入れるというのであれば、中国人市場に限らずに、複数市場にリスク分散するべきではないかと考える。

そのためには、対象となる国の人たちの文化や嗜好を理解して、彼らに魅力的に映るコンテンツ(サービス提供、メニュー開発、商品開発等)を用意する必要がある。アフター爆買になる前に、いまから真剣に取り組むことが大切ではないか。

 

インバウンド施策の成功は恋愛と同じ!?

地域の取組みとしては、数字が取れるからといって、安易に中国人市場をターゲットにするのではなく、自分たちの地域の魅力は、どういった人に魅力的に映るのかを冷静に分析し、対象市場を見極めて行くことが大切だ。

地域が持つ独特の文化や歴史、観光コンテンツは、どの国のどういう人たちのハートを捉えるのか?
以前からこのコラムでも述べているが、国、文化、習慣が違えば旅行に求める価値観が違うのは当然であるし、さらに国籍に関係なく、個人によって趣味嗜好が細分化されるのは、外国人でも日本人でも同じ。ラグジュアリーな旅が好きな人もいれば、バックパッカー旅行が好きな人もいる。

地域を好きになってもらう=地域の魅力を魅力的に感じてもらうためには、対象となる相手を理解し共感を得なければならない。そして積極的にアピールすることが大切だ。非常にシンプルな理論であり、恋愛と同じではないか!!

弊社のオランダ人編集者が、山梨県北杜市の取材に行った際のスタッフブログを参考にしていただければ幸いだ。
⇒『WAttention』山梨県北杜市、取材レポート!(2015年9月16日)

 

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後半の下りにて、オランダ人本人と、同僚の台湾人ライターとでは「同じものを見て、食べて、体験しても、その感想がまったく違う」とある。

もちろん、共通で魅力と感じることも多々あるはずで、対象市場を絞り込み、集中してアピールすることは効率の良い施策だと。が、地域の良さをアピールするポイントを、対象市場に寄って変えるのも一つの方法だと思う。

恋愛攻略法の正解が一つではないのと同様に、インバウンド施策の正解はひとつではなく複数あるが、やはり共通するのは「対象となる相手を絞込んで、相手を理解し、アピールする魅力=コンテンツの掘起」が“はじめの一歩”のような気がしている。

そして一過性で終わるのではなく、継続して発信し続けることこそ、地域の魅力をブランド化する道筋になるはずだ。
弊社もこのインバウンドブームに踊らされず、冷静に市場の動きを見極め、初心貫徹、日本の魅力を発信し続けていきたい。