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~人民日報海外版から~

【人民日報】第57回 世界を疾走する中国のシェア自転車

2017.11.15

中国「新四大発明」の一つと称せられるシェア自転車が近頃、小走りかつスピーディに世界を駆け巡っている。より多くの国・地域に住む利用者に全く新しいスマート外出ソリューションプランを届けることが、シェア自転車の「海外進出」長期戦略だ。だが、現地での規範化管理をいかに上手く行うかが、シェア自転車企業が総力を挙げて取り組むべき重要課題となっていることは、疑う余地がない。

ちなみに、すでに中国発のシェア自転車が日本の札幌にも上陸している。地元の日本人さらには中国人旅行者のニーズとマッチングするか、今後の動向に目が離せない。

 

 

「エコ外出」の理念が普及、海外市場開拓が加速

中国のシェア自転車企業「摩拝単車(モバイク)」は8月30日、9月からバンコクに進出し、バンコク市場を開拓することを発表した。モバイクは同日、バンコクにあるタイ国内の提携企業と協力合意書を取り交わした。今年8月初めの時点で、モバイクは世界に1億人以上のユーザーを擁し、1日延べ2500万回以上の自転車レンタルサービスを提供するまでの規模となった。

モバイクは8月23日、北海道・札幌市で日本でのサービス開始にあたってローンチイベントを開催し、日本のシェア自転車市場に正式に参入した。日本の利用者は、アプリストアでモバイクアプリをダウンロードしたのち、クレジットカードと紐づければ登録作業が完了する。3000円のデポジットが必要で、キャンペーン期間中は30分50円の料金で使用できる。

中国のシェア自転車サービスで、モバイクの競合会社であるofoも、海外市場開拓の足並みを止めることはない。統計データによると、ofoは現時点で中国を含む9ヶ国・170都市へ参入しており、800万台以上のシェア自転車を投入し、延べ30億回以上のレンタルサービスを提供している。

同社は8月21日、英オックスフォードに参入することを発表した。これは、4月のケンブリッジに続き、英国で2都市目の海外市場開拓となる。前回に比べ、今回のオックスフォードでのサービス展開については、「高いスマート性能」と「英国権威部門による認可」という2つの特徴を備えている。

また、ofoは8月、米国市場への参入も順調に果たした。同社はシアトル交通局の認可を獲得しており、シェア自転車1000台をシアトルの市街地に供給する予定という。

オックスフォード市のアプトン市議は、「シェア自転車システムは、より多くの人のエコ外出を実現し、交通渋滞や大気汚染の問題を緩和することができる。我々は、ofoのような新たなシェア自転車スタイルがオックスフォードで普及することを大いに期待している」とコメントした。

 

海外での幅広い認可を獲得

自転車での移動は臨機応変で素早く、目的地までの渋滞のさなか、「最後の1キロ」というケースに最適な選択肢といえる。汚染ゼロ、排ガスゼロであることも、低炭素エコ交通機関の鑑である。海外において、さまざまな科学技術革新が集約されている中国のシェア自転車は、幅広い利用者から高い評価を得ている。

科学技術は、中国のシェア自転車が海外進出を行う上での絶対条件だ。スマート位置測定、モノのインターネット、ビッグデータに基づく精密化された運営・管理に関する技術は、中国のシェア自転車市場で勝利するための有効手段である。

たとえば、モバイクジャパンが採用した「ソリッドタイヤ」は、空気を入れる必要がない。車体に備え付けられたモーターは、スマートロックに電力を供給する。GPS位置情報技術によって、モバイクのビッグデータが収集される。また、これらのデータは、市政・交通管理部門に施策決定のための参考情報を提供し、都市交通管理とインフラ計画に貢献する。

ofoは、中国で初めて英国シェア自転車管理協会「Bikeplus」の認証を獲得した、乗り捨て可能なシェア自転車を運営する企業だ。 

「Bikeplus」のディレクターを務めるロバーツ氏は、「シェア自転車業は今、急成長期にあり、政府による監督管理体制の最適化が極めて重要な鍵を握っている。ofoを『Bikeplus』の認証システムに組み入れたことは、極めて前向きな試みであり、これによって利用者と管理部門のニーズに対応できることは確実だ」と強調した。

 

都市に合わせたスマート発展

中国のシェア自転車が海外市場を開拓することは、スマート都市への発展やスマート交通・物流網の構築推進を望む一部都市の意図と一致している。だが、同時に、発展する上で避けては通れないさまざまな問題にも遭遇しており、その代表的なものは、放置・違法駐車という難問だ。

シンガポール陸上交通管理局の担当者によると、同局はすでに、シェア自転車の放置・違法駐車問題に対する管理に取り組み始めたという。

たとえば、シェア自転車用の「黄色い駐輪ゾーン」を設ける、指定区域にシェア自転車を返すことを利用者に呼びかけるといった規定を設けると同時に、放置・違法駐車をした人から罰金を徴収することとした。

シンガポール交通省・保健省のラム・ピンミン(藍彬明)上級国務相は、「陸上交通管理局は、遅くとも2019年までに、市街地に500台分の自転車駐輪場を増設する計画だ。また、現有または建設中の多数の地下鉄駅にも、6000台分の駐輪場を増設する」と話した。

駐輪場管理は、中国のシェア自転車が日本に参入後に解決すべき最も大きな問題だ。

日本のシェア自転車企業は、駐輪スペースがあるコンビニと提携するという方法で、駐輪場問題に対応している。モバイクは、札幌現地の複数のチェーン企業と提携しており、利用者はこれらのチェーン店の駐輪場に自転車を返すことができる。富士通総研経済研究所の金堅敏・主席研究員は、「中国のシェア自転車企業は、日本市場特有の問題について、調整することが求められている」と指摘した。

駐輪場問題を解決し、米国現地の市場ニーズに対応するために、ofoは米国の都市にシェア自転車サービスを供給したのち、シェア自転車の返還と修理に関する業務を現地の管理係員に依託することとした。