インバウンド特集レポート


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第6回 2014.10.29

インバウンドの展示会・商談会に異変あり! 2014年は世界最大級の旅行の祭典が東京に出現  台湾の展示会は過熱気味に!

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今年は、ツーリズムEXPOジャパンがスタートした記念すべき年だ。インバウンド業界にとって、どのようなメリットがあったのだろうか、またはデメリットはなかったのか?
一方、アジアでの商談会に日本からの出展が一部、過熱気味だが、変化の激しいアジアでどのように対応すべきか。今年の商談会・展示会の動向を探った。

目次:
●わずか1分10秒でブースが完売した!
●シンガポールのNATASは10%の落ち込み?
●東京で世界最大級の旅のイベントが開催!
●バイヤーへの魅力の伝え方が変った!
●トラベルマート、海外からのバイヤーが増加
●今年、新しくインバウンドの商談会が開催
●アジアの旅行スタイルの変化が速い

 

わずか1分10秒でブースが完売した!

第22回台北国際旅行博(ITF)が11月7日から台北で開催される。その参加申し込みは4月23日の10時ちょうどからだった。

電話で受け付けたのだが、約80ブースは、わずか1分10秒で完売となった。

「まさに秒殺でしたよ」と受付窓口の公益社団法人日本観光振興協会の担当者。

わずかの隙をかいくぐって2ブース獲得した和テンション株式会社の鈴木康子代表は、「今年は意地でも抑えたいと、気合をいれて当日臨みました。昨年は5分で完売して獲得できなかった悔しさもあったもので。」

多くの自治体や観光施設、商業施設は、訪日観光の伸びが大きい台湾市場をターゲットにしている。そのため激戦区となり、ブースが取れないという憂き目にもあうのだ。結果として台中の旅行博に流れたという自治体もあると聞く。

台北という激戦区に殺到している状況に鈴木氏は危惧をいだく。訪日数やリピート率、親日的な安定感からいって台湾マーケットは重要であるものの、チラシを配布する程度では、帰りの際に捨てられてしまい、残念なことになるのだ。しっかり準備して臨むブースでは、こういった結果を避けるため、あの手この手で、台湾人の心を捉える工夫をしている。

海外の展示会に出展する団体は、二極化していると鈴木氏は指摘。

それは、インバウンドを長く地道にやってきたころで、ノウハウを持っているところ。そしてもう一つはここ最近インバウンドに力を入れ始めた自治体や施設等。 後者の動向が心配だという。

地元の強みと彼らのニーズがどうマッチングするのか。それを具現化するプロモーション戦略をどうすべきなのかなど、考えるべきことが多い。またターゲットが個人旅行者なのか、団体なのかでプロモーションが変わる。単純に訪日数の多い順に攻めているだけで、戦略と戦術がないことが多いのだ。

アジアの展示会や商談会のニーズも年々変化している。そのあたりも考慮すべきだろ。

 

シンガポールのNATASは10%の落ち込み?

訪日数が伸びているシンガポールやタイでも変化が起きている。

8月29日~31日の3日間にわたってシンガポール・エキスポにおいて、「NATAS Holidays 2014」が開催された。主催者発表では、今期の総来場者数は5万6,189人(速報値)で、1年前の2013年8月開催と比較すると約10%の減少となったと伝えている。

JNTOシンガポール支局によれば、減少の背景には、FIT(個人旅行)化の進行があるという。
成約も落ち込んでいて、健闘したのが北海道だけ。それはシンガポールから季節限定の定期便が17便就航される予定があったからだ。稚内を訪れる道北コースや納沙布岬まで行く道東コースも誕生したという。

また、バンコクでは8月14日~17日の4日間、大規模旅行フェアTITFが開催。タイの旅行シーズンである10月に向けての販売だった。JNTOによると、前回の2014年2月開催のTITFでは、訪日旅行商品購入者全体が6,627人、うち団体パッケージが3,039人(45.9%)/FIT向け商品が3,588人(54.1%)と、概ね半々という結果。

ところが、今回のTITFでは、訪日旅行商品購入者全体のうち団体パッケージが35.6%に対して、FIT向け商品が64.4%という結果だと指摘。夏と冬では単純に比較できないが、個人旅行者が増えているのが現状だ。

 

東京で世界最大級の旅のイベントが開催!

一方、日本に目を向けると、2014年は、展示会・商談会の転換点になる年だった。日本での商談会のスタイルが変化したのだ。

それは多くの業界関係者ならご存知のように、インバウンドとアウトバウンド、そして国内旅行向けの展示会・商談会が一緒になった。
JATAが主催していた主にアウトバウンド向けの「JATA旅博」と公益社団法人日本観光振興協会(日観振)が主催していた国内旅行向けの「旅フェア日本」が1つに統合、さらに訪日観光の商談会である観光庁、日本政府観光局(JNTO)主催「VISIT JAPANトラベルマート2014」「VISIT JAPAN MICEマート2014」が同時期に開催され、三者が連携することで、まさに世界最大級の旅行イベントになった。

日観振、JATAの統合されたイベントは「ツーリズムEXPOジャパン2014」という名称で、9月26日から28日の3日間、東京ビッグサイトで開催された。3日間(一般公開2日間)の来場者数は15万7,589人となった。全国47都道府県、海外151の国と地域から出展した。
トラベルマートは、24日から26日に開催。最終日の26日が業界日と重なり、海外からのバイヤーが国内のブースを訪ね、新しい仕掛けとなった。

3つの連携メリットは業界を超えた「活性化」にあると、ツーリズムEXPOジャパン推進室 営業企画部長の福島和彦氏。

「国際社会の中で日本の国力の低下の懸念もあり、これまでの枠組みを超えた連携が必要になっている。
オールジャパンで旅行業界のためだけではなく、ツーリズムという広い考え方で、地域や商業施設を巻き込んだ枠組みを目指した」という。
対消費者視点から考えれば垣根はなく、互いに利益につながると考えた。

2013年の10月15日に組織委員会が立ち上がった。メンバーについては、以下の通りだ。

日本観光振興協会、日本旅行業協会(JATA)、ジェトロ、九州観光推進機構、日本経団連、JAL、ANA、JCB、日本ホテル協会、日本百貨店協会、日本商工会議所、在日外国観光局協議会、日本旅館協会、全国旅行業協会、全国知事会、JNTO、旅行関連各社。

昨年の旅フェア開催の初日、11月8日に記者発表し、業界に大きく注目された。

実は旅博と旅フェアは既に縁があったことも、今回の統合の1つのきっかけであったのだろう。
「2011年の震災の年、旅フェアは開催中止になりました。一方、JATA旅博は実施されたので、その際に会場の内に国内旅行エリアを設け、大きな出展展開がありました」と福島氏。

ツーズムEXPOジャパンには4つの機能がある。
国際観光フォーラム、商談会、展示会、顕彰事業だ。
気になる商談会は、海外旅行、国内旅行それぞれ、予約制とフリーセッションを実施。
また展示会は、海外、国内、全産業への出展誘致、新しい旅の発展継続。業界向け及び一般向けセミナーも企画。
組織委員会の下に実行委員会があり、その下に部会を組織。部会からの意見を実行委員会が承認、決定していく流れだ。インバウンド向けのセミナーもいくつもあり、バランス良い提案が部会からあがっていた。

 

バイヤーへの魅力の伝え方が変った!

これまで別々で開催したのが、一緒になった出展メリットは何なのか?

「国内向けの出展者には、インバウンドとセットにしたフレームづくりをしました」と福島氏。

地方自治体が地域を売り出すに際して、国内と海外の両方に売り出せることだ。つまりワンストップで海外にもプロモーションできる。

「B to B展開」として、VISIT JAPAN トラベルマート、VISIT JAPAN MICEマートの参加バイヤーとの商談、交流がある。
そして「B to C展開」として、日本全国の最新情報が発信できるのだ。多数の来場者への旅行商品や地域産品の販売も可能だ。

出展の誘致には、地方自治体、地域など、国内・訪日の両方にアプローチを検討。
ツーリズムEXPOジャパンに出展する団体・企業には、トラベルマートにも参画できる枠組みを観光庁とも協議を重ねた。設定が実現し、柔軟に理解してもらえる事業者を募った。行政の担当部署が違う場合でも、横断的にコミュニケーションが取れればメリットになるという。
目標としては47都道府県に広くあまねく参加してもらいたい。そのため公益社団法人日本観光振興協会の全国の各支部がセールスに動いた。初めてのことなので試行錯誤はあったそうだ。

展示会でより具体的に伝えられることになったのが大きい。

昨年のトラベルマートでは、海外の旅行会社バイヤーがサプライヤーのブースを訪ね商談を行っていた仕組みを今回はバイヤーが、各所定のテーブルに着席して、そこにサプライヤーが訪ねて売り込む形を採用。トラベルマートでの訪日旅行商談の後、ツーリズムEXPOジャパン会場へバイヤーを案内し、地域の特色を活かしたブースを訪ねて、ネットワーキングを行うという商談会・展示会連携が生まれた。だからVJTM商談会での各自のブースを装飾する経費を使う必要がない。

商談会は、24日に始まって、26日に終わり、終了後、ビジネスデーに展示会場を見て回れる。より深く日本を理解できるのだ。
これまでパシフィコ横浜で開催していたトラベルマートと比較すると、国内ディスティネーションのイメージが一層伝わりやすいイベントに変化した。

例えば新宿歌舞伎町にあるロボットレストランの例だが、商談では資料を見てもらい、展示会場にはロボットが立っている。動く現物を見て、その独特な世界観が伝わる。
また別府温泉では、展示会ブースには、実際に温泉水を持ち込み、手を入れて体感できるという仕掛けだ。
見たり、触ったり立体的な訴求が展示場で可能になったのだ。

9月25日には、JAPAN NIGHTが上野の東京国立博物館で開催された。ユニークベニューとして国内外の参加者1600人を招待し、日本のおもてなし「和の世界」を体験。世界的な旅行イベントにふさわしい規模感となった。

 

 

 

 

トラベルマート、海外からのバイヤーが増加

ところで、今回のトラベルマートでは、海外からのバイヤーが、増えていた。

観光庁のトラベルマートを担当されている日本ブランド発信・外客誘致担当参事官付の佐久間真一氏によると、海外から招請した旅行会社(バイヤー)は昨年の実績294社に対して、今年は358社の事前参加登録があり、実績では347社の参加があったそうだ。
「“ジャパン・トラベル・ウィーク”として国連世界観光機関(UNWTO)と提携した世界で3番目の国際観光イベントの誕生を世界に発信したことで、昨年に比べバイヤーの参加が増えたました」と佐久間氏。

海外バイヤーの参加に当たっては、観光庁とともに主催者である日本政府観光局(JNTO)の14の海外事務所を通じ、訪日旅行商品の造成で実績のある旅行会社を中心に、今後の訪日旅行への取組み方針や意欲等について確認したうえで旅行会社を選定し、訪日旅行商品造成の責任者・担当者に参加を呼びかけ、招請した。

新たな市場からもバイヤーの参加を得たこと等により、新たなビジネス・チャンスと捉え、バイヤー、セラー双方とも積極的にアポイント商談に臨んだそうだ。
観光庁ではVISIT JAPANトラベルマート(VJTM)の運営経費として、3日間のインバウンド商談会や最大5日間のファムトリップ等に対し、約9,900万円を計上した。

今年はスタートの年である。新規のサプライヤーが増えたことは、成功といえるだろう。トラベルマートに出展していなかったグリーンツーリズムなど、参加の幅が広がった。

一方でイベント取材を通じて見えてきたものがある。
会期中に、初参加のブースで話を聞くと、商談会で、海外バイヤーから2次交通の問題、価格表、実際に仕入れられるロットなど、より具体的なものを求められたという。ニーズの調査というスタンスで臨んだ出展者にとっては、温度差があったようだ。

また継続的に参加している小さな観光協会では、インバウンドと国内旅行者向けの同時開催が、大きな負担だったとの声もある。むしろ別々の開催のほうが良かったという。
少ないスタッフをいかにやりくりするかに苦心したそうだ。

これまでにトラベルマートでは、商談会だけでなく、夜の懇親会でゆっくりバイヤーとセラーが情報交換する場が設けられていたが、今回は同時開催ということでツーリズムEXPOジャパンの関係者も多数懇親会に参加され、あまりに人が多すぎてほとんどバイヤーと話ができなかったという意見もある。

立て付けは大きくなったものの、現場からの課題もありそうだ。

ツーリズムEXPOジャパンの開催レポートは11月に発行が予定されている。希望に応じて開示してもらえる。
※連絡は、ツーズムEXPOジャパン推進室まで。
http://t-expo.jp

 

今年、新しくインバウンドの商談会が開催

日本では、さらに今年、初開催のインバウンドの展示会が10月2日、3日に東京ビッグサイトであった。「ジャパン・インバウンド・エキスポ」というタイトルで、「第28回東京ビジネス・サミット2014」との共同開催となった。
東京ビジネス・サミットは、1988年より地域金融機関と共に開催し、地方にあるまだ全国に知られていない良い商品・サービスを広めようと応援している。異業種型展示商談という形で、28年間ビジネスマッチングの場として開催されてきた。
そこに今年からグローバルビジネスゾーンが新設され、「海外進出」と「インバウンド」の2軸でスタートした。

共催として運営するのがJTBコーポレートセールスだ。昨年の7月から開始したラピタ事業で海外進出支援を手がけている。中小企業にとって海外進出は難しく、ラピタという会員組織を設けることによって、弁護士、税理士や各地域や業界の専門家とネットワークをいかしたワンストップサービスを進めている。

グローバルビジネスゾーンを企画してみないかと、東京ビジネス・サミットを企画・運営するインクグロウ株式会社から声がかかった。今年の4月から企画がスタートしたのだが、出展経験のある金融機関にヒアリングすると、インバウンドに関してのニーズが高いことがわかり、インバウンドの要素を強化する方向にした。

そこで、インバウンドに企画協力してもらえる団体として、一般社団法人ジャパン・ショッピング・ツーリズム協会の専務理事の新津研一氏に相談。
開催の日程としては免税枠が拡大される10月1日の翌日なので、タイムリーだと意見もあり、一緒にプロジェクトを進めることに。

ジャパン・インバウンド・エキスポのビジネスモデルは、受け入れ事業者とリソース事業者のマッチングをする場だ。受け入れ環境の整備、プロモーションに役立つソリューションを持っている事業者に出展してもらい、実際に受け入れ事業者と商談してもらう。例えば、翻訳会社がブースを出し、来場の自治体関係者やホテル・商業施設にセールスする。
外国の旅行会社の方が来日して商談するのではない。ジャパン・インバウンド・エキスポを開催にあたり、海外はどんなバイヤーさんが来るのかといったホテルからの問い合わせがあったそうだが・・・。

各セミナーでは立ち見が出るほど好評だった。インバウンドの初心者向きの内容として、特に地域がテーマ。

ブースではインバウンド関係者以外の方々との名刺交換でき、これを機会にインバウンドに関心を持ってもらえそうだと出展の各担当者。裾野を広げる機会になったのは事実だ。

グローバルビジネスゾーンは、目標の50コマを超える54コマとなった。入場者数は1万7,000人を超えて昨年より大幅に上昇した。前年が1万1,440名で、1.5倍の来場者増となった。
単体としてやるより共催でやったことで来場者数を多くすることができたと思う。新規のユーザーからの登録もあった。

出展については8割が満足という回答で、出展企業の一つ、サトーホールディングスは予想以上の反響があったとのアンケートに回答。幅広い商品開発をしていて、新しく導入された免税袋には、「封印用のセキュリティシール(転移タイプ)」がちょうどうってつけ。開封した事や、シールを剥がそうとした事が分かるシールだ。被着体、シールに剥がした痕が残り、二度貼りが防止できる。

せっかくの「ジャパン・インバウンド・エキスポ」というネーミングではあったが、会場内で埋もれていた感が否めない。コーナーを明確にプロモーションできる工夫が必要だったと思えるのだが。

ところで、JTBコーポレートセールスで日本企業海外進出サポート事業を担当している秋庭孝之マネジャーによると、来年については未定とのこと。継続されることを期待したい。

 

アジアの旅行スタイルの変化が速い

シンガポールのNATASは、FITへのニーズの高まりで、ここ最近の入場者数や成約件数は落ち込んでいることは、先ほど述べた。では、どうすれば、個人旅行者へのプロモーションが可能なのか。

展示会・商談会に出展するよりも、商業施設を使ったイベントのほうが効果的という声もある。松本コンベンションビューロは、NATASに出展せずにシンガポール高島屋を利用した個人旅行者向けの訪日イベントに参加した。JNTOがサポートする「ジャパン・トラベルフェア」だ。

毎年NATASに出展していたが、高島屋に舵取りを変えたという。
さらに、「おいしいジャパン」という日本の食をテーマにプロモーションする場が10月18日から開催された。これも個人旅行者には響く内容だ。

アジアではBtoBからBtoCに変ろうとしている市場、まだそうではない市場など、そのあたりを理解して出展しなければならない。

鈴木氏は、海外展示会に初出展する前に、視察をしたうえでターゲットを絞るべきだとアドバイス。
相手の国が、自分たちの何に嗜好しているのか。物産展の場合、地元の声が重要だ。
とにかく事前準備が足りない。例えばまずは視察として展示会を見て回るだけでも大切だという。

展示会・商談会の流れを読み解き、いかに有益に関わっていくべきか、常に情報収集とチェックが必要と言えそうだ。

 

 

 

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