インバウンド特集レポート

第22回 2016.03.03

街をあげての春節キャンペーン 訪日観光客のショッピングに効果はあるのか

特集レポート

年々増加傾向の春節シーズンの外国人旅行者。もちろん中華系が多くを占める。となれば、彼らの日本観光の目的であるショッピングはおおいに盛り上がる。商業施設も、この市場は重要と位置づけ、呼び込みを強化。そのためにもエリア内の連携が進んでいる。この時期のエリアのキャンペーンを追った。

目次:
原宿表参道では、VISAカードのロゴマークが入ったフラッグが並ぶ
日本ではクレジットカードが使えないと思われている?
競争と共存を育み、原宿の強みをバージョンアップ
商店街主催のキャンペーンが渋谷でも立ち上がった!
スマホをシェイクして景品を当てる!
新宿では、冊子の配布でショッピングの訴求を目指す
福岡では、民間から手弁当で立ち上げたキャンペーンが拡大中

 

2016年の春節も、瞬間風速的に中華圏の旅行者が増えた。
この春節とは、旧暦の元旦のことだ。今年は2月8日が「元日」にあたり、中国の政府機関などは7~13日が休み。中国本土や香港、台湾などでは爆竹を鳴らし、盛大に祝う。帰省する人も多く、中国大陸では民族の大移動となる。最近では海外旅行をする人も増加した。

東京も人気観光地の一つ。そのタイミングに向けたショッピングキャンペーンが都内各所で開催された。

原宿表参道では、VISAカードのロゴマークが入ったフラッグが並ぶ

まず先進的なのが原宿の表参道だ。4回目の開催になった。

2月1日(月)〜14日(日)の14日間は、春節のコアウィークとして、街頭にフラッグを掲出してキャンペーンを盛り上げた。表参道にある122本のストリートフラッグを4言語(英語、繁体字、簡体字、ハングル)で掲出。
表参道の歩道には、街頭コンシェルジュを配置し、訪日観光客に対して英語と中国語でキャンペーンを案内。着物を着たコンシェルジュも常駐し、道案内だけでなく、訪日観光客といっしょに記念撮影などのサービスも提供した。

回を重ねるごとに、より売り上げにつながる施策にフォーカスが移ってきたようだ。以前の文化体験やショー形式のものは縮小されている。

やはり目玉は、昨年好評を得た「訪日観光客限定スクラッチカード」だ。訪日観光客による消費拡大を目的している。
当たり券(1,000円金券)を前年比2倍の2,000枚に設定 (総額200万円)し、6万枚のスクラッチカードを印刷したが、途中で足りなくなり急遽、印刷の追加オーダーをしたほどだ。

外国人比率が50%を超える「原宿キデイ・ランド」では、8割のスクラッチカードが利用されたという。当たりがでると、さらにお買い物をしてくれた外国人も少なくない。

このスクラッチカード、原宿・表参道エリアの対象店舗(200店舗以上)において、税込1,000円以上購入・飲食をしたお客様に、1回の支払いにつき1 枚プレゼント。もしも当れば、次回の買い物ですぐに利用できる「1,000円クーポン券」になる。

さらに海外発行のVisaカードで支払うと、スクラッチカードをさらにもう1枚(合計2枚)もらえ、ダブルチャンスになる。

このキャンペーン名は「Tokyo Shopping Week 2016 at Harajuku / Omotesando」と変更されたが、主催は、引き続き商店街振興組合原宿表参道欅会だ。また協力も引き続きビザ・ワールドワイド。

なぜ、ビザ・ワールドワイドが表参道界隈を協力するのか。そこには、ビザ・ワールドワイドの戦略があるからだ。

 

日本ではクレジットカードが使えないと思われている?

昨年、同社が主催するセミナーで、「決済インフラ」の課題とVisaの取り組みと題して龍武史氏が登壇し、日本でのショッピングにおける機会損失について言及した。

日本ではクレジットカードが使えないと外国人に思われていて、売り逃しをしているという。

同氏によると、東京は、海外の26の国際都市と比較した場合、交通アクセスが高い評価がある一方、ショッピングや支払いについて評価が低いというアンケート結果がある。
それを裏付けるように、クレジットカードが使える店が少ないとガイドブックに書かれている。理由としては、店の入り口やレジ脇にクレジットカードが利用できることを示すアクセプタンスマークが付いてない店舗が多いからだ。同社の調査によると、クレジット決済ができるにも関わらず、店頭に掲出していない店は92%のぼった。

アクセプタンスマークが店頭の目立つ位置にあると、利用客の利便性、安全性、不安解消につながる。
ユーザーの83%が、マーク表示のある店を好む傾向だ。実際にアクセプタンスマークを掲出したところ、平均単価があがったという調査結果がある。また同社が試算したところ、年間3,300億円の機会損失をしていることがわかった。

つまり原宿表参道で、通りにフラッグを掲出し、店舗の入り口付近にアクセプタンスマーク貼ることで、店舗の売り上げを向上させるとともに、日本でのクレジットカード利用を促進したい考えだ。

競争と共存を育み、原宿の強みをバージョンアップ

さて4回目を迎えた今回、参加店舗が積極的になってきたと手ごたえを感じる同商店街のインバウンド担当の中島圭一氏。
夏場から定例ミーティングを設け、表参道ヒルズ、ラフォーレ原宿、東急プラザ 表参道原宿、キデイ・ランド原宿店の販促担当者が顔を合わせる。
普段はライバル同士でもあるが、キャンペーンに関しては協力関係になる。
日本人であれば、どこかの店舗を目的に訪れることはあるが、外国人の場合は、まずそのエリアに足を運んでもらうことが先決。そのためにも、実際に来られた外国人の満足度を高めるには、情報交換をして受入れ環境を高めあうことが欠かせない。
エリアをあげた盛り上がり感を出すために、キャンペーンポスターとアクセプタンスマークの掲出を徹底している。

通常、個店や商業施設のテナントショップの入口にポスターを貼るのは、容易ではない。
店舗ごとにレギュレーションがあり、本部の了解をとらないとならない。それはブランドイメージを損ないかねないデリケートな問題をはらんでいるからだ。

しかし今年で4回目を数え、参加店舗の理解も深まって、街をあげた取り組みに育ってきた。

 

 

 

商店街主催のキャンペーンが渋谷でも立ち上がった!

一方、隣の渋谷駅周辺で、初めて地域をあげたインバウンドのキャンペーンが開催中だ。ここも主催は商店街。渋谷公園通り商店街だ。

期間は1月2日(土)~ 2月29 日(月)だ。コアウィークとしている2月1日(月)~2月14日(日)の間は、渋谷公園通り商店街の街頭にキャンペーンフラッグが掲出された。

今回のキャンペーンの目玉は、外国人観光客に自分のスマートフォンを使って「Wechatウィーチャット(SNSアプリ)」で景品を当ててもらう企画だ。
所定の場所(渋谷公園通り商店街および参加店舗様の店内)で「Wechat」を起動し、スマートフォンをシェイクすると、アプリ画面上でくじ引きができる。アタリが出ると、参加店舗で使える最大10万円の商品券や様々な景品がもらえる。また参加賞として、多数の参加店舗で使える割引クーポンもゲットできるのだ。

街を回遊し、ショッピングを楽しんでもらおうと、街ぐるみの仕掛けとなっている。当たり券が出たら、参加店舗で使えるようにして、店舗に誘導できる。

ターゲットは、中国、台湾をメインエリアとして、それに、英語圏の外国人観光客を加えた、年齢20~40代の男女だ。渋谷らしく若い個人旅行者の誘客を目指している。

キャンペーン参加店舗数は、約900店舗(大型商業施設テナントも1店舗としてカウント)で、参加大型商業施設は11施設だ。また企画運営に株式会社やまとごころが参加した。

 

 

 

 

ところで、このシェイクの抽選機能は、中国のサイバーマートグループが提供した。

もともとWechatのアプリにシェイクして当りが出るという仕組みがあり、それを応用したものだ。玉手箱のイラストが開き、景品が表示されるようになっている。

Wechatでは、昨年の旧正月前の大晦日TV番組の中で、シェイクキャンペーンを中国全土で開催した。瞬間的に数億回というシェイク数を記録したのだ。

 

さてコアウィークに先立って、1月9日(土)の夕方に、1日だけで100万円を追加した特別イベントを開催。その「ラッキーシェイクイベント」に、海外のメディア30社が取材に入った。
春節本番に向けて、顧客の掘り起しになったと、キャンペーンの運営を担当しているFJサイバーの近藤剛代表。中国のメディアの特徴として、ニュースが転載され、拡散されていく。このニュースを目にした中国からの旅行者が、立ち寄る可能性が高まる。

今回のキャンペーンは、おおむね成功と思うと近藤氏。理由としては、メディアで話題になったことと初年度で約900店舗が参加したのは画期的だから。
確かに成功している原宿表参道でさえ、参加店舗数は約250だ。

実際店頭に足を運び参加交渉をして、メリットをしっかりと伝えた。商店街に許可をとり、FJサイバーが積極的に動いたことが好結果につながったのだ。

 

 

 

 

キャンペーンを案内するプロモーターがお揃いの赤いコートを着て街に立っている。キャンペーンの周知と店舗への誘導をする中国語や英語をしゃべれるスタッフだ。

このキャンペーン期間中、FJサイバーが店舗向けに通訳アプリを提供した。3者間通話ができ、画面に通訳者の顔も写るので、バーチャル通訳という印象だ。合計103台を大型商業施設に導入した。施設側も保険になって安心だという。

エリアのキャンペーンでは、やはり商業施設が前向きになるともっと盛り上がると思うと近藤氏。ポスターやPOPの掲出がもっと必要だ。そのためには、事前説明会など、現場責任者とのつながりを早く持てれば良かったと振り返る。
一方、KOA PANCAKE HOUSEは開催前からインバウンドには、前向きだった。そのためか、外国人利用が増えたと喜びの声もあったそうだ。

スマホをシェイクして景品を当てる!

池袋では、同じくサイバーシェイクを活用して、2月6日(土)から14日(日)の間、東武百貨店、西武百貨店、丸井、パルコ、東急ハンズ、ビックカメラの6店舗が参加した春節キャンペーンを開催した。
シェイクするとクーポンやJTBギフト券が当たり、東武百貨店の前に臨時観光案内所を置き、こちらで引き換えられる。

以前からインバウンドに関しては、横のつながりがあり、そこが共同して春節向けのキャンペーンを開催した。
これまでのパンフレットのクーポンからスマートフォンに置き換えただけなので、参加しやすかったと商業施設の担当者。

新宿では、冊子の配布でショッピングの訴求を目指す

さて新宿では、キャンペーンという規模ではないが、この時期に合わせた訪日観光客向け多言語情報マガジン「SHINJUKU EXPLORE Vol.4」を発行した。新宿インバウンド実行委員会が作成し、参加企業も14社に増えている。

また、冊子の発行だけではなく、「おせっかいジャパン」と連携し、新宿駅周辺にて、訪日観光客に声をかけ、必要に応じて「SHINJUKU EXPLORER Vol.4」を活用した案内を行った。可能な範囲でアンケートを取り、今後の効果的なインバウンド誘致・受入活動につなげたのだ。

新宿を訪れた訪日観光客に対して歓迎する心を伝え、新宿の街をより一層楽しんでもらうことが目的だ。

 

 

ところで「おせっかいジャパン」とは、都心を中心に路上などで困っている訪日観光客に声をかけ、困り事を解決する ボランティアグループのこと。多言語チームで構成され、学生も参加する。

福岡では、民間から手弁当で立ち上げたキャンペーンが拡大中

さて最後に東京ではないが、福岡の先進事例も紹介しよう。

福岡での春節キャンペーンは”FUKUOKA WELCOME CAMPAIGN”というタイトルで、今回で5回目を迎えた。2013年2月から毎年旧正月の時期に行い、2015年は秋も開催。今では、この時期になくてはならない規模まで拡大している。

2012年の夏ごろ、「外国人旅行者に福岡のファンになってもらう取組を実施しよう」と都心部の天神、博多の3つの商業施設のスタッフと地元編集者が考案、外国語放送も行うラブエフエム国際放送に事務局を設置してスタート。協賛する商業施設同士で、ミーティングを行いながら実施する形だ。当初は事務局のみであったが、主体がわかりにくかったため、2014年から「ラブエフエム国際放送」とエリアマネージメントを行う「WeLove天神協議会」が「主催」になった。
通常はライバル同士である商業施設だが、福岡では冬のイルミネーションを冊子にして配布するなどのプロモーションキャンペーンを、エリアマネージメントを通して2012年から合同で行っている。コンパクトな都心部が面として連携する下地が以前からあった。

さて今年の春節キャンペーンは1月30日(土)~2月21日(日)の期間で、福岡の商業施設および街全体で連携して、外国人旅行者向けに割引やプレゼントなど特典を提供した。
参加は23施設(その施設の中で免税店舗587店舗、特典提供225店舗)で、過去最大。

今回の目玉であるプレゼント企画は、「福岡の八女茶ティーバッグ&名物お菓子」セットだ。この企画に参加した施設を訪問すると購入がなくても必ずもらえる企画で、各施設を回遊してもらうことが目的。2015年秋のキャンペーンで初めて開催し、今回も13店舗が参加した。

期間中、多言語での三者間通話ができる専用のコールセンターは開始当初から設置したが、今年は韓国語、英語、中国語、タイ語、ベトナム語、スペイン語、ポルトガル語、フランス語,インドネシア語、ロシア語の計10言語に対応。好評を得た。

 

 

告知方法は、専用のホームページで詳細を説明。また、福岡のショッピングの魅力、各施設の特徴やイベント、免税や特典を記載した冊子を1万部作成し、空港や街中、福岡市内の宿泊施設で配布した。
各施設でポスターや自店舗の特典を示したフラッグを掲示し、外国人旅行者の目に触れる工夫をこらしている。

海外現地でのプロモーションは、福岡市をはじめ行政も積極的に協力。外国人旅行者にリーチが高い、福岡市の観光サイト「よかなび」の多言語版で掲載。海外現地での商談会やイベントでも冊子などを配布する。事務局の努力で、つながりのある海外のブロガーに書いてもらうなど予算も少ないため、地道な努力を続けている。

どれだけ利用されているかの効果については、参加施設からの特典利用者数のアンケートによって把握している(有効回答は30~50%)。2013年は1000件程度であったが、2014年は5000件、2015年は免税もあわせて1万6000件に上っている。利用者が増加する2014年から、外国人旅行者の積極的な購買を肌で感じ、施設や店舗もますます前向きに取組み、POPや接客に取り組むようになったという。

 

 

 

 

やはり、継続は力なりということか。
毎年の繰り返しが、旅行者、さらに受け入れ施設にも良い影響をもたらす。

さて、今年、初開催だった渋谷のキャンペーンが、今後はどのようになっていくか、その動向が楽しみだ。

Text:此松武彦

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