インバウンド特集レポート

増加する免税店、進化する免税システム ショッピング人気を支える環境に変化が

2016.01.07

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特集レポート

この1年、急激な勢いで免税店が増加している。日本の免税制度は、世界でもユニークな方式をとっている。出国前に免税分が返金されてしまうのだ。それも購入した店舗で。海外では空港の出国カウンターの後、さらには第3国に移動してから申請ができるなど、返金は後回しになっている。この構造を踏まえつつ、買い物しやすい環境を整えようと国が動いている。さらに免税店をサポートするシステムも進化をしているのだ。そんな現状をレポートする。

目次:
全国的に急拡大の免税店事情の理由
免税店の拡大によって急がれる対応の簡略化
免税店対応で膨らむ人件費をおさえる
ノウハウを持つ外資系のシステム会社が先行する
さらなる制度変更が待っている

全国的に急拡大の免税店事情の理由

免税店が急激に増加している。
2015年10月1日時点で、全国の免税店数は、合計2万9047店となった。その半年前の4月1日時点は、18,779店舗で、54.7%増となっている。これまでにない大きな伸びだ。

三大都市圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫)にある店舗数は46.5%増の1万7910店、それ以外の道県が69.9%増の1万1137店。地方部の店舗が4583店増加。全体に占める割合は、三大都市圏が約6割、それ以外の道県が約4割となっている。

1年半前の2014年4月は、5,777店だった。そこから同年10月には9,361店になり、今では3万店に迫る勢いだ。

これほど急激に増えたのには、理由が考えられる。

1つは、免税制度改正だ。

2014年10月1日から外国人旅行者の消費税免税対象が「全品目」に拡大した。食料品や薬品、化粧品類等の消耗品も追加となった。

それ以前の免税は、1店舗での合計が1万円超の購入に限られていたが、別枠として消耗品が設けられ5,000円超と緩和された。化粧品はその人気筆頭である。
ただし、あくまでも別枠であり、消耗品と従来品との合算は認められないことなど、やや複雑になった。さらに消耗品の免税販売の際には、国土交通大臣及び経済産業大臣が指定する方法で包装をすることも規定された。
開封した場合に開封したことが分かるシールで封印すること、出国までに開封しないことなどを日本語と外国語で注意喚起することなどを定めている。

さて、政府が免税対策に踏み切ったことで、インバウンド業界において、ショッピングの重要度が増したことは否定できない。

一人あたりの購買額が増しているのだ。

免税枠拡大前の2014年と比較すると明確だ。
2015年7-9月期の訪日外国人1人当たりの旅行支出は187,165円で、前年度比18.3%(158,254円)の増加だ。

全体でみても、訪日外国人の総数が増えて、1四半期で初めて1兆円を突破した。

一昨年前の2014年には、費目別旅行消費額が、宿泊費を逆転して1位となり、昨年の2015年には不動のものとなっている。特に中国人の買い物意欲の強さが際立った。

そのショッピングに欠かせない免税対策だが、観光庁もこの流れを後押ししている。免税店を増やし、旅行消費を高めていくのが狙いだ。

そのため免税店を増やす施策を繰り出している。
観光庁のホームページに国内事業者向けの「免税店サイト」を2014年10月1日より開設。さらに地方運輸局・地方経済産業局の「免税店相談窓口」の周知・活用を推進するとともに、全国各地で大小の説明会の開催や講師派遣を実施した。

さらに活性化を目指して、昨年(2015年)の4月には、新たな免税制度の改正に踏み切った。

地方における免税店の拡大に向け、免税手続一括カウンターを運営する第三者にまとめて免税手続を委託できる「手続委託型輸出物品販売場制度」を創設。

次に、増えている外航クルーズ船に対して、寄港時に埠頭へ免税店を臨時出店するための手続の簡素化だ。

 

 

 

免税店の拡大によって急がれる対応の簡略化

この増え続ける免税店に向けて、システム開発の動きも活発化してきた。
どういった取り組みがあるのかを紹介しよう。

まず、1つ目は「ビジコム」だ。
POSシステムの開発と販売を行っている会社として30年の実績がある。
インバウンド業界に進出したのは、顧客からの声に応えることから始まった。

もともとPOSシステムから帳票を出すのを得意としていて、小売店とのPOS運用で培われた操作性をノウハウとしていかしている。

小売店からの要望としてあがったのが、パートの方でもすぐに理解できるもの。そして、レジまわりはスペースが狭く、コンパクトやスピーディさも求められた。

そのようなニーズを踏まえて免税帳票システムの開発が始まった。

できあがった免税帳票システムは、操作の説明が不要なほどシンプルだ。
運用がスタートすると、カスタマーセンターへの要望や営業マンへの要望が社内へフィードバックされ、お客様の声をもとにさらに改良も加えられた。

早い免税帳票の出力を求められるのは、やはり団体客の多い店舗だ。
例えば、高速道路のサービスエリアも導入が増えていて、団体ツアー客がまとめ買いされる際に力を発揮する。集合時間という制約のなかで、外国人旅行者はショッピングをする。
短時間でのオペレーションが実現し、店舗の売り上げが伸びたという。

今後、軽減税率の決定などもあり、POS連動の免税販売・帳票に注目が集まっている。
ビジコムは、コストパフォーマンスが高いことが強みで、免税帳票アプリだけなら、月額980円、POSシステムも連動ならプラス月額5,000円で対応できる。Windowsパソコンやタブレットにインストールすることで利用が開始できる。
(初期投資として、パスポートリーダーとレシートプリンターは別途購入が必要)

(Part 2へ続く)

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