インバウンド特集レポート

2015.07.01

観光案内所が活発化 今後のビジネスの可能性を探る

特集レポート

観光案内所のJNTO公認数が500を超えた。未登録ではあるが、観光案内所機能を備えた施設も多くある。しかし、運営に関しては予算がかかり、閉めてしまう案内所もあるという。継続的にできるビジネスモデルは何だろうか。様々な取り組みを追った。

目次:
公認の観光案内所が増加している
認定の各案内所は、カテゴリー分けをして、機能を明確に
公認されると多くのメリットが!
新規参入によって活性化している
事例紹介

公認の観光案内所が増加している

観光地に行くと、最近みかけるようになった「i」(アイ)のマーク。これぞ、国が公認している観光案内所だ。かつては「?」のマークなど地域によってばらばらだった。2012年にスタートした認定制度で、2015年3月現在、528箇所が登録されている。

スタート時には、268箇所だったが、翌年の2013年の12月には、367箇所になり、1年後の2014年12月には、465箇所と着実に数を伸ばしている。
そして2015年3月に「道の駅」63件が加わり528箇所となった。

 

「観光立国実現に向けたアクションプログラム2014」に基づき、「道の駅」は、訪日外国人旅行者の観光案内機能の向上を求められている。

具体的な成果として、それ以前に認定されていた北海道の網走の事例を後述したい。

 

そもそも認定制度の趣旨とは何だろうか。

 

日本政府観光局(JNTO)の谷口善秀インバウンド戦略部次長によると、外国人旅行者が日本を旅行する際に不自由を感じることのないようサポート体制の構築がベースになっているという。

「“認定”によるブランド化と観光案内所のカテゴリー別の分類により、外国人観光案内所の機能向上を促進し、質を保証することになります。」

 

東京や大阪などの都市圏ばかりではなく、外国人旅行者を地方へ案内するというのが、国の「観光立国実現に向けたアクションプログラム」に入っている。認定の観光案内所という拠点があることで、地方へ安心して出かけられるというのだ。

質が担保されることにより、リピートにつながる可能性が高い。

 

 

認定の各案内所は、カテゴリー分けをして、機能を明確に

カテゴリー1~3と分かれ、案内する範囲が異なるのだ。3が全国の案内、2が県などの広域エリアの案内、1が目的地としての観光地の案内が可能。カテゴリー3は難易度が高く、認定数が少ない。一方、カテゴリー1は、難易度が低く認定数が多いが、利用者からすれば地元のコアな情報を教えてもらえ、なくてはならない存在だ。

 

下記にカテゴリーごとの要件をまとめた。

 

カテゴリー3:

対象は、外国人旅行者が日本のゲートウェイとして、最初に訪れる地域。または外国人旅行者が特に多く訪れる観光地だ。

条件として、フルタイムで英語、その他2言語で対応可能なスタッフが常駐していること。全国の公共交通利用や観光情報などを提供できること。

 

カテゴリー2:

外国人旅行者が、観光の拠点として多く利用し、ローカルな情報に加え、次の移動先などの広域的な情報の提供が求められる地域にある。

条件として、フルタイムで少なくとも英語で対応可能なスタッフが常駐している。電話通訳サービス利用やボランティアスタッフの協力を得て、英語以外の言語にも対応できる体制があること。広域エリア内の公共交通利用や観光情報などを提供できること。

 

カテゴリー1:

外国人旅行者の最終目的地となり、ローカルな情報の提供が求められる。

条件として、パートタイムで英語対応が可能なスタッフがいる。又は電話通訳サービスの利用、ボランティアスタッフの協力等により英語対応できる体制があること。また地域内の公共交通利用や観光情報などを提供できること。

 

さらに、「パートナー」というカテゴリーがある。専業としていない観光案内所のことだ。実例としては、後述する金沢のゲストハウスがある。

 

この認定制度、どういうプロセスで公認されるのだろうか。

 

JNTOが募集する期間に、観光案内所の認定を求める地元の団体や法人が、まず各地方運輸局に届け出をする。

その地方運輸局が、実際に推薦するにふさわしいところかどうかを判断し、申し分なければ、JNTOに推薦をする。

 

 

「やはり、どういう外国人旅行者が来られているのか、どういう質が求められているのかなど、地元や運輸局さんが一番実情をわかっていらっしゃいますから。」と谷口次長。

 

実質、認定の作業に携わっているのは、運輸局とJNTOということだ。そして、認定を受けた外国人観光案内所について、観光庁、運輸局とJNTOが実地の調査を行い、基準にあったサービスを提供しているか、設備が設置されているか、などを確認するという。また3年ごとに更新手続きを行い、その際には基準への適合性を改めて審査する。上手に補完しあっているのだ。

 

 

 

公認されると多くのメリットが!

ところで公認されると、どういったメリットがあるのだろう。以下にリストアップした。

 

・認定観光案内所としてJNTOサイトに掲載

JNTOのwebサイトにリストアップされることが大きい。外国人旅行者がその案内所、その地方へ安心して訪ねていくようになるのだ。

 

・会議・研修会でのサポート

1年間に2カ所程度、九州や東北といったブロックごとに研修会を開催して、案内所間の交流を深め、情報交換も行われる。何に苦労しているかを共有することによってボトムアップできるというのだ。さらに全国の案内所を対象として2日間の研究会も実施する。もっとミーティングの機会を多く持ちたいという意見もあり、盛況とのこと。

 

・メルマガの配信

毎月2回、案内所向けのメールマガジン「V通信(ビジット・ジャパン通信)」が発行される。JNTOから最新のトピックスを提供、また各地域の観光案内所の情報や対応事例を採り上げ、参考になりそうなことを共有している。

 

・言語のサポート体制
英、中、韓の各言語について、電話で通訳サポートを受けられる。東京丸の内のJNTOの観光案内所に常駐しているスタッフが対応。

 

・全国の観光案内所同士の連携
資本関係や上下関係はないが、「i」(アイ)マークを共有することによる連携をしている。管轄外地域の観光情報について問い合わせがあった場合、他の認定観光案内所と連絡を取り合い、情報収集したり、観光パンフレットを取り寄せたりと連携できる。

観光案内所があることによって、各地の連携によって、誘客につながるフックになっている。

「i」のシンボルマークを案内所の誘導標識として活用して、外国人観光客の来所が増えたという声も多いという。

 

特に、増加しているFIT(個人旅行者)が訪れ、幅広い質問があるそうだ。

旅程を決めずに来日して、観光案内所で相談されるケースも珍しくないと谷口次長。

 

例えば、

○○が食べたい、△△が食べたいけど、どこに行けばいいの?

ここに写っている画像の場所に行きたいけど、どうやって行くの?

ムスリム対応のお店を教えてください。

お花の情報について教えてください。

登山について教えてください。

 

そこでの丁寧かつ的確な対応は、外国人旅行者を喜ばせ、今後、リピーターとなって日本のファンへとつながる。

観光案内所は、まさにファンづくりの最前線となっているのだ。

口コミとなって拡散し、日本の良さを理解してもらえるきっかけになる。

 

カテゴリー1は、地元の情報を多く持っているからこそ、代案の提示ができるのも強みだと谷口次長は指摘する。

ヒアリングしたうえで、彼らが求めるものを的確に判断し、代案を提示する機能が他にない特長だ。

 

ところで、増加傾向にある観光案内所だが、スタイルが多様化しているようだ。

そしてもう一つ、観光案内所自体は、情報の中立、公平性を義務づけられている。特定の企業やサービスのみを推薦するのはNGだ。

 

重要なのは、観光案内所のカウンターとして独立していること。隣接して旅行商品やSIMカードの販売も可能ということ。免税店があってもよいのだ。 外国人旅行者が求めている事柄を丁寧に伺い、そのうえで案内するのは問題ない。

●新規参入によって活性化している

「O to O」(オー・トゥー・オー=オフライン・トゥー・オフラインの略)という視点で考えると、観光案内所はまさにインフラの拠点になる。隣接した場所で旅行者にアピールできるのだ。

 

観光インフラとしての拠点を、いかに活用しているか、その事例を追っていこう。公認ではないが、活発な観光案内所も含んでいる。

 

 

●着地型観光の販売拠点にする動き

 

<HIS>
今年の4月に、旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)が、大阪・心斎橋の商業施設「心斎橋オーパ」に国内最大級となる訪日外国人専用観光案内所を開設した。家電量販店やドラッグストアなども併設。
需要をくみとり、観光案内所を発展させていきたいと意気込んでいる。

 

<JTB>
今年の6月、京都タワーの3階に、JTB西日本は京阪電気鉄道と共同で、関西ツーリストインフォメーションセンター 京都(KANSAI TOURIST INFORMATION CENTER KYOTO)」を開設。オープン初日には京都市長もかけつけた。2016年3月までに、10万人の訪日旅行者の利用をめざす。 京都を中心とした日本各地の観光情報の提供に加え、ジェイティービー(JTB)の訪日外国人向け商品「サンライズツアー」や「エクスペリエンスカンサイ」の予約、各種交通チケットの販売、有料での手荷物配送などをおこなう。

 

 

 

 

 

ショッピングにアウトレットモールの事例

 

今年の4月、三菱地所・サイモンは、静岡県御殿場市の「御殿場プレミアム・アウトレット」に、訪日観光客向けサービスとして「ウェルカムセンター」を開設した。
訪日観光客を対象に、言語対応の充実や、ショッピングだけでなく幅広い観光案内などを行う。
外貨自動両替機の新規導入や無料公衆無線LANの追加設置などハード面での拡充も図っている。
周辺には、世界文化遺産に登録された富士山や箱根もあるため、魅力あるショッピング・スポットを目指している。

 

 

芸能事務所が観光案内所に進出

 

昨年12月、東京・原宿に、もしもしにっぽん「MOSHI MOSHI BOX」という名称で、観光案内所が開設された。
きゃりーぱみゅぱみゅが所属するアソビシステム株式会社が施設をプロデュースして、渋谷区観光協会が案内業務の運営をする。

 

観光案内所では、日本のカルチャーや商品を紹介し、実際に購入できる施設だ。さらに、今後は海外にも「MOSHI MOSHI BOX」をオープンさせ、日本のコンテンツを届ける。さらに訪日観光のきっかけをつくることを目指すという。

もしもしにっぽんプロジェクトは、観光案内所のほか、テレビ番組できゃりーぱみゅぱみゅが日本の文化を紹介。もしもしにっぽんフェスティバルで、国内だけではなく、海外の主要都市で開催予定。さらにwebサイトで外国人向けの観光や生活、ポップカルチャーの情報を発信する。

この大きな枠組みの一角を原宿観光案内所は担っている。戦略的拠点なのだ。

角の壁には、世界時計をモチーフにしたカラフルなモニュメントがあり、観光客が記念撮影をする。増田セバスチャンが制作した。

 

 

ゲストハウスのスタッフの士気を高める狙いで登録

 

金沢にあるゲストハウス、国際式豊かなPongyiでは、観光案内所の「パートナー」のカテゴリーに登録している。

 

ここに足を運ぶゲストの内、6割が外国人。欧米からはもちろん最近ではタイ・台湾からが増えている。当初はスタッフ3人のうち英語が話せるのは1人のみ。そんな中、自分たちにできる事を考えた。パートナー施設への登録は外国人受け入れへのスキルアップへの起爆剤になると考え、士気を高めるためにも登録を決意。公式案内施設となることで、外国人に喜んでもらえる観光案内の質を上げることに繋がったという。ゲストハウスながらもJNTOの公式施設となることで、パンフレットの配給や、メールでの連絡網など、観光案内機能を高めてくれるバックアップを受ける事ができるという。

 

宿泊数は一日に10人程という小さいお宿ならでは。一人一人に目を配れるためゲストと近い距離で接することができるのも魅力。

また「顔の見える案内」も強みである。金沢市は横のつながりを大事にし、Pongyiでゲストに紹介する先も親しくしているところが主である。友人のところへ案内するような近所同士の案内ができるというのも、地域に根付いているゲストハウスならではの観光案内と言えるのではないだろうか。

 

 

土産店が併設され、物販にも波及する

 

<湘南FUJISAWAコンシェルジュの事例>

 

江ノ電沿線地域の観光情報を紹介している湘南FUJISAWAコンシェルジュ。

観光客が自ら目当ての情報を調べられるようにタブレット型端末も置いてあり、必要な部分は印刷できる。江の島内や江ノ電の各駅ごとに観光スポットをポストカードサイズに見やすくまとめた地図も用意している。また外国語ができるスタッフ(英語4人、中国語1人)を配置し、増えている外国人観光客に対応。

 

土産物の販売にも力を入れ、約150品目に及ぶ藤沢や鎌倉の名産品、江ノ電関連商品が並ぶ。今後さらに商品開発を進め、外国人旅行者にも購入してもらいたいそうだ。

運営主体は、江ノ島電鉄で、JNTOの登録をはしていない。

 

 

<北海道の道の駅で物販をすすめる>

 

道の駅「流氷街道網走」は北海道で105番目の道の駅である。冬限定で走る流氷観光砕氷船の発着地点であり、名前の通り駅の機能も持ち合わせている。観光施設情報をパンフレット・チラシ類、地図などで案内を提供するのはもちろん、外国人観光客に嬉しいWi-Fiやインターネット検索スペースも提供している。

 

JNTO認定観光案内所に登録、取り組みが集客率に反映されたと担当者。

 

道の駅「流氷街道網走」は2010年にJNTOの認定観光案内所に登録をした。当時は、ビジット・ジャパン案内所と言った。

登録をした当時の外国人観光客の利用者数は1,235名から徐々に数値が上がり、2013年度は3,255名へと2.8倍もの伸び率を見せる。一定のシェアを持つ中華圏からの観光客に加え、中でも強い伸びを見せるのはタイである。2010年度には利用客が通年で3名であったのに対し、2013年度には142名へと急増しているという。

増え続ける東南アジア圏の客層に対しても、音声翻訳機やアプリケーションなどを用い、アプローチしていく姿勢を固めていく。

 

「流氷街道網走」のように、JNTO公認の道の駅は当時は決して多くはなかったが、この成功を受けて、今年の3月に道の駅の登録が大幅に増えたといえそうだ。

 

公式の案内所として精力的に外国人を受け入れる体制を整える事が、集客の増加につながったことがデータを見ても明らかである。

 

外国人のレンタカー需要が伸びている現状で、日本人にはもちろん外国人にも、「道の駅」がより身近になってゆく。

 

ドライブの休憩がてら停まった先でお土産選びを楽しみ、交通や観光案内を聞く。という”ついで”の観光案内というお手軽さが、観光客にとって日常的に喜ばれること間違いない。地域の工芸品等、その土地でしか手に入らないものを英語で説明してもらえる。

呼び込む仕掛けづくり

 

気軽に立ち寄れる観光案内所として、長野駅にはカフェ併設がある。

隣接するカフェ「ベックスコーヒー」との壁を取り払い、観光センターとカフェを一体化した。観光地のパンフレットを読みながら、店内でコーヒーを飲むことができ、観光客が気軽に立ち寄れる仕掛けに。

宿泊予約やバス、私鉄などの切符購入をセンターで済ませることもできる。観光地のイメージ映像を流したり、特産品を展示するスペースを設けたりして、五感で信州の魅力を感じてもらう。

 

北陸新幹線金沢延伸となり、長野市はJR長野駅構内にある「市観光情報センター」を、県全体の観光地の魅力を発信する拠点として新装したのだ。

長野市と周辺の観光地をつなぐハブ(交通結節点)の役割を目指す。エリア全体を案内する「カテゴリー2」を取得している。

 

 

街なかの交流拠点としての案内所

 

東京の下町、谷中に「YANESEN」という観光案内所がある。目的は近隣の観光案内と日本文化の体験を提供する国際交流施設だ。ツアー紹介をインターネットとリアル店舗するビジネスモデル。料理教室、書道教室など、地域の文化教室に参加して地域の人々との交流を通して日本の伝統文化の精神に触れる「文化体験」のサポートを行っている。一番人気となっているのが茶道教室だという。地域を巻き込んだ国際交流のハブになっている。

 

 

 

カテゴリーをあげることで揺れている奈良市の観光案内所の事例

 

JR奈良駅旧駅舎を使った「市総合観光案内所」を、カテゴリー3への格上げを目指している。実現すれば関西では京都に次いで2例目となる。 しかし、市議会からは〝待った〟の声が相次いで、申請が遅れているようだ。

 

観光戦略としては一定の評価はできるものの、財政難に直面する市が喫緊に取り組む「緊急性」がどれほどあるのか、さらに人件費を含め年間5000万円以上という維持費の問題もあるという指摘だ。
昨年の議会の動きを受け、遅れたものの、申請作業は進んでいると担当者。

観光案内所の課題は、予算との折り合いだ。行政が負担して、地域に貢献しているということが必要だ。しかし財政が厳しくなるなか、そのインフラを活用してビジネスにつなげるかも肝になってくる。

 

 

カフェ自体が案内所機能を持つ

 

最後に、次世代型の観光案内所を紹介しておこう。そこに行けば、観光情報が集まるという意味では、案内所機能を持ち、実際に成果があがっているそうだ。

株式会社BACKPACKERS’ JAPANが運営する都内の人気宿泊施設toco.とその二号店、Nui.だ。東京の下町・蔵前にある。

 

「あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を」がコンセプトだ。

「宿泊」に加え、旅行者はもちろん誰もが気軽に利用できる「カフェ&バー」を兼ね備えている。ここでのコミュニケーションが活発だという。

旅行者同士の情報交換や東京観光の情報を求めてやってくるビジターにも情報提供をする。

 

ここではスタッフ達が自ら何かを紹介するという事は、取り組みとしてはしていない。情報の提供やゲストをお客様として丁寧に扱うよりも、「対等な関係で寄り添う」ことをモットーとしている。

その魅力に引き寄せられて、多くの旅行者が情報収集がてら、カフェでランチをするというビジネスモデルだ。

 

地元のディープな情報があり、かつ旅行者が求めているものにマッチングさせる。さらに紹介することがビジネスとして成立する。

ここのカフェは、まさに実現をしているのだ。

 

観光案内所をめぐる動きはまだまだ続く。銀座にも再開発によって大きな観光案内所ができるという情報もあり、今後の動きに目が離せない。

 

Text:此松武彦 協力:大平真由

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