インバウンド・リサーチ - にっぽんのインバウンド観光(訪日外国人旅行)を熱くする、やまとごころ.jp


モリサワ

この10月で、消費税免税拡大から1年がたちました。この間、「インバウンド消費」というキーワードがメディアを賑わし、インバウンド業界以外からも注目となりました。
やはり消費税免税拡大がターニングポイントだったと、商業施設の担当者から声を聞きます。
そこで、やまとごころでは、JSTO(一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会)が夏に実施したアンケートを軸に、免税枠拡大の1年を振り返り、今後の課題を抽出しました。


<注目ポイント>
・免税店登録店舗数は増大傾向、特に地方での登録数が増加傾向
・免税登録により、売上以上に客数が増加
・免税販売実績の多い国のトップ5は中国、台湾、韓国、香港、タイ
・免税店の7割が「Japan.Tax-Free shop」ロゴを店頭掲出しPR
・免税費目の拡大後、免税販売では「化粧品、お菓子、医薬品」などの消耗品が人気
・「日本製」や「日本らしさ」をキーワードとする商材も人気。

<課題>
・訪日外国人FIT旅行者の地方分散に伴う地方における免税店舗の増加促進
・一般物品における最低購入金額の引き下げを通した消費拡大促進
・免税手続きの簡素化と店舗支援策
・クレジットカード対応店舗の増加促進
・顧客サービスの増強(デリバリーサービス、インフォメーションカウンターなど)


1:前提としての「免税店の登録数」と「売り上げデータ」

観光庁の発表(2015年5月20日)によると、2014年10月1日時点で9.361店だった全国の免税店数は、外国人旅行者の消費税免税拡大から半年間で9,418店増加し、2015年4月1日現在合計で18,779店となった。

訪日外国人の買物消費の中でも、免税売上の伸びは特に顕著となっており、昨年10月の制度改訂が特に大きな影響を与えている。制度改定以降、免税店は増加しているが、札幌・東京・名古屋・大阪・福岡の5大都市に集中しており、地方への訪日外国人の分散を図る上でも今後は地方での免税対応の充実が不可欠となっている。

表1:訪日外国人観光客とショッピング
免税登録数.png

出所:※観光庁「訪日外国人消費動向調査」、日本百貨店協会資料よりJSTO推計

表2:免税店数の増加と課題
増加数.png

出所:観光庁

登録免税店が増える中、免税店の認可を受けている国内の商業施設等では、消費税免税拡大の効果を感じているか、また認識しえる課題などを中心に調査を行った。以下、その結果である。


2.調査について

調査対象:
免税店向け情報サイト「免税店.jp」の登録会員
JSF(ジャパンショッピングフェスティバル)参加企業・店舗、
やまとごこjpのメルマガ会員で免税登録の商業施設
免税店登録済みの35件からその効果と課題に関する回答を得ました。


調査期間:
免税に関するアンケートを実施いたしました。
(8月の夏の訪日旅行ピーク後の8月9日より18日までWebによりアンケートを回収)

有効回答数は35社/店舗                                 
【回答企業/店舗の内訳】
業種:百貨店、スーパーマーケット、専門店(家電量販、アパレル等)、総合免税店、土産物屋等


3.質問項目

2014年10月1日に運用をスタートした新しい免税制度に関して、「免税に関する質問」を7項目、「インバウンド対応に関する質問」を9項目、合計16項目を調査。

【以下、質問項目】
質問項目.jpg

4. 集計結果

【概要】
今回の調査結果では、2014年10月以前に認可を受けた免税店と10月以降に認可を受けた免税店比率は50:50となっている。2014年10月の新しい免税制度の運用開始後に全体の35%が新たに認可を取得し、4月以降の認可店舗も増加傾向となっている。

グラフ1:回答小売店の免税店認可時期
免税店.png


4-1. 免税に関する調査

【設問①】システム対応について
・回答店舗の約64%が何らかの免税処理システムを導入。
・システム未対応(手書き)の多くは、2014年10月以降に免税店認可を受けた店舗。
・大型ナショナルチェーン(百貨店、スーパー、家電量販)はほぼシステム導入済み。

【設問②】免税認可後の商況

・免税認可後、その約半数の店舗は客数が増加したと回答し、そのほとんどが「大幅に増加した」、約43%の店舗は「やや増加した」と回答している。
・免税認可の効果は、客単価よりも、客数が伸びる傾向が鮮明となっている。
・業態別では、百貨店やチェーンストアにおいて、客数や売り上げが大幅に伸びたという回答が多い。


【設問③】免税販売実績の多い国

・免税販売実績の多い国のトップは中国、以降、台湾、韓国、香港そしてタイと続く。特に中国と台湾は、回答のあった全店舗において、上位3位までにランクインしている。
・上位5カ国以外では、シンガポールなどが目立つ程度であった。


【設問④】免税関連情報の入手先

・全体の約58%がJSTO運営のWebサイト「免税店JP」を活用している。
・国税庁、観光庁のサイトが50%程度で、税務署への直接問い合わせはほとんどない。


【設問⑤】免税店であることのPR方法

・回答店舗の7割以上が「Japan.Tax-Free shop」ロゴを店頭掲出している。その他、店オリジナルの告知ツール、Webサイト告知がなどによるPRが続く。


【設問⑥】免税販売で人気のある商品

・「化粧品、お菓子、医薬品」といった消耗品を挙げる店舗が多かった。
・その他、「日本製」や「日本らしさ」をキーワードとする商材の人気も目立つ。


【設問⑦】免税店における課題について

・言語対応に対する課題意識を持っている店舗が多い。
・免税店の効果が高まるほどオペレーション上の負荷が増大することも課題となっている。
・免税対応については、一般物品と消耗品の区分が制度を難解にしていること、対応に時間がかかる、お客様への説明が難しい(言葉の問題も含む)などの点も指摘されている。

4-2. 免税店におけるインババウンド対応に関する調査

【設問⑧】自社サイトの多言語対応

・全体の約14%がWebサイトで多言語対応しており、英語と中国語の対応が多かった。
・翻訳は、多くの店舗で、機械翻訳ではなく翻訳者が行っているという回答だった。


【設問⑨】多言語対応スタッフの配置

・約28%の店舗で多言語対応スタッフが常駐しており、言語は英語と中国語が中心で、一部韓国語も対応している。


【設問⑩】決済対応

・クレジットカード対応は全体の半数に留まっている。
・銀聯カード対応店舗は約3割程度だった。
・大型店をのぞいて、両替機やATM設置店はほとんどない。


【設問⑪】顧客向けサービス

・全体の約3割の店舗で、無料Wi-Fiサービスに対応している。
・一部の大型店では、インフォメーションやホテルデリバリー等に対応している。
・一方、ハラール(イスラム)対応はほとんど見受けられなかった。


【設問⑫】プロモーション対象国

・強化するターゲットを選定している店舗はほとんどない。
・強化ターゲットを選定している店舗の主な対象国は、中国・台湾・香港などの中華圏。
・将来的に強化したい国としては、中国、台湾、韓国をあげる店舗が多い。シンガポール、マレーシア、インドネシアなどのASEAN地域も目立った。


【設問⑬】訪日観光客の来店が多い時期

・春節休暇(35%)、国慶節休暇(21%)よりも、花見シーズン(43%)や夏休み(35%)に訪日観光客の来店が多いとを挙げる店舗が多かった。


【設問⑮】日本人客数と訪日観光客数のバランス

・現状は9:1くらいのバランスで日本人の客数が多いものの、将来的には5~10ポイント程度、訪日観光客のシェアアップを希望する店舗が多い。


【設問⑯】インバウンド対応の課題について

・中国に偏らない施策、告知の強化などを課題と認識する店舗も多くみられた
・インバウンド対応が遅れているものの、 前向きな方が非常に少ないことやコストの問題などがあり、なかなか進まない。

5.リサーチ総括

外国人旅行者の消費税免税拡大を受け、免税店登録店舗数は増大傾向で、特に、地方における登録店舗数に増加傾向がみられつつある。
免税登録により来店客数の増加はみられる一方で、客単価や売上額の伸びへの効果はあまり顕著ではない。また、来店客数や売り上げなど大きな効果が感じられている業態は、百貨店や大手GMSなど一部に限定されている。免税販売実績のトップは中国、そして、台湾、韓国、香港、タイと続くが、今後は、中国人の消費の勢い頼るだけではなく、市場ごとのマーケティングに基づいた販売施策などの取り組みが必要であることも示唆される。

免税販売では、「化粧品、お菓子、医薬品」などの消耗品が人気の一方で、「日本製」や「日本らしさ」をキーワードとする商材の人気も高くなっている。そうした商材は、一般商品に分類され、免税対象額も1万円以上と単品で、特に地方の対象額に届かないケースも見受けられるため、対象金額の引き下げの検討も必要であろう。

顧客サービスの一環として、FITの増加に伴い、地方分散化が一層進むことが予測されるため、地方における免税や決済対応、情報提供サービスなどの受け入れ整備の強化が求められる。免税店であることのPRは重要であり、「Japan.Tax-Free shop」などのロゴを店頭掲出の有無は訪日外国人の店舗利用時の安心感を左右する。
同様に、店舗でのクレジットカード対応も、消費金額に影響を与える要因となっていることもクレジットカード会社の調査からも示唆されている。免税店の登録と共に、そうした顧客サービスの充実が、消費促進を拡大させるひとつの要因ともなろう。


6.課題への対応策として ~関連する動き

6−1. 政府の方針について

外国人観光客増加へ地方免税店拡充を首相が表明

 安倍晋三首相は2015年5月16日、開創1200年を迎える高野山真言宗の総本山金剛峯寺などを訪問した際に、「多くの人が世界から集まってきている。さらに増やす努力をしたい。地方の免税店を増やす目標を立てる」と述べた。(毎日新聞 2015年05月17日朝刊)


6-2. 観光庁について

免税対象「5000円以上」に拡大要望、免税手続きの電子情報化、簡素化要望

観光庁は、2015年8月、2016年度の税制改正要望で、訪日外国人旅行者向けの消費税免税制度の拡充と、国際会議誘致のための交付金制度の要件緩和を求めている。免税制度については「地方を訪れる外国人旅行者向けの消費税免税制度の拡充」として、一般物品において、最低購入金額の引き下げを要望。
現行の総額で「1万円を超えるもの」から「5000円以上」への引き下げを求める。背景には、地方でよく売れている民芸品や伝統工芸品は、単価が2000円~3000円程度のものが多く、購入金額が1万円に満たないことが多いことから、地方の店舗が免税店の届出申請をためらうケースがある。引き下げを要望することで、地方における免税店のさらなる増加と、外国人の消費の活性化をはかる考えである。

さらに加えて、免税手続きの電子情報化など、手続きの簡素化と利用者の利便性向上に向けた要望もおこなう予定である。現行の手続きでは、免税対象物品を販売する際、購入記録表を作成し、パスポートに貼付する必要がある。しかし、大量に免税対象物品を購入する旅行者が増え、旅行者からパスポートが大量の購入記録表で分厚くなるという苦情もあがっているほか、税関で購入記録表を回収・整理する作業の負担が増大している。

http://www.mlit.go.jp/kankocho/topics02_000100.html


7. まとめ

現在、訪日外国人が訪日旅行中に行った活動のうち、「ショッピング」は2位に位置しており、訪日外国人旅行市場におけるショッピングの重要度は高まっている。
観光庁による四半期ごとの調査における消費税免税実施率の推移をみると、平成26年1-3月期〜7-9月期は20%前後で推移していたが、10-12月期は40%に大幅に増加した。免税実施率のうち新規免税費目となった消耗品の「菓子類」や「その他食料品・飲料・酒・たばこ」「化粧品・香水」など新規免税品目が19%を占め、免税制度改正が訪日外国人旅行者に与える影響は大きく、また、免税利用意向が高いことも示唆される。官民双方あるいは連携して免税対応を強化することが、訪日外国人の消費意欲を促進、そして、地方での免税対応を強化することで、地方分散を促すことが期待される。


▼株式会社やまとごころ
E-mail: support@yamatogokoro.jp /TEL:03-5312-8314 

▼一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会
E-mail: info@jsto.or.jp /TEL:03-6435-9116

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