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2008-02-12
当BLOGのお隣り組(「ツーリズム・マーケティングのフィールドから」の小林裕和さん)が1月31日付で研究テーマについてお話していましたが、確かに新たな学問「観光学」には研究材料がいっぱいです。
私自身にとっても、このところ、毎年、自分をワクワクさせる観光学のテーマが飛び込んできています。この1年間は、世界経済フォーラム(World Economic Forumダボス会議の主催組織)が昨年の3月に発表した「世界旅行・観光競争力ランキング」の研究に夢中でした。
(ちなみに、その前の年は、日本の「食・食文化+ツーリズム」、すなわち、「フード・ツーリズム」に夢中となり、その結果、「ツーリズム・サミット2006」(TIJ 日本ツーリズム産業団体連合会)での発表や大学紀要での「食文化を活用した国際ツーリズム振興」などとなりました。また、「フード・ツーリズム」の単語が、日本で広まりつつあります)。
さて、世界観光競争力ランキングの話ですが、発端は、日経新聞(2007年3月2日朝刊)のこの記事でした。
「世界経済フォーラムが1日発表した初の旅行・観光競争力報告で観光業の活性化に取り組む各国の競争力をランキングで示した。欧米などの先進国が上位を占めるなか、観光立国をめざす日本は調査対象の124カ国・地域中25位と振るわなかった・・・・」。
世界における現在の「日本の観光・旅行産業」そして、「日本政府の観光立国の取り組み」etc.の現状に対して、”25位と振るわなかった”のコメントに対して、猛然(?)と、私は、「日本は上位にランクしすぎである・・・」と主張。
大学のBLOGで5回ほど、連載を行いました。これを読んだ大阪の毎日放送TV「ちちんぷいぷい」(3月5日)が取り上げる一方、「日経ビジネスASSOCIE」(日経BP社/4月17日号)までが、詳細に報道。
とにかく、1年、観光立国日本の競争力について、いろいろ考えさせられました。
今回、総括の意味で、大学の紀要に、上記のタイトルで論文を投稿してみました(公式には、3月末に紀要に印刷され、そして、大学図書館のインターネットから発表される予定です)。
取り急ぎ、当BLOGの読者に、少しばかり長いのですが、お知らせしたいと思います(駄文ではありますが、一生懸命、時間をかけて書いてみました。図表が上手にいきませんがお許しください)。
まず、本日の写真:
①世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum1))「旅行・観光競争力ランキング2007(TTC:The Travel & Tourism Competitiveness Ranking)」の表紙カバー(A4用紙で約450ページの長大なレポート)
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②「日経ビジネスASSOCIE」(日経BP社/2007年4月17日号)
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次に、簡単に目次を紹介しましょう。
紀要 2008年3月
「世界観光競争力ランキングと観光立国日本」
――日本のポジション25位の検証を通して―
はじめに
1.急速に進展する国際観光と「観光立国」に向かう日本
1-1.急速に進展する国際観光の実態
1-2.「観光立国」に向かう日本
2.「世界観光競争力ランキング」の内容と評価
2-1.競争力ランキング指標と世界各国の評価
2-1-1.競争力ランキング指標
2-1-2.特徴ある国・地域の評価
[中国] [フランス][香港(6位)・シンガポール(8位)・タイ(43位)] [韓国]
2-2.「観光国日本」の観光競争力の評価と検証
3. 観光競争力ランキング上の指標の特徴と提言
4.まとめー競争力ランキングの意義ー
5.参考文献
<論文スタート>
紀要 2008年3月
「世界観光競争力ランキングと観光立国日本」
――日本のポジション25位の検証を通して―
はじめに
世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum1))は、2007年3月に「旅行・観光競争力ランキング(TTC:The Travel & Tourism Competitiveness Ranking)」を発表した。当フォーラムは、今まで種々の観点から世界ランキングを発表してきたが、今回、初めて「旅行・観光」分野を取り上げたわけであるが、このことは、世界各国の経済発展にとり、旅行・観光がますます重要になってきた証左であろう。
本稿の目的は、「世界観光競争力ランキング」とはいかなる内容のものかを明らかにすることとともに、評価分析の結果出された競争力ランキング付けに関し、日本を事例として検証を試みようとするものである。ところで、発表された世界各国の競争力ランキングは、現在の世界観光ランキングとは大きな隔たりを有し(図表1)、例えば、外国人受け入れ数が世界一のフランスは12位であり、アジア最大の観光大国の中国は71位となっている。また、ここ数年30位-35位にある日本の順位が25位となっているが、これらの順位をどう解釈したらよいのか。
他方、UNWTOの2020年予測とも大きく乖離した状況にある(図表2)。果たして国際観光上の競争力とは何であろうか。主要な国々との比較を交え、日本に考察を加えて行きたい。この競争力ランキングのレポート結果を日経新聞では、次のように報告されている。「世界経済フォーラムが1日発表した初の旅行・観光競争力報告で観光業の活性化に取り組む各国の競争力をランキングで示した。欧米などの先進国が上位を占めるなか、観光立国をめざす日本は調査対象の124カ国・地域中25位と振るわなかった2)」。この記事が記述するように、日本の経済全体における競争力7位という現在のポジション(2006年度)と比較すれば、かなり後位にあることは確かである。ここで日本の観光競争力の検証を行う理由は、現在の「観光国日本」のポジションを的確に把握することにより、ビジット・ジャパン・キャンペーンを今後、いかに展開すべきかの方向性が示唆されるのではないかと考えたからである。
1.急速に進展する国際観光と「観光立国」に向かう日本
1-1.急速に進展する国際観光の実態
UNWTOは、現在の急速な発展に加え、将来の国際観光の動向について、2020年までに国際観光到着者数は平均4.1%で増加し、15億6,100万人に達すると予測している。これは、国際観光の高い成長率、雇用創出効果、国際収支への貢献度などに対して、各国・地域の認識が高まるにつれ、外国旅行者の誘致競争が一層増し、刺激し合う現象の結果であろうと考えられるからである。また、その時期の地域別シェアを見ると、ヨーロッパが45.9%、アメリカが18.1%、そして東アジア太平洋が25.4%となるとしている。また、世界上位の観光デスティネーションとしては中国がトップとなり、1億3,000万人、2位フランス、3位米国になるであろうとしている。
1-2.「観光立国」に向かう日本
小泉首相(当時)は2003年1月の施政方針演説の中で、「わが国の文化・観光魅力を全世界に紹介し、訪日外国人旅行者の増加とこれを通じた地域の活性化を図る」と“観光立国”の道を表明し、「2010年はテン・ミリオン(1,000万人)」の訪日外国人誘致プランを発表し、これを受け2003年を「訪日ツーリズム元年」と位置づけ、観光立国の道を歩みだした。日本経済が低迷する中で、「観光」を需要喚起に直結する、即効性ある景気浮揚策の“切り札”として考えたのである。
同時に、「外国人による日本の理解不足」や「文化交流面での弱さ」を挽回する作戦でもある。数値面で言えば、国際観光の極端ないびつ状況―「日本人海外旅行者1,600万人 vs. 訪日外国人500万人(3:1の比率)」―の是正策である。首相を先頭にしての「ようこそ、ジャパン!」のプロモーションなどで、「訪日外国人客誘致」キャンペーンの効果が、かなり出てきた。その結果、比率は、2004年(2.7:1)、2005年(2.6:1)、2006年(2.4:1)と乖離が小さくなっている。
日本人海外旅行客:訪日外国人1,652万人:524万人=3.2:1 <2002年VJC開始前年>
日本人海外旅行客:訪日外国人1,753万人:733万人=2.4:1 <2006年>
2007年には、「観光立国推進基本法」が施行され、加えて「観光立国推進基本計画」が発表された。かくして、目指す2010年は、2:1に限りなく近づいてくる計算になる。
一方、日本人の海外旅行者数は2003年にはイラク戦争やSARS(新型肺炎)で大きく減少したが、翌年には1,600万人レベルに戻し、2005年では1,700万人を超えたが、その後、“足踏み状態”になっているものの、グローバルな大交流の先進国の1つとして、“いびつ”を脱却した「観光立国ニッポン」の姿が少しばかり見えている。
2.「世界観光競争力ランキング」の内容と評価
2-1.競争力ランキング指標と世界各国の評価
2-1-1.競争力ランキング指標
世界124カ国/地域の観光・旅行の状況、政府・民間による観光への取り組み、その他の見地から、13の指標をベースにして比較検討の結果である。世界ランキングの具体的内容を考察する。当フォーラムは冒頭に、「我々のレポートは美人コンテストのようなものでなく、また、各国の魅力度を述べるものでもない」と記述されているように、このランキングは、観光に対する国の取り組みを中心とするランキングであり、観光地として人気があるかどうかは別問題である。
図表4<旅行・観光ランキング>世界ベスト20
図表5<旅行・観光ランキング>アジア太平洋の主要国
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では、ランキング付けはどのような指標(INDEX)に基づいて判定されたか。これを明確にする。
<A群>「観光・旅行上の規則体系」
1. Policy rules and regulations(政策上の諸規則)
2. Environmental regulation(環境上の規則)
3. Safety and security(安全性と治安)
4. Health and hygiene(健康と衛生)
5. Prioritization of travel and tourism(観光・旅行の優先性)
<B群>「観光・旅行上の環境とインフラ」
6. Air transport infrastructure(航空輸送インフラ)
7. Ground transport infrastructure(陸上交通インフラ)
8. Tourism infrastructure(観光インフラ)
9. Information and communication technology (ICT) infrastructure(情報・通信技術上のインフラ)
10. Price competitiveness(価格競争力)
<C群>「観光・旅行上の人的・文化的・自然的資源」
11. Human resources(人的資源)
12. National tourism perception(国民による観光上の意識)
13. Natural and cultural resources(自然・文化資源)
なお、指標入手の方法には2通りあり、1つは「ハード・データ」で国際的に公表されている数値(WEF、IATA、ICAO、UNWTO、WTTC、UNESCOなどの国際機関3)を中心とする)であり、他方は、旅行・観光分野の専門家、世界のビジネス経営者、研究者などからの「アンケート・データ」である。
では、ランキングの中身の算出方法について述べたい。ランキング指標は3個の「サブ・インデックス(Sub-indexA、B、C群とする)」に分かれ、A群.「観光・旅行上の規則体系」、B群.「観光・旅行上の環境とインフラ」および、C群.「観光・旅行上の人的・文化的・自然的資源」となっている。さらに、13個の「ピラー(pillar柱)」に分けられている。すなわち、A群は、政策上の諸規則(5)、環境上の規則(3)、安全性と治安(3)、健康と衛生(4)、観光・旅行の優先性(4)であり、B群は、航空輸送インフラ(6)、陸上交通インフラ(4)、観光インフラ(3)、情報・通信技術上のインフラ(3)、価格競争力(4)で、C群は、人的資源(11)、国民による観光上の意識(3)、自然・文化資源(5)である。
これらの「ピラー(pillar柱)」は、さらに、58個の「サブ・ピラー(Sub-pillar付随柱)」に細分化される。上述の括弧( )内の数値はそれぞれ3~11と個数の差がある。また、尺度としては、ポイント付けをしており、1~7と7段階制になっている。以上の資料データを集約し、「3」群内での平均数値で順位付けが算出されるものであり、13個のサブ・ピラーの総合計の平均値ではない。同時に、13個のピラーおよび、58個のサブ・ピラーの全てに関して、それぞれ世界ランク付けがなされており、注意を引く。実際面としてこれらの個々の世界ランキングがより役立つものであると考えられる。なぜならば、個々を検証することにより国家の政策や国民の方向付けの課題・問題点が浮き彫りにされ、それらに対策や戦略が立てられるからである。したがって、総合得点だけに注意を払わず、中身を検討する必要があると考える。例えば、日本の事例としては下記のような世界ランキングのポジションが発表されている。
まず、「ピラー分野」に関して述べれば、
①「観光・旅行政策の優先性」(NO.63)、②「価格競争力」(NO.107)、③「国民による観光上の意識」(NO.116)、④「安全性と治安」(NO.28)、⑤「航空輸送インフラ」(NO.16)となっている。さらに、細かい「サブ・ピラー分野」に関して言及すれば、(事例1)上記に示したように、「国民による観光上の意識」は世界ランキング「NO.116」でかなりの失望感を与えるが、サブ・ピラーの「外国人ツーリストへの態度」が「NO.82」であることを見ると、多少は安堵感を覚える。また、(事例2)「航空輸送インフラ」は世界ランキング「NO.16」で、その中でも、「航空輸送インフラの質」(NO.8)や「国際輸送ネットワーク」(NO.11)で嬉しい現象であるが、喜んでばかりいられない。「空港の混雑性」での競合力はNO.110とかなりの後順位である。
2-1-2.特徴ある国・地域の評価
今回、発表された世界ランキングを調査すると、興味深い海外の国々がある。すなわち、現在、強力に観光国として伸びつつある国・地域、またはUNWTOによる将来予測に高く評価される国・地域が、著しく下位もしくは、上位にランクされているケースが少なくないからである。これらの国・地域を検討してみる。
[中国] 今回の世界ランキング発表で、最も予期に反した国の1つは、中国であろう。なぜならば、近年、観光大国中国への道を歩んでおり、2006年度のランキングでは、世界NO.4の位置に上り、そして、2020年のUNWTOの長期予測では、世界1位のポジションにあるからである。さらに、現在、2008年北京オリンピック、2010年上海EXPOに向けて、好調な伸びを続けているからである。
当フォーラムの中国に対するコメントを紹介する。「中国は71位である。世界遺産数では、世界3位、価格競争力では11位であるが、ランキングを下げる多くの指標が存在する。まず、観光・旅行の進展を阻む要件、例えば、財産権の不十分な保護、外国人所有の制限、厳格なビザ制限などの政策環境の存在(97位)がある。持続的な発展に力点を置かない環境面に関する規則(88位)。他方、強さとして、航空面や地上面でのインフラの良さがある。しかしながら、レンタカー会社、ホテル建設不足、ATM設置の少なさなどの観光インフラ面ではかなり遅れたところがある(113位)。また、健康・衛生面(84位)に加えて、安全性・治安にも懸念がある(83位)。しかしながら、国際観光展示会・プロモーション面で、観光への優先性がある程度、見られる(33位)」。
当フォーラムのコメントは、日本よりも詳細に記述していることは、注目度が高い証拠なのかもしれない。実際面での競争力の強さと今回のランキングとの乖離があるから、敢えて詳しく述べようと試みたものと推測される。
[フランス] 長らく、世界NO.1の位置にあるこの国の競争力が、ベスト10圏外である。その理由を探ってみる。当フォーラムは次のように述べている。「フランスは、世界最大の旅行デスティネーションだが、競合力に関してはベスト10の欄外の12位にある。この国の強さは、まず、自然・文化遺産―30の世界遺産があり世界中でトップである。次に、空や地上におけるインフラの質(それぞれ、世界4位)、そして、健康・衛生面(世界9位)である。しかしながら、これらの強さは、次のような弱点により相殺されている。弱さとは、『国家の政策に関する規則』(40位)、『国民の観光上の意識』、とりわけ『国民の旅行者に対する態度』が極めて低く、これは世界124カ国中、第122位である」。弱さについて補足すると、「価格競争力」もかなり低く(118位)、「優秀な労働力の確保」面でも、かなり弱く(112位)判定されている。
[香港(6位)・シンガポール(8位)・タイ(43位)] これらは隣接した国および地域であるが、総合ランキングに関してタイは大きく水をあけられている。当フォーラムのタイに対するコメントは「世界43位である。国民による観光上の意識は比較的に良く35位である。中でもタイ国民の外国人旅行者への態度は極めてよく6位となっている。また、デスティネーション宣伝や観光・旅行産業による見本市などへの政府の観光への優先性も良く、14位となっている。しかしながら、観光・旅行上、重要視されている輸送や観光面でのインフラが極めて悪く、発展途上国並みの状況である。同時に、政府の観光への強力な志向を持ちながらも、法律整備の環境―例:外国人所有に関する強い規制、外国人による直接投資など―は世界での競合力を弱めている(この面は55位となっている)」。今回、当フォーラムが、冒頭に、「我々のレポートは美人コンテストのようなものでなく、また、各国の魅力度を述べるものでもない」と言っているが、「香港・シンガポール vs.タイ」に如実に表現されているように思える。
[韓国] ランキング42位を考えてみる。観光・旅行振興では、官民そろって活発な状況にある韓国が、なぜ日本よりかなり遅れているのか疑問が生ずる。なお、当フォーラムから韓国に対しての特別なコメントはない。まず、韓国における「政府の観光への支出」(韓国73位vs.日本39位)に関してはどうであろうか。
韓国政府の支出に関して、常日頃、この種のコメントに接している。「例えば、隣国の韓国と比較してみると、韓国の国家予算が約9兆円、日本の国家予算が約82兆円であるのに、観光に関する職員数や予算は、職員数が韓国の7分の1、予算としても韓国の7分の1にすぎない4)」。
次に、「マーケティングとブランド戦略(韓国73位vs.日本80位)」に関して述べれば、政府を先頭にしての観光振興は、「観光大臣(文化を兼ねる)」のポジションを設け、大統領(金大中氏時代)が前面に出た観光振興宣伝はかなり前から、実施している(日本では、2003年に小泉元首相が海外のテレビに初出演)。このように観光マーケティングの重要性を認識しており、国家のトップを上手に利用している。最近、“HANRYU(韓流)”と称され、日本、中国、アジア全域にテレビ・ドラマ・音楽を中心にして、ブームを起こしている。韓国のブランディング戦略の巧さが抜きん出ている。
3番目に、「外国人旅行者への態度(韓国111位vs.日本82位)」に関して、接触の多い日本人の1人として考えた場合、「111位」というランキングはかなり低いのではと考えている。なお、この後者のランキング付けに関しては、韓国の大学教授からも同種の疑義5)が出されている。
2-2.「観光国日本」の観光競争力の評価と検証
「評価が高かった項目は、衛生や教育、国内の交通網などに関連するものだ。逆に低評価だったのは、価格や観光関連の政策、規制などの点である。こうしてみると、そもそも日本が持つ良さが高得点を叩き出し、観光政策上の直接的な課題を十二分にカバーした結果、25位になったと言える6)」と日経ビジネスASSOCIEは述べている。また、当フォーラムは日本の競争力ランキング25位に関して、レポートにこのような簡単なコメントを掲げている。
図表6 「日本における観光競争力」(2007年度)
<極めて競争力のある指標>
・環境関連の規則の明確性と安定性
・衛生・飲料水へのアクセス
・有効航空座席キロ(座席数x運航キロ)
・航空上のインフラの質および
ネットワーク
・地上面(列車・道路・港湾)での
インフラ
・ホテルなど宿泊設備の部屋
・インターネット設置
・初等・中等教育・スタッフ訓練
・地域による調査・訓練サービス
・HIV/マラリアへの対応
・マラリア・黄熱病の危険性
・ビジネス上のエコシステムへの関心
・世界遺産数
<極めて競争力の劣る指標>
・外国人による直接投資に関する規則
・外国人所有の規制
・ビザの必要性
・持続的観光・旅行に対しての政府の優先性
・テロに対するビジネス・コスト
・医師の配備数
・観光・旅行産業に対しての政府の優先性
・観光上のマーケティングおよびブランディン
グの効率性
・空港の過密性
・レンタカー会社の存在
・等価購買力
・燃料価格基準
・航空券上の税・空港税
・外国人労働力雇用の容易性
・実際面における雇用・解雇制度
・ビジネス・トリップの延長への推薦度合い
・観光へのオープン性
・ツーリストへの態度
「日本の25位というランキングは、経済全般の競争力と比較して、やや低いポジションにあるー現在、日本は経済全般の競争力は7位に位置しているー。多くの日本の強さは、観光・旅行の発展に対して魅力的なものとなっていない、すなわち、結びついていない。日本の強さ、例えば、14の世界遺産を持つ『文化的遺産』は15位に入っているが、『国民による意識』は116位にありーこれは日本人による訪日外国人・受入態度などであるがー、さらに、政府による『観光・旅行の優先性』の遅れ(98位)がある」。やや簡単すぎるコメントであり理解が難しいので付け加えることにする。「強み」として、「文化的遺産」(15位)以外に、やや間接的と思える「教育レベル、トレーニングスタッフなどの人材」、「ずば抜けた衛生面」、「発達した道路・鉄道ネットワーク」などが、「劣勢な国民のホスピタリティ」や「政府の観光政策などのマイナス面」を引っ張り上げ、その結果、25位となっている。国際観光振興上、ホスピタリティや国家政策は、極めて重要であると考えている。
とにかく、今回の日本の競争力の発表の中で、極めて打撃を与えると考えられる順位は、「国民による意識」の116位ではないだろうか。観光立国日本建設に当たって、最も重要視しなければならない指標であると考える。この日本人のホスピタリティに関して、JNTO国際観光振興機構の毎年の調査では次のように発表されている。「日本訪問前・訪問後」の印象によると、「日本の人々が親切・礼儀正しい」という項目があり、常に、NO.1に位置していると公表されているからである(図表7)。
3. 観光競争力ランキング上の指標の特徴と提言
今回の観光競争力ランキングを検証するといくつかの特徴が浮かび上がる。
①基礎的な各種インフラが整備されているかどうかが、世界観光競争力に大きく影響する。
②国内(または、地域内)における地域格差が少ない場合はランキングが上昇する傾向にある。したがって、国内地域での格差が甚だしいケースでは、かなり順位が遅れることになる。
③大国より小国が有利に働く傾向にある。例えば、香港やシンガポールなどである。中国に関しては、大国の上に、国内地域での格差が見られる場合には、後塵を拝することになる。全国的に見れば確かに弱さがあるが、局部的(北京、上海など)にはかなり競争力を持っていると考える。この種の現象をどう評価するかである。
また、
④国際観光上の「安全性」や「衛生面」如何がランキング・アップに大きく影響する傾向にある。
⑤英語を母国語、もしくは一般的に使用されている国・地域がランキング・アップに繋がっている傾向にある。以上のような、特徴が見られるのではないかと考える。
中でも、⑤に関しては、すなわち、「言語上の問題」である。124の国・地域では様々な言葉が話され、観光・旅行に関して、英語以外で発信されている内容を理解するのは、一般的に難しい。英語を母国語、ないしは英語に慣れた国・地域が有利になることは否めず、実際のランキングにはその現象が出ている気がする。地域的に、近年、急上昇しているアジアを見ても、シンガポールや香港が上位に入っている以外、他の国々はかなり後ろに位置している(もちろん、言語以外に問題点はあるが)。現在、日本では、ビジット・ジャパン・キャンペーンが展開されているが、英語での発信はかなり少なく、例えば、100人の「観光カリスマ」に関しても、選出過程、どのようなプロフィールを持つ人物か、選出後どのような行動をしているか、世界にはほとんど伝わっていないと言ってよい。また、タイの43位のポジションも、日本同様、言語面でマイナス面を与えているように思える。
ところで、ランキング評価方法に関して、次のように提案する。「群」、「サブ・インデックス」、「ピラー」、「サブ・ピラー」などの種々の指標の中で、これらを同列に論じることなく、観光競争力把握に関し、「直接的なもの」と「間接的なもの」と区別して、ポイント計算をしたらどうであろうか。すなわち、観光開発・振興に大きく影響するインデックスに対しては、より比重をかけて計算を行う方法がある。例えば、「直接的なもの」としては、「安全性と治安」、「観光・旅行の優先性」、「航空輸送インフラ」、「価格競争力」、「国民による観光上の意識」などであり、他方、「間接的なもの」、すなわち基礎的なインフラに該当するようなものとして、「人的資源」(教育レベル・訓練など)、「健康と衛生」(飲料水へのアクセス度合)などが該当しよう。例として、人的資源である「教育レベル」が高くとも、政策や方向性が観光・旅行に向いていなければ、潜在性はあるにしても競争力にならないことになる。このことは、日本に当てはまることである。また、「教育レベルが低い」と判断されている中国では、外資のホテルや旅行会社導入で外国人の教育レベルを活用している事例がある。また、健康・衛生の飲料水に関して、世界的に飲料用ボトルの普及で、競争力で大きな差になるか疑問でもある。いずれにしても、評価項目を増加させたり、修正したりして改めることも過去の他の世界ランキングの事例では見られたので、今後の動向を注視していきたいと考える。
4.まとめー競争力ランキングの意義ー
種々述べてきたが、当フォーラムの世界ランキング付けの発表には、大いなる拍手を送ることには変わりはない。この種のランキング発表には次のような意義が見られる。①観光や観光産業の重要性の意識を世界的に高めるとともに、②国際観光振興により、発展途上国・地域の活性化に大いなる貢献をなすものと考える。現在、ビジット・ジャパン・キャンペーンを展開しつつある日本においても、ここ数年間、劇的な変化を来たしている。観光立国推進基本法が2007年に施行され、また、観光立国推進基本計画も策定された。2008年後半には観光庁も設置される予定になっている。このような環境下で世界へ発信する観光情報・データを1つとって、従来にないボリュームになっている。このような当フォーラムの世界観光競争力ランキングが、1つの刺激となることは確実である。しかしながら、このランキングに関して、日本国内での話題は、残念ながら、同一の新聞の記事があちこちに登場するのが大半であり、評価、意見、反論の類の記事はほとんどない。これは、観光・旅行への熱意度がいまだ低い証左なのだろうかと考える。今回の世界ランキングの発表に対して、観光立国推進担当大臣、ビジット・ジャパン・キャンペーン事務局、JNTO(日本国際観光振興機構)のコメントなり、反論なりが提出されるようにならなければならない。なお、継続的な発表によって、このランキングがその価値を発揮するものと考える。と同時に、観光競争力が社会的に話題になることにより、グローバル・ツーリズムは発展し、究極の目的である「世界平和」へと結びついて行くと考える。 (了)
5.参考文献
http://memorva.jp/ranking/eiu/wef_world_tourism_2007.php
財)アジア太平洋観光交流センター「世界観光統計資料集2001-2005年版」APTEC、2007年。
財)アジア太平洋観光交流センターAPTEC(1999)「ツーリズム:ビジョン2020」APTEC
鈴木勝「国際ツーリズム振興論(アジア太平洋の未来)」税務経理協会、2000年。
鈴木勝・国松博「観光大国 中国の未来」㈱同友館、2006年。
㈱ ツ-リズム・マ-ケティング研究所「JTBレポ-ト2007」 ㈱JTB監修
(財)関西社会経済研究所(2005)「サービス産業部門等における関西地域活性化方策に関する調査研究報告」KISER。
杜)日本観光協会「数字でみる観光2006年度版」社)日本観光脇会、2006年。
香川眞編著「現代観光研究」嵯峨野書院、1996年
津山雅一「東アジア・西太平洋地域における爆発するツーリズムの背景」(『日本国際観光学会論文集(第3号)』)1995年。
津山雅一・太田久雄著『海外旅行マーケティング』同友館、2000年。
今井成男・古田正一著『観光概論』JTB能力開発、1998年。
王文亮(2001)「中国観光業詳説」日本僑報社
JNTO(2000-4)「世界と日本の国際観光交流の動向」財国際観光サービスセンター
関門地域共同研究会『関門地域の国際観光振興―中国編―』「関門地域研究VOL.14」(2005)
大西広編著(2004)「中国特需―脅威から救世主へと変わる中国―」(紫翠会出版)
中国国家旅遊局「中国旅遊統計便覧2003-5年版」
中国旅遊出版社「中国旅遊年鑑2000-2」
国交省(2004)「観光白書 平成16年版-外国人の訪日観光動向」
6.注
1) WEFは、本部がスイスのジュネーブで、ダボス会議の主催団体。
http://memorva.jp/ranking/eiu/wef_world_tourism_2007.php
2) 2007年3月2日朝刊
3)IATA(International Air Transport Association)
ICAO(International Civil Aviation Organization)
UNWTO(World Tourism Organization)
WTTC(World Travel & Tourism Council)
UNESCO(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)
4) (東京都産業振興プラン:ホームページhttp:
//www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/singikai/kankou2/1_3.htm)<韓国&日本>政府観光局の組織と予算資料)国際観光白書2001版「世界と日本の国際観光交流の動向」
5) 「韓国観光政策」(Korean Tourism Policy)2007春NO.27
6) 日経ビジネスASSOCIE2007.04.17 P.74
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桜美林大学教授。
日本および海外で旅造り33年間。
8年前から、“サラリーマン貫徹派”教授として、大学の教壇で学生相手に「国際ツーリズム振興論」etc.を講義。
現在、インバウンド&アウトバウンドの双方向観光が均衡&拡大する「観光立国ニッポン」造りに微力を投入中。
プロフィール詳細は→こちら
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