トランジット・ツアーの効果と活性化:鈴木 勝 - 観光立国ニッポン事始め

観光政策

ビジット・ジャパン・キャンペーンVJCがスタートして、この“トランジット・ツアー”が取りざたされています。このツアーはどのようなものなのでしょうか。そして、その効果は? 

一時期、ポスターや何かで、アピール度が強かったのですが、最近はややトーンダウン! 今日は、少しばかり、これについて書いてみたいと思います。

ところで、今日のこの写真は海外トランジット・ツアーの宣伝。
⑥transittour 2.JPG

いつぞや、イラン航空でテヘランに行った帰りに、韓国の仁川(インチョン)空港に立ち寄りました。空港で3時間ほどの時間があり、トランジット・ロビーをうろうろした時に、目に付いたのが、この看板。

様々なツアーがあります。「2時間コース」、「4時間コース」、「5時間コース」と表示され、「空港周辺ツアー」、「スパツアー」、「仁川市内ツアー」、「ソウル市内ツアー」etc.特に、ポスターの「短い出会い、長い余韻」のこのキャッチフレーズには感嘆いたしました。

『TRANSIT TOUR』・・・国際観光を活性化する手法として、世界で注目されているツアータイプの1つ。これらは、観光や業務出張で目的国への飛行の途中(または、帰路)に立ち寄った空港で、ちょっとばかりその都市を垣間見ようとするインスタント観光。

トランジットそのものの意味は「通過」のこと。その客を「Transit Passenger」(通過客)と呼んでいます。より専門的に言えば、Stop Over(途中降機)にあたらない「乗り継ぎ」のことです。

外国人誘致に懸命な国々、いわゆる「観光先進国」と称される国は、すでに積極的に取り組んでいます。また、世界の「ハブ(中心・中枢)空港」を目指す空港もこの客層誘致に力を入れています。

そのために、立派な「Transit Lobby 」をつくり、種々の「Transit Tour」を企画し、24時間利用可能でいつでも眠れる便利な「Transit Hotel」を建てたり、また、一時入国するのに容易にと「Transit Visa(簡易ビザ)」を政府が発行したり、もしくは、思い切って”48時間ビザなしTransit”を許可したりします。とにかく、世界から飛んでくる旅行客をわずかな時間でも、快適に過ごしてもらうことを考えています。

 例えば、この写真のインチョン空港以外にも、アジアの空港ではシンガポール・チャンギ空港、香港のチェク・ラプ・コック空港なども通過客誘致に懸命です(もちろん、最終的目的地となることが最も望ましいのですが・・・)。

特に、チャンギ空港は、10年以上前からシンガポール航空を中心とし日本の旅行会社数社とタイアップして、共同出資し、積極的にこの作戦を展開しています。Transit LobbyにTransit deskを設置し日本語ができるスタッフを配備し、無料のTransit Tourまで準備しています。こんな努力の結果もあり、この空港は世界に冠たる「ハブ空港」になっているんでしょう。

また、香港空港での政府の取組みのすばらしさは、Transit Passengerに関する統計データが細かい部分まで完備していること。例えば、通過客の人員把握はもちろん、それらの客がトランジット中に消費した平均金額まで捉え公表していることです。

ところで、日本における成田や関西空港のトランジット・ツアーはどうでしょうか?
2-3年前に、大きなポスターやチラシを作成し、わが大学にも目立つところに掲示されていました(期間が限定されていましたので、最近は、無くなっておりますが・・・)。

日本におけるTransit Tour計画は、「どんなツアーを作ったらよいか?」の種類にばかり焦点が当てられているような気がします。

考えられる作戦は・・・・、
1)もっと海外の航空会社、旅行会社をインボルブする(提携・協力する)方法で、実施したらいかがでしょうか?

2)日本国内での宣伝以上に、海外での宣伝を強化すべきでしょう。したがって、短期間(日本でのポスターは「半年間」でした)では、効果は出てきません。海外の旅行雑誌などに登場するには、少なくとも2年間は必要と思っています。

3)宣伝費用は、日本側のみならず、海外の航空会社や旅行会社などを活用する方法もあります。

4)日本政府による「Transit Visa」、または「ビザなしTransit」などの制度をスタートさせる工夫など。
以上、簡単に掲げましたが、もっと視点をグローバルに、そしてドラスティックに変えるべきでしょう。

トランジット・ツアーは、“飛行機に乗る直前”や“搭乗して日本に到着したらこんなツアーがあった”では、大きな効果はないのです。何ヶ月前に、旅行を計画する際に、「成田」や「関空」のトランジット・ツアーが目に入る必要があります。

(例えば、ロンドン→シドニー行きを考えているイギリス人に対して、「SIN」、「HKG」、「BKK」などの経由で飛ばず、「NRT」または、「KIX」経由で行かせることを考えさせ、その結果、喜んでもらわなければならないのです)。

こう考えますと、シンガポール・チャンギ空港などの先輩エアポートと比べれば、作戦的には10年くらい遅れている計算ではないでしょうか。

ところで、「トランジット・ツアー」の充実を重視する理由、すなわち「効果」はなんでしょうか?
①「ハブ空港」(世界中の航空機が飛来する)として、より拡大&活性化させるために。

②トランジット客といえども、経済的効果の外貨獲得を目指すことができるため。すなわち、経済的な“チリツモ(少ない金額でも人数が多くなれば)”を期待(香港空港を見習うべき)できるということ。

③トランジット客のリピーター化に寄与するために。簡単に言えば、今回はビジネスで立ち寄りですが、次回にはファミリーとともに。すなわち、最終的な目的国(デスティネーション)として誘致できる潜在力が極めて高いため。したがって、トランジット・ツアーを宣伝の一環と考え、”破格値”または、無料で催行したらどうでしょうか(シンガポール空港は、この作戦に近い形で実行しています)。

④これはオマケです。「2010年に1,000万人の訪日外国人」をターゲットとして目指している日本の政府の方々に寄与?トランジット客はプロモーションの仕方で、大きく伸ばすことが可能です。ターゲット人員上積みにはもっとも便利な方法の1つではないでしょうか?

なお、ご参考までに、日本での主なトランジットツアー・コース(YOKOSO! JAPAN WEEKS2006に実施し掲示された)を紹介しましょう。

<成田空港>
○成田空港周辺日本体験ミニツアー(所要時間:約3時間)
  ・酒蔵見学・試飲、寺の参拝と護摩体験、昔の町並み散策等
○東京発・成田空港発 日本体験1日ツアー(所要時間:約5.5/6.5時間)
  ・小江戸・佐原コース等
○イブニング・空港周辺買い物ツアー(所要時間:約3時間)
  ・イオン成田ショッピングセンター

<関西空港>
○関西空港周辺買い物ツアー(所要時間:約3時間)
  ・りんくうアウトレット、イオンりんくう泉南ショッピングセンター
○関西空港周辺散策(犬鳴山)ツアー(所要時間:約3時間)

<追記>「関西空港」催行の、「関西空港周辺散策(犬鳴山)ツアー」は現在、行われていないようですが・・・。(この写真の左下「インスタント温泉SPA」がなくなっているようです)。
⑤15-1transit.JPG
 

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プロフィール

大阪観光大学教授 鈴木勝

鈴木 勝 (すずき まさる)

桜美林大学教授。
日本および海外で旅造り33年間。
8年前から、“サラリーマン貫徹派”教授として、大学の教壇で学生相手に「国際ツーリズム振興論」etc.を講義。
現在、インバウンド&アウトバウンドの双方向観光が均衡&拡大する「観光立国ニッポン」造りに微力を投入中。

プロフィール詳細は→こちら

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