日本文化
私は、現代の浮世絵の摺り師を探していた。和本入門を書いている橋口侯之介氏が、紹介してくださったのが゜、上田真吾氏である。擦師→職人→熟練→高齢という、単純な予想をしてあった私は、正直びっくりした。
上田さんは、白いジャケットの良く似合う紳士だった。古書会館の屋上で、写真を撮ったが、緑とビルが背景で、バランスのとれた写真となった。今回の講座のテーマは、「浮世絵を生んだ技術の探訪」である。木版画も、伝統技術と現代のバランスのなかにあるのかな、とも感じた。
ここで二つの木版画を比較しよう。
これは、有名な葛飾北斎の赤富士である。そして、もう一枚は、キアロスクーロという手法で、ルネサンスとバロックの多色木版画である。ドイツで発明され、イタリアで発展し、ヨーロッパに広まった多色木版画の手法である。キアロスクーロ版画は複数の同系色(例えば黄色・茶色・褐色)の版を重ね合わせて印刷することによって、明暗や立体性を表現しようとしたという。3年前、国立西洋美術館で、このキアロスクーロの企画展があったので、鑑賞した。確かに、荘厳なテーマの作品が多いが、同系色ばかりで、浮世絵のような華やかさは、感じられなかった。
西洋の人々が、同じ木版画でも、浮世絵、錦絵の多色刷り、デフォルメされた表現などを見たとき、驚愕したことは、この2枚の版画の比較だけでも理解できる。このたび、日本文化体験交流塾では、浮世絵を生んだ技術を一つひとつ検証する講座を企画した。喜多川歌麿、歌川広重など、有名な絵師の名前は知っているが、本当にどのように浮世絵が作られたのか、実は、良く分からなかった。下絵師、彫師、摺り師、絵の具、紙づくりなどの多くの技術が、多色刷の版画を可能にした。それを講演とともに、実演の再現により、知りたいという私の好奇心がこの企画を立てさせたのである。
上田さんは、南米も、ヨーロッパも訪問して、その技術を見せたという。そして、やはり、この日本の風土があったから、良い木版画ができたと痛感したという。その秘密は、和紙、版木、湿度、それぞれに重要な要素があるという。自ら、版木も彫り、摺りも実践する上田さんだけに、その発言に重みを感じた。上田さんは、恵比寿で常磐書房を経営するとともに、松戸で富士木版工房を運営している。上田さんが実演する講座の詳細は、日本文化体験交流塾のホームページhttp://www.ijcee.com/をご覧いただきたい。
