インタビュー

アパグループ代表②

2010.12.10

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空港からアクセスの良い幕張のホテルを拡大、さらにLCC就航で需要が高まる札幌にも期待

村山

昨今の外国人観光客によるホテルの利用状況はいかがでしょうか。

元谷

震災後は激減したものの、ここのところ急速に増加し、震災前の一定水準を超えるまでに至りました。このペースでいけば、あっという間に現在の4倍程度の需要が生まれるであろうと予測しています。外国人観光客の方々は、私たちがイギリスに行ったらロンドンに、フランスに行ったらパリを訪れるように、まずは東京にいらっしゃいます。現在、東京エリアにおいてホテル建設を急ピッチに進めているのも、実はこういった需要を見込んでのことでもあるのです。

村山

特別に外国人向けにご用意されたホテルはあるのでしょうか。

元谷

私どものホテルのメインユーザーは、490万人の会員様であり、その大半がビジネスユースなので、特別に外国人観光客向けの施設を用意しているわけではありません。
しかし、ビジネスユースはどうしても平日利用が中心となってしまうので、週末を中心とした観光需要を戦略的に狙っているところではあります。

弊社では千葉県の幕張エリアに1000室規模の大型ホテルを用意しているのですが、成田、羽田両空港からのアクセスが良いということで、外国人観光客のご利用が多い。現在500室の増築を計画しているのもその観光需要戦略のひとつです。日本独自の文化として外国人の方から評判の高い大浴場も新設し、3000人収容可能な規模のホテルへとさらなる拡大を図ります。もちろん、幕張に限ったことではないのですが、外国の方々に不便を感じさせないよう、英語が話せる従業員を配置していますし、翻訳端末も設置。言葉の問題で支障をきたすことはありません。

村山
外国人観光客に対するアピールとして、どのような手段を講じていらっしゃるのでしょうか。

元谷

海外の旅行サイトとの連携を強化したため、ダイレクトに予約を入れて下さる個人客の利用が増えています。以前に海外エージェントを通じていらっしゃった団体客の方々に比べてもご利用単価が高く、当社にとっての優良顧客であるため、今後も個人利用客の拡大を図っていきたいと考えています。また、国内LCC(ローコストキャリア)の就航によって、東京からの移動費用が格安となった札幌エリアにも期待を寄せています。外国人観光客が、何度も日本にやってくれば、東京の次に京都や北海道など、他の地域へ足を延ばしたくなるものですからね。現在、札幌周辺に4物件を保有していますが、需要の増加を睨み、新たに3軒の買収を進めているところです。

日本の魅力を日本人自身が理解し、“人”だけでなく親切な“国”であるべき

村山

日本の観光政策やインバウンドを取り巻く環境は、決して楽観視できるものではないといわれていますが、元谷代表はどのような点に問題が存在していると思われますか。

元谷
日本の素晴らしさを、日本人自身がしっかり理解していないことが最大の問題でしょう。多くの外国人の方がよっぽど正しく評価し理解をしていると思います。治安の良さはもちろんのこと、 インドやアジア諸国に比べても、飲食店や宿泊施設が各段に清潔で衛生状態が良いし、しかも四季があり風光明媚で、歴史もある。さらに、日本人は外国人に対しておしなべて親切であり、あらゆる意味において日本は素晴らしい観光資源を有する国といえますよね。にも拘わらす、国民が良さを理解しなければ、アピールなどできるわけがありません。

村山

おっしゃる通りです。もっと自信を持って、外国人の方々をお迎えすべきなのでしょうね。

元谷

近隣諸国の所得水準もアップしており、いわゆる“離陸期”を迎えているので、今後一気に海外旅行熱が高まっていくでしょう。その昔の日本もそうでしたよね。最初は団体旅行が中心でしたが、どんどん個人旅行へとシフトしていきました。この絶好の機会を逃すべきではないということです。例えば、東京にオリンピックを誘致するのもひとつの手だと思います。私は、36年前からすべてのオリンピックの開閉会式を見てきましたが、その国の魅力を理解するのに絶好の機会だったと実感していますよ。

村山
東京へのオリンピック誘致に反対する声も聞かれますよね。
元谷
反対する方がおかしいでしょう(笑)。税金を投入することに抵抗を感じている方が多いのかもしれませんが、間違いなく収益の方が多くなり、トータルではプラスになりますよ。施設だってすでにあるものを利用すれば良いのですから、莫大な予算を掛けて一新する必要もない。国民の多くが偏った情報に踊らされているようで、残念でなりませんね。オリンピックに合わせて、海外からの観光客は大挙して訪れてくれるわけですし、さまざまな整備が進めば、その後インフラも整っていくのですから。とにかく、国が一丸となり大きな目標を持って、前に進んでいくことも必要だということです。

村山
課題はありませんでしょうか。

元谷
人間は親切なのに、制度や仕組みについては親切心に欠けています。例えば、道路標識。外国人の方がレンタカーを使って移動ができるように英語表記にするなど、わかりやすくする必要があるでしょう。みなさんが楽しい思いをして帰ってもらえるような、そんな思いやりのある国になっていく必要があると思うのです。

村山
本日はありがとうございました。

 

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