インタビュー

フランス政府観光局局長 カトリーヌ・オーデン氏 スペシャルインタビュー②

2008.04.10

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Q8.日本が観光立国となるためにクリアしなければならない課題は何だと思いますか?

大きく分けて3つあると思います。
まず一つ目は、外国人が知っている日本の情報が限られているということです。インターネットが普及し海外への情報発信が進んできていると思いますが、それでもまだ外国人にとって日本のイメージはぼんやりしたものでしかないと思います。日本の正しいイメージを持ってもらうためにも、海外への情報の露出をもっと増やしていく必要があります。

二つ目は言葉の問題です。最近では駅での外国語表記は充実してきていると感じますが、他の公共施設などはまだまだ足りていないと思います。例えば、欧米人は美術館や博物館などが好きなのですが、外国語表記が少ないために理解することができず、楽しめないで終わってしまうこともあります。それは大変もったいないことだと思います。公共の施設ですので、どんな方でも利用できるような体制を整える必要がありますね。

三つ目は物価が高いというイメージがまだあるということです。現在はユーロ高などで以前と比べ日本の物価はそれほど高くないのですが、まだ日本は物価が高いというイメージがあり、それにより日本への旅行を躊躇している人が多くいます。しかし、実際に日本にきてみるとリーズナブルな値段でご飯を食べたりすることができるので、そのイメージを変えてあげなければなりません。これは一つ目にあげた海外への情報がまだまだ少ないということになるのですが、正しい情報を伝えることで、先入観や偏見を取り除いてあげることが必要です。

情報の発信の仕方はいろいろあるのですが、例えば日本に住んでいる外国人や日本が大好きな外国人に日本を紹介してもらうというのは面白いのではないでしょうか。やはり日本人と外国人の視点は違いますので、日本人にも気づかないような外国人からの視点で日本を紹介してもらえると、より魅力が伝わると思います。

Q9.日本を一つのキーワードで表すとしたら何でしょうか?

なかなか難しい質問ですね。日本の全ての魅力を一言で表すのは難しいと思いますが、フランスにおける日本のキーワードとして”禅”というのがあります。これは日本の凛としたイメージやシンプルで繊細な部分を表現していると思います。外国人にとって日本は美しく厳かで、ゆったりと静まった雰囲気を持っており、それがこの言葉で表されているのではないでしょうか。

Q10.オーデン氏の愛する日本の美しい風景を教えてください。

私は日本が好きなのでたくさんあるのですが、例えば秋の景色などが好きですね。紅葉で染まった山々などはとても美しいと思います。また私は温泉めぐりが大好きなので、ゴールデンウィーク中東北まで足を伸ばし、温泉に入ってきましたが、とてもよかったですね。そのほかには岩肌のごつごつした海岸線のある伊豆なんかも好きですし、あと飛騨高山はもう20回以上も行っています。基本的には田舎や自然のある風景が好きです。

Q11.もしご友人に日本を紹介するとしたらどのようなところに案内しますか?

東京のような近代的な場所と、自然の美しい田舎の両方を案内するのがいいと思います。東京は日本に来たら皆さん必ず行くと思いますが、田舎も友人達を連れて行くと大変喜ばれます。大都会と田舎のコントラストが非常に面白いと思いますし、とても印象に残るのではないでしょうか。 また、このコントラストはいろいろなところにあり、例えばレストランにしても近代的なレストランと居酒屋のようなところもありますし、東京の地下鉄と地方のローカル線もまた違います。そういった二つの側面を見せてあげると両方の魅力を味わうことができます。東京の中にもそのようなコントラストはあり、ビルの中にある日本庭園や、神楽坂のような日本らしい街並みが残る場所などいいですね。また、こういった場所をきちんと案内できる人がいるとますます日本の魅力は深まっていくと思います。

Q12.日本により多くの外国人旅行者を誘致するにどういったことをすればよいでしょうか?

%e5%9b%b36まずは雑誌やテレビなどのプレスで多く取り上げてもらうことだと思います。もちろんインターネットもいいのですが、私自身インターネットで見る情報よりも雑誌やテレビなどで見た情報の方がより魅力的に感じます。まずは雑誌やテレビ等で行きたいと思ってもらい、インターネットで情報を収集するというような関係がいいのではないでしょうか。 あとは、日本好きの外国人に日本を紹介してもらうということです。やはり日本人と外国人は考え方やものの見方が違っており、外国人に日本の魅力を伝えるには、日本のことが大好きな外国人に日本の魅力を語ってもらうのが一番効果的だと思います。日本人が当たり前と思っていることが外国人にとってとても興味深いものだったりすることがあります。そういった部分を上手に伝えることができるのは日本好きの外国人だと思います。
そのほかには、有名人の方に広報大使をしてもらうことです。例えば、フランス政府観光局では毎年フランスが好きな有名人の方に広報大使になってもらい、宣伝活動を行ってもらっています。今年はフジテレビキャスターの滝川クリステルさんと華道家の假屋崎省吾さんに広報大使をお願いしています。このように、日本が大好きな有名人の方に広報大使になってもらい日本の魅力や日本を旅行する楽しさを語ってもらうととてもよいPRになると思います。
また、いま非常に気がかりなことは、日本の伝統家屋がどんどん破壊されつつあることです。私たち外国人は日本の伝統家屋の魅力に非常に敏感ですが、残念ながらそうした家屋はもう多くは残っていません。たとえば私が住む神楽坂周辺なども大変危機的な状況です。昔日の魅力は失われつつあり、伝統家屋がすべて取り壊されてしまったあかつきには魅力的なものは何も残らないでしょう。日本がこの点で格別な努力をしない限り、外国人の日本に対する興味を持続させることはできないだろうと思います。近代的な側面だけでは日本を訪ねるモチベーションとして十分ではないと考えます。

Q13.オーデン氏のミッションは何でしょうか?(観光カリスマ山田桂一郎氏からのご質問です。)

日本とフランス2国間の交流をより深めていくことだと思います。今年は日仏交流150周年の記念すべき年ですが、今後もより深い関係を築き上げていくためにも私達がいろいろな活動を行い、相互の理解を深めていきたいと考えています。また、相互の交流により出会いが生まれ、それを通じて心が豊かになっていくといいと思います。私自身いろいろな国を訪れ様々な人と出会ってきましたが、どれもとても良い経験でした。その国のことを深く知ることで、お互いの距離がぐんと縮まります。出会いを通じた心の豊かさというものを多くの人に広げていきたいと思います。

Q14.今後の抱負をお聞かせください。

フランスと日本の相互の関係を深めていくとともに、フランスを訪れる日本人旅行者のためにも、様々な要望に応えられるようにしていき、より快適な旅を提供できればと思います。旅に人が何を求めているのかを知り、多くの人の声に耳を傾けていくことが私の役目です。私はこの観光の仕事が大好きで、今まで仕事に行きたくないと思ったことは一度もありません。今後も日本を知り、フランスの魅力を伝えていくこの仕事に胸を張って取り組んでいきたいと思います。

インタビューへのご協力誠にありがとうございました。

 

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