インバウンド特集レポート

着地型観光が花盛り! 世界シェアを狙え ユニークな体験がビジネスになる②

2015.03.04

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マーケティング力を加えると化学反応した!

一方、異業種からの参入もある。BOJ(Beauty of Japan)だ。

http://bojinc.com/
代表の野口貴裕氏は、ソニーを退職して新しいこの会社を立ち上げた。

野口氏は、高校、大学とカナダで8年間を過ごした。帰国後、マーケティング調査会社勤務を経てソニーへ転職。アメリカに赴任してマーケティング担当して3年半を過ごした。
現地で、日本の情報があまり入ってこない現実に、違和感があったという。せいぜい大災害のような事件性の高いものばかりだ。
「本当の日本が伝っていない」
そんな漠然とした想いを持ってアメリカで過ごしていた。 転機が訪れたのが昨年の2014年だ。
たまたまカナダの高校時代の友人と会話をしていたときに、彼は、日本で登山などアウトドアの英語ガイドとしてやりたいという。語学や現場については熟知しているが、いかにして集客するかで困っているという。
野口氏は、これまで培ってきたマーケティングのノウハウがある。それを組み合わせることができるのではないかと考えた。

始めるなら35歳の今が、チャンスだと考えて開業。

訪日観光の着地型ツアーに特化したマーケティングをする。

日本の山は、世界に勝てるコンテンツだという。
登りながら文化を知るというところがユニークだ。

山岳信仰、里山文化など、ガイドの解説があれば、より深い体験として日本での登山が記憶に残る。

とかく、ゴールデンルートが象徴されるように、日本文化の良さ、深さを知らないまま帰ってしまう現状がある。
地方の良さを伝えたいと野口氏は考えている。

登山以外にも、大手が扱わないユニークな着地型ツアーを扱っている。

東京郊外の三鷹市にある農家と組んだ収穫体験を始めた。何度か試したが、収穫自体よりも、その収穫物で地元の方々と一緒にバーベキューをやるほうが、ウケが良い。外国人にとって、お酒を飲みながらの、日本人との語らいが楽しいのだ。収穫はその導入という位置づけ。
試行錯誤で受け入れをしながら、わかってくることもある。


各地の着地型ツアーを造成されているところと、企画を進めている。ユニークと思えるものをピックアップして、全国、まずは会いに行く。

やはり、現地ツアー会社の担当者と話をすると、インバウンドまでは考えてなく、どうやって良いかわからなかったという答えが多いと野口氏。
海外マーケティングのノウハウを提供することで、外国人向けの新しい商品開発が実現する。

最近では、「ASOBIBA」という会社と連携して、都心でのサバイバルゲーム体験を始めた。

先ほどの三鷹の農家のように、実際の参加者からの声をフィードバックさせて、改善につなげる取り組みも合わせて行う。

今後は、旅行業のライセンスを取ることを目標にしている。現在は、部分的に提携旅行会社にお世話になっているが、ワンストップで手配できるようになりたい。

田舎の情報も網羅された「メディア+旅行会社」というのが目指しているスタイルだ。

会社が立ち上がったばかりということで、キャッシュフローを良くしていくための事業として、プリペイド式SIMカード販売(prepaid-sim-japan.com)もやっている。独自戦略で売り上げにつなげていく。

coincheck forEC(https://coincheck.jp/ec)と提携し、2015年2月3日よりビットコイン決済の提供を開始した。

参加しやすい体験をいかに供給するか

ところで、プラットフォームばかりが脚光を浴びるが、かんじんな着地型ツアー自体はどうなっているのだろうか。

着実に売り上げを伸ばしている団体がある。日本文化体験交流塾だ。
http://www.ijcee.com/

昨年はトゥルージャパンという旅行会社を立ち上げた。
http://www.truejapantours.com/

ここの戦略は徹底した効率化の実現にある。それが、参加費をおさえ、定期ツアーの開催につながり、多くの参加者に支持されている。 2008年の設立以降、2011年の東日本大震災の年を除き、確実に売り上げと、ガイドの登録者数を伸ばし続けてきた。観光ガイド事業の売り上げが、2012年には1,000万円を超え、対前年325%の伸び。2013年は、同210%で、2014年は同240%の伸びとなった。3か年で16.7倍という驚異の結果だ。

そこに登録している通訳案内士は、着付けや料理、茶道の経験者が多いのが特徴だ。
通常は、専門家と通訳案内士が別々の場合が多く、そのため当然、ツアー代金が割高になってしまう。

「外国人旅行者は、体験を求めているのであり、大先生に学びたいわけではないのです」と同会理事長の米原亮三氏。

寿司づくり体験も、寿司店ではなく、小石川にある事務局内の会場で実施する。料理が得意な通訳案内士が海苔巻や寿司のつくり方の解説をする。

簡単に寿司が握れるプラスチックパックを用いる。
「こういう簡単な機材があれば、帰国後、自宅でも手軽に寿司をつくれますよ」

お客様のニーズあに合わせて柔軟に実施しているのだ。

このように外国人のための独自のプログラムを開発し、立札を取り入れた茶道、グループ生け花等がある。あくまでも「体験」にこだわる。

「体験ツアー」へのニーズが多様化しているのに大手では対応しきれていないと米原氏。

ネィティブの英語の単語力は、20~30万語というが、日本人は、マルチに対応するのにはとても無理である。日本人は、得意な分野を定めて、語学力を高める必要がある。通訳案内士それぞれの個性を生かし、多品種少量の気持ちでの対応が必要だ。同会ではそれを目指している。

効率的なオペレーションにより、ツーリスト一人で参加してもコストが見合い、レギュラー商品の開発につながった。その継続が訪日数の伸びと同時にブレイクしたのだろう。

ここではガイドの専門性を大事にされている。
そのためガイド資格を取得してからの独自の教育プログラムを実践している。4つのステップを経て、正式なガイドとして登録されるのだ。

第1ステップは、新人研修。
第2ステップは、様々な専門研修。
百人百様のニーズに対応できる人材の育成だ。
第3ステップは、先輩ガイドに同行して、実務経験を積むこと。
例えば、1時間半の忍者体験、2時間の築地ガイド、3時間の相撲ガイドなど。
第4ステップは、評価、登録となる。 同会には日本文化の担い手が167名(華道、茶道、書道、料理、日本語、琴・三味線・尺八、日本舞踊、紙漉き、IT、研究員等)が所属して、通訳案内士であるものも少なくない。

東京だけではなく、他のエリアにも広げ、関西支部は既に現地スタッフに任せている。今年は中部支部の立ち上げに力を入れる予定だ。
全国を網羅できるようにしたいと米原氏。
今年は900人の会員数を目指して日本最大にしたいと意気込む。

着地型観光の伸びしろはどこまであるのか?

訪日外客数の伸びによって、新しいビジネスや資金の流れが変わってきた。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックまで、この流れがどこまで広がるか楽しみだ。つい先月も、SNS支援の大手ガイヤックスが着地型ツアーのプラットフォームを立ち上げ、株価を大きく伸ばしたという報道があった。
今回は、まだ取り上げていない体験ツアーのプラットフォームが、実はまだまだ存在していた。この群雄割拠から次に抜け出すのはどこだろう。

当分、着地型ツアーの発展に目が離せない。

 

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