インバウンドビジネス入門! 業界の現状や歴史を解説

2021.04.01

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インバウンドとは?

いまやビジネスを語る上で欠かせないキーワードとなったインバウンド。本来的には、「入ってくる、内向きの」を意味しますが、ここでは「訪日外国人観光」を指しています。この言葉が使われるようになったのはここ10年ほど、政府が2003年に観光立国を目指すと宣言してからはしばらくたっていましたが、2015年の流行語大賞のノミネートに入るほど市民権を得る言葉になりました(ちなみにその年の大賞はインバウンドに関連深い「爆買い」でした)。

 

インバウンドの現状

2020年初頭から春にかけて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が全世界に拡大し、海外旅行は事実上不可能になりました。日本への観光客誘致の目玉であった2020年の東京オリンピック・パラリンピックは延期され、政府が掲げていた2020年に4000万人の訪日客を迎えるという目標は、なんとその10分の1まで激減してしまいました。国連世界観光機関(UNWTO)は世界観光が2019年のレベルにまで戻るのは2024年末という可能性を示しています。

2021年になってようやくワクチン接種が始まり、旅行再開の希望を感じられるようになりました。様々なアンケート調査でも、ワクチン接種ができれば海外旅行に出かけたいと回答する人の数が大勢を占めるようになっています。ただ、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が、「ワクチンのみに頼るのは間違いだ。引き続き基本的な公衆衛生措置が新型コロナウイルス感染症対応の基盤になる」と語っているように、先行きはまだ容易には見通せません。マスク着用、手洗い、ソーシャルディスタンスを保った、3密を回避する日常は続きます。

インバウンド事業者の方は、回復期が来たら、すぐさま対応できるようにこの期間も準備を続けている方も多いでしょう。インバウンドビジネスを始めた矢先にコロナ禍に見舞われた方もいらっしゃるでしょう。この時期、改めて日本のインバウンドを振り返ってみるのはよい機会かもしれません。

インバウンドの歴史

明治時代に、民間のインバウンド専門機関が誕生

遡ること120年以上前の1893年(明治26年)、日本で初めて外客誘致専門の民間機関「喜賓会」が誕生しました。当時の日本を代表する実業家、渋沢栄一が国際観光事業の必要性と有益性を唱え、訪日外国人をもてなす目的で設立したもので、海外の要人を多数迎え入れ、各種旅行案内書の発行などを行いました。

1912年(明治45年)には後に日本交通公社、JTBとなるジャパン・ツーリスト・ビューローが創設され、鉄道省の主導のもと、外国人への鉄道院の委託乗車券の販売、海外での嘱託案内所の設置など、訪日外国人観光客の誘致を行いました。こうした明治中期以降の日本におけるインバウンド施策は、世界の名だたる観光立国と比べて遜色のないものでした。

戦後も外貨獲得のために外国人旅行者の誘致に重きを置き、1964年(昭和39年)の東京オリンピック開催に向け、外国人旅行客を受け入れるインフラが整備されました。

高度経済成長期の海外渡航自由化で盛り上がったアウトバウンド市場

ところが、先進的だった日本のインバウンドビジネスは、1970年(昭和45年)を境に成長が鈍化しました。その要因は大きく二つ。一つは、日本の観光業界が国内市場に重点を置いたこと。もう一つは、1964年に観光目的の海外渡航が自由化されたこと。高度成長期には海外へ出かける日本人(アウトバウンド)が増加。1964年に22万人だったアウトバウンドは1971年(昭和46年)には96万人に達しました。

インバウンドについては、大阪万博開催の1970年にピークの85万人となりましたが、翌年の1971年にはアウトバウンドが逆転しました。以降は円高の影響もあって、インバウンドよりもアウトバウンドの市場が大きくなり、1995年(平成7年)にはアウトバウンドが1530万人、インバウンドは335万人とアウトバウンドが5倍近くに増えました。

その翌年、1996年(平成8年)に、訪日外国人旅行者数を2005年(平成17年)時点で700万人に倍増させることを目指した「ウェルカムプラン21」を運輸省が策定しました。また、2002年(平成14年)の日韓ワールドカップサッカー大会開催はインバウンドに追い風になりました。それでもアジアへのアウトバウンドが増加するなど、両者の開きは拡大する一方でした。

訪日外国人数と出国日本人数の推移

2015年、45年ぶりにインバウンドがアウトバウンドを上回る

そこで、2003年(平成15年)、政府はビジット・ジャパン・キャンペーンを立ち上げ、国を挙げて観光の振興に取り組み、観光立国を目指す方針を示しました。それから10年たった2013年(平成25年)、訪日外国人客数が目標であった年間1000万人を突破すると、新たに2020年までに2000万人、2030年までに3000万人にするという目標が掲げられました。

同年に2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決定し、円安も追い風となり、2015年(平成27年)には訪日外国人客数1973万7000人を記録。2000万人まであと一歩に迫ると同時に、大阪万博が開催された1970年以来45年ぶりに、入国者数が出国者数を上回りました。

2018年、3000万人突破

訪日外国人客数が予想を上回るペースで増加していることから、政府は2016年(平成28年)春に、「2020年に4000万人、2030年に6000万人」と目標を上方修正。2016年に初めて2000万人を突破、2018年には3000万人を突破しました。

このように順調な伸びを示しながら迎えた2019年はラグビー・ワールドカップの開催で欧米豪の訪日客は増えましたが、日韓関係の悪化の影響で韓国からの訪日客が激減したこともあり、前年からの伸びは2.2%増にとどまりました。

2020年は東京2020大会の開催もあり反発が期待されましたが、新型コロナウイルスの感染症の拡大で3月以降減少傾向は続き、最終的に年間の訪日客数は411万6000人と、1998年の水準に戻ってしまいました。

訪日外国人の推移

 

2030年、6000万人の目標は維持

なお、2020年7月に政府が策定した「観光ビジョン実現プログラム2020」では、国内外の新型コロナウイルス感染症の収束状況を見極めつつ、インバウンドの再開に備え、これまで進めてきた受入環境整備や新たなコンテンツづくりに引き続き戦略的に取り組むとして、以下の施策を提示しました。

外国人が楽しめる当たり前の受入環境整備
地域の自然、気候、文化の魅力を生かした体験型アクティビティの充実
宿泊施設等の再生・活性化
世界水準のスノーリゾート整備
日本政府観光局の発信力強化
富裕層が満足できるコンテンツづくり

誘客が可能となった市場から航空便の復活に合わせて訪日プロモーションを展開するとし、「感染症終息後の中長期的スパンにおいて、インバウンドに大きな可能性があるのは今後も同様であり、2030年の(訪日外国人旅行者数)6000万人の目標は十分達成可能」とまとめました。

世界の観光マーケットと、輸出産業としての日本の観光市場

世界の観光マーケットにおける日本

前述のように2020年の世界の観光マーケットはあらゆる面でマイナス成長だったため、ここでは、2019年時点の世界の観光マーケットにおける日本のポジションを見てみましょう。

国連世界観光機関(UNWTO)が発表した2020年の国際ツーリズムの統計では、日本は2019年の海外旅行者数(国際観光客到着数)で世界11位、アジアでは中国、タイに次ぐ3位でした。世界10位のイギリスとの差は約730万人、アジアで日本のライバルと言われるタイとの差は760万人となっています。

国際観光客到着数ランキング2019

国際観光収入ランキングでは、2017年に初のトップ10入りを果たして以来順調にランクアップしている日本が、全体の7位、アジアではタイに次ぐ2位に順位を上げました。

観光立国の御三家とも言える、フランス、スペイン、アメリカとは旅行者数でも、観光収入でもはるかに及びませんが、今後も推移には注目していきたいところです。

国際観光収入2019

観光産業は日本の輸出産業で3位

また輸出産業という側面で見ると、日本の観光産業は、自動車産業、化学産業に続く、第3位の規模を誇っています。その観光産業は今後もさらなる成長が見込めるインバウンドが牽引していると言っても過言ではありません。

訪日外国人旅行消費額の製品別輸出額との比較2019

インバウンド消費額の重要性

「インバウンド消費額」とも呼ばれる訪日外国人旅行消費額は、2015年に飛躍的な伸びを示して初めて3兆円を突破すると、2017年には4兆円を超えました。その後伸びは緩やかになりましたが、2019年は前年比6.5%増の4兆8113億円でした。

訪日外国人旅行消費額

2019年の訪日外国人旅行者の1人当たりの旅行支出は、15万8458円でした。日本人の1人当たりの宿泊旅行が5万5054円でしたから、単純に見ても1人当たり日本人の3倍を支出している形になります。外国人旅行者は日本人旅行より経済効果が高いと言われる所以です。

 

日本を訪れる外国人はどの地域からが多いのか

日本を訪れる外国人観光客トップ6

2019年の訪日外国人客を国・地域別に見ると、1位の中国が全市場で初めて900万人台を達成、韓国は激減するも558万人で2位を維持、これに台湾、香港を加えた東アジア4市場で訪日外国人客全体の70.1パーセントを占めました。また、前年に東南アジア市場で初めて100万人を突破した6位のタイは2019年も好調でした。

ちなみに訪日外国人客数が激減した2020年の国・地域別入国者数では、中国(106万9256人、前年比88.9%減)、台湾(69万4476人、前年比85.8%減)、韓国(48万7939人、前年比91.3%減)、香港(34万6020人、前年比84.9%減)、タイ( 21万9830人、前年比83.3%減)、アメリカ( 21万9307人、前年比87.3%減)がトップ6で、以下は20万人未満でした。

訪日外国人数2019

以下は2000年からの訪日外国人客数の推移を示したグラフですが、これを見ると、2013年までは韓国が訪日客トップの市場でしたが、2014年に台湾が首位に浮上し、そして2015年には中国がナンバーワン市場になると、以後首位の座を守り続けていることがわかります。

 

インバウンド客にはそれぞれ国によって特徴があります。個人旅行か団体旅行か、日本をどういうルートで旅行し、どこへ行きたいか、目的はショッピングか体験かなど。また、滞在日数や訪問先にも違いが見て取れます。インバウンドビジネスを始めるにあたっては、ターゲットにする国・地域の特徴を把握するようにしましょう。

 

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