インバウンドとは?

いまやビジネスを語る上で欠かせないキーワードとなったインバウンド。本来的には、「入ってくる、内向きの」を意味しますが、ここでは「訪日外国人観光」を指しています。この言葉が使われるようになったのはここ10年ほどですが、昔も日本に外国人観光客を誘致する動きはありました。

インバウンドの歴史

明治時代に、民間のインバウンド専門機関が誕生

遡ること120年以上前の1893年(明治26年)、日本で初めて外客誘致専門の民間機関「喜賓会」が誕生しました。当時の日本を代表する実業家、渋沢栄一が国際観光事業の必要性と有益性を唱え、訪日外国人をもてなす目的で設立したもので、海外の要人を多数迎え入れ、各種旅行案内書の発行などを行いました。

1912年(明治45年)には後に日本交通公社、JTBとなるジャパン・ツーリスト・ビューローが創設され、鉄道省の主導のもと、外国人への鉄道院の委託乗車券の販売、海外での嘱託案内所の設置など、訪日外国人観光客の誘致を行いました。このように明治中期の日本におけるインバウンド施策は、世界の名だたる観光立国と比べての遜色のないものだったのです。

戦後も外貨獲得のために外国人旅行者の誘致に重きを置き、1964年(昭和39年)の東京オリンピック開催に向け、外国人旅行客を受け入れるインフラが整備されました。

高度経済成長期の海外渡航自由化で盛り上がりを見せるアウトバウンド市場

ところが、先進的だった日本のインバウンドビジネスは、1970年(昭和45年)を境に成長が鈍化しました。その要因は大きく二つ。一つは、日本の観光業界が国内市場に重点を置いたこと。もう一つは、1964年に観光目的の海外渡航が自由化されたこと。高度成長期には海外へ出かける日本人(アウトバウンド)が増加。1964年に22万人だったアウトバウンドは1971年(昭和46年)には96万人に達しました。

インバウンドについては、大阪万博開催の1970年にピークの85万人となりましたが、翌年にはアウトバウンドが逆転しました。以降は円高の影響もあって、インバウンドよりもアウトバウンドの市場が大きくなり、1995年(平成7年)にはアウトバウンドが1530万人、インバウンドは335万人とアウトバウンドが5倍近くに増えました。

1996年(平成8年)には、訪日外国人旅行者数を2005年(平成17年)時点で700万人に倍増させることを目指した「ウェルカムプラン21」を運輸省が策定しました。また、2002年(平成14年)の日韓ワールドカップサッカー大会開催はインバウンドに追い風になりました。それでもアジアへのアウトバウンドが増加するなど、両者の開きは拡大する一方でした。

訪日外国人数と出国日本人数の推移 (1)

2015年、45年ぶりにインバウンドがアウトバウンドを上回る

そこで、2003年(平成15年)、政府はビジット・ジャパン・キャンペーンを立ち上げ、国を挙げて観光の振興に取り組み、観光立国を目指す方針を示しました。それから10年たった2013年(平成25年)、訪日外国人客数が目標であった年間1000万人を突破すると、新たに2020年までに2000万人、2030年までに3000万人にするという目標が掲げられました。

同年に2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決定し、円安も追い風となり、2015年(平成27年)には訪日外国人客数1973万7000人を記録。2000万人まであと一歩に迫ると同時に、大阪万博が開催された1970年以来45年ぶりに、入国者数が出国者数を上回りました。

2018年、3000万人突破

訪日外国人客数が予想を上回るペースで増加していることから、政府は2016年(平成28年)春に、「2020年に4000万人、2030年に6000万人」と目標を上方修正。2016年に初めて2000万人を突破、2018年には3000万人を突破しました。

2019年はラグビー・ワールドカップの開催で欧米豪の訪日客は大きく伸びましたが、日韓関係の悪化の影響で韓国からの訪日客が激減したこともあり、前年からの伸びは2.2%増にとどまりました。2020年は東京2020大会の開催もあり伸びが期待されていますが、新型コロナウイルスの感染拡大で3月までの訪日客数は減少しており、4000万人の目標達成は非常に厳しいと言わざるを得ないでしょう。

 

世界の観光マーケットと、輸出産業としての日本の観光市場

世界の観光マーケットにおける日本

それでは、現在の世界の観光マーケットにおいて日本はどのくらいの位置にいるのか見てみましょう。

国連世界観光機関(UNWTO)が発表した2018年の国際ツーリズムの統計では、日本は海外旅行者数(国際観光客到着数)で世界11位、アジアでは中国、タイに次ぐ3位でした。世界10位のイギリスとの差は約500万人で、日本のトップ10入りもそう遠くはないかもしれません。また、国際観光収入ランキングでは、前年に初のトップ10入りを果たした日本が、7年連続で二桁の伸びを示し、さらに順位を一つ上げました。

 

観光立国の御三家とも言える、フランス、スペイン、アメリカとは旅行者数でも、観光収入でもはるかに及びませんが、今後も推移には注目していきたいところです。

観光産業は日本の輸出産業で3位

日本の観光産業は、今では、自動車産業、化学産業に続く、第3位の輸出産業になりました。そしてその観光産業はインバウンドが牽引していると言っても過言ではありません。UNWTOによれば、世界の輸出区分でも、観光は化学、エネルギーに次ぐ第3位に入っており、自動車関連を上回るとのことです。

訪日外国人旅行消費額の製品別輸出額との比較2016

インバウンド消費額の重要性

「インバウンド消費額」とも呼ばれる訪日外国人旅行消費額は、2015年に飛躍的な伸びを示して初めて3兆円を突破すると、2017年には4兆円を超えました。その後伸びは緩やかになり、2019年は前年比6.5%増の4兆8113億円でした。

また、2019年の訪日外国人旅行者の1人当たりの旅行支出は、15万8458円となっています。前年と比べると3.5%増となり、これまでの3年連続減少にはストップがかかりました。前述のようにラグビー・ワールドカップ開催で欧米豪からの訪日客が増えましたが、彼らの旅行支出は通常のインバウンド客の2.4倍もあり、平均支出は38.5万との調査結果も出ています。なお、訪日外国人旅行者の1人当たりの旅行支出は日本人による国内旅行の旅行支出(3万7854円)の4.18倍に上ります。

観光庁の田端長官は2020年2月に、政府が掲げている2020年に8兆円という消費額の目標は変わらないとして、滞在期間の長期化と価値向上に向けたコンテンツ形成をしっかりとやっていくと話しています。

 

日本を訪れる外国人はどこ地域からが多いのか

日本を訪れる外国人観光客トップ6

2019年の訪日外国人客数は、前年比2.2%増の3188万2000人でした。国・地域別に見ると、1位の中国が全市場で初めて900万人台を達成、韓国は激減するも558万人で2位を維持、これに台湾、香港を加えた東アジア4市場で訪日外国人客全体の70.1パーセントを占めています。また、前年に東南アジア市場で初めて100万人を突破した6位のタイは2019年も好調でした。

インバウンド客にはそれぞれ国によって特徴があります。団体旅行か個人旅行か、日本をどういうルートで旅行し、どこへ行きたいか、目的はショッピングか体験かなど。また、滞在日数や訪問先にも違いが見て取れます。まずはトップ6に入った国・地域の特徴を把握しましょう。

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(2020年3月12日更新)