インバウンドコラム

第19回  ガイド不足の解決策になるか? 『九州アジア観光アイランド 特区ガイド』

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外国人旅行者のうち韓国、中国など東アジアからの80%強を占める九州では、クルーズ船対応の中国人ガイドの不足が叫ばれてきた。
平成25年6月に認定された「九州アジア観光アイランド」特区による規制緩和で誕生した特区ガイドは救世主になるのか? 現状を追ってみた。

目次:
1.不足する大型クルーズ船対応のガイド
2.待望の九州アジア観光アイランド特区ガイドの登場
3.特区ガイドの活用状況と今後

 

不足する大型クルーズ船対応のガイド

中国発の大型クルーズ船が寄港し、2500人定員のほとんどが中国人旅行者の団体客だとすると、40人乗りのバスが60台必要で、同様にバスに添乗するあっせん員も60人は必要となる。
2012年6月30日にロイヤル・カリビアン「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」3700人とコスタ・クルーズ「コスタ・ビクトリア」2100人の2隻同時に寄港した際は、約160台のバスと添乗するあっせん員が必要となった。

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中央ふ頭に寄港した手前左が「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」、奥の箱崎ふ頭に「コスタ・ビクトリア」が停泊

これら現地観光あっせん員は、添乗員と同様に旅程を管理し、現地ツアーの移動アシストなどを行う。特に、クルーズ船乗客の場合は限られた時間に観光やショッピングをするので、集合時間を厳守するのが大変なように見えた。

さらに問題なのは、彼らは通訳案内士の資格を持っていないため、厳密にはガイディングができないということだ。ただでさえ、乗客はいろんな港に行き、その街やエリアの特徴がわかりにくいのに、その土地の魅力を知る説明がきけないということになる。

これらの問題を解決すべく、かねてから観光特区構想を掲げていた九州での動きが昨年から始まった。

九州7県及び福岡市で共同申請した「九州アジア観光アイランド総合特区」が、平成25年6月28日に総合特別区域法における地域活性化総合特別区域計画の認定を受けた。この計画認定により、国家試験を受けることなく、九州7県、福岡市及び九州観光推進機構が実施する中国語・韓国語の通訳案内に関する独自の研修を修了し、福岡県知事の登録を受けることにより、九州域内で、有償で外国語を用いた通訳案内を行うことができるようになった。

 

待望の九州アジア観光アイランド特区ガイドの登場

特区認定後、平成25年12月16日~平成26年1月24日にかけて、まず研修受講の応募を行った。この研修の企画立案・実施を行った九州観光推進機構 企画部次長の砂本八千代氏は、「当初、どの程度の応募があるか想定が難しかった」と語る。
実際には、320名(福岡県80名、福岡県以外40名×6県)の募集定員に対し、847名の応募があった。各県がそれぞれ留学生の多い大学や広報に努めた結果だと考えられる。さらに研修実施のために受講者が2月12日に決定され、515名と当初の定員より大きく増えた形となった。

その後、各県の行政関係施設で2月17日~3月28日の10日間、語学や九州観光の概要、実務としての模擬バスツアー、旅程管理はもちろん救急救命、ホスピタリティなどの研修を実施。テキスト、内容などは、どのエリアも同一とした。すべてを履修した受講生に対して口述試験を実施。1人10分ずつ、中国語、韓国語で九州観光の知識やホスピタリティを審査された。

そして、417名の口述試験ののち特区ガイドとして合格したのはなんと83名(男性24名、女性59名)という狭き門に。30代、40代の女性が多いという。

九州観光推進機構によれば、合格者は中国語、韓国語を母語とする方が多いとのこと。また、九州全般の知識があり、ホスピタリティを持った方々が、今回の高い倍率を突破しているということである。

  中国語 韓国語
研修応募者数 545(375) 302(98) 847
受講決定者数 315(230) 200(73) 515
口述試験受験者数 259(182) 158(56) 417
特区ガイド合格者数 57(41) 26(17) 83

 

 

 

 

 

 

( )内は当該言語を母語とする人の数

 

特区ガイドの活用状況と今後

合格した特区ガイドは、福岡県知事に登録申請を行い、登録証を交付される。
合格時に配布された旅行会社や業などのリストにより、自分から活用を働きかけていく形になる。
特区ガイド研修事業の事務局や、クルーズ船のランドオペレータを請け負うJTB九州国際ツーリズムセンター、岩野泰祐所長、猪本圭輔氏に活用状況と今後についてうかがった。

「中国や台湾など中国語圏からのクルーズ船は、インセンティブ旅行などのチャーターベースで九州に戻ってきています。特区ガイドの合格者の中から、クルーズ船対応として活躍いただいています。中国からは政治情勢の影響にもよりますが、航空便での団体ツアーの増加も考えられるので、そこでの活用も見込まれます」

中国語ガイドの不足は顕在化していたが、その他はどうなのだろう。
九州観光推進機構によると、タイ市場はビザ要件の緩和もあり、今後、旅行需要の拡大が見込まれるが、九州にはタイ語の通訳案内士がひとりもいないとのこと。現在、タイ語の特区ガイド育成について、総合特区法における計画変更を含め検討中とのことである。

JTB九州コミュニケーション事業部事業部長 松田秀一氏は、着地型オプショナルツアーでの活用について期待を寄せる。
「JTB九州では、着地型のオプショナルツアーを展開しています。英語ガイド付対応コースがふたつ、そのほかは送迎プランなどガイドなしの計10コースで、年内に50コースを展開予定です。基本的には英語ベースですが、ニーズに対応するために多言語でのコースも実現したいと考えています。ホテルのコンシェルジュなどからオプショナルツアーのお問い合わせも多いので、2016年に福岡で開催されるライオンズの世界大会前には、万全な状態にしたいですね」

とにもかくにも外国語で通訳および案内ができる人材の需要は急速に増えている。

これは私の個人的な私見だが、通訳案内士および特区ガイドは旅行業に従事できるマッチングをすすめるとして、合格はできなかったもしくは相応の言語対応と観光知識を備えた資格の方が、観光案内所をはじめ観光施設や商業施設などで業務にあたりながら、観光案内もするような「まちかど観光案内所」が増えるとどうだろう。スポットの説明はもちろんだが、そのエリアや隣接する地域の魅力を伝え、「今回は行けなくても次回に」というリピートにつながる動きが取れると受入環境も充実する。

2020年、東京オリンピック開催時に日本全体で訪日外国人客数2000万人を目指すということは、福岡・九州でも今より倍の外国人旅行者対応を想定しないといけない。人材の育成には時間がかかる。今回の特区ガイドが先進的事例となるよう九州の関係者で課題を解決していきたい。

 

 

 

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