インバウンドコラム

第35回 日本のランドセルが中国製造業の「商機」に

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ある企業で働くホワイトカラーの王さん(女性)は、国慶節の連休中に日本に旅行に出かけた。長い長い買い物リストの一番初めには、中国で最近大人気の「ランドセル」があった。
<2015年12月17日>

目次:
日本のランドセルが中国で人気のわけ
中国のモノづくりを考える

日本のランドセルが中国で人気のわけ

ランドセルの値段は約3000元(約5万7300円)と、小学生のカバンにしては高額だ。王さんは「ランドセルの平均価格は3万から5万円、高いものだと10万円もする」と語る。

これほど高額な小学生のカバンを、中国人はなぜわざわざ海外まで出向いて「爆買い」するのだろう?

王さんはその理由について、「ランドセルには値段だけの価値がある。耐久性が高く、1年生から6年生までずっと使える。さらに、子供が後ろ向きに転んだ時や、自動車に後ろからぶつけられた時は、ランドセルがクッションの役割を果たすし、地震の時はランドセルで頭部を守ることができる。おぼれた時はランドセルを浮き輪代わりにできる。GPS搭載のタイプなら、迷子防止にもなる。ランドセルはまさに、安全・救命グッズと言える。中国で売られている小学生用のカバンは、見た目は派手だが、機能は単一的すぎる」と語る。

中国伝媒大学産業経済学の姚林青教授はランドセルの爆買い現象について、「消費者は、単に舶来品に飛びついているのではない。むしろ、この現象から、中国人の消費のアップグレードに伴う、中国製造業の弱点が見て取れる。
日本のランドセルが飛ぶように売れているのは、差別化された機能、人にやさしいデザインなど、ランドセルが持つ付加価値が原因だ。消費者の特徴が十分に考慮されている」と指摘する。

しかし、ランドセルは中国で使用するのには適さないと指摘する人もいる。ランドセルは形が定まっており、押しつぶすことができないため、中国の学校机に置くのが不便だ。

また、容量が小さく、入りきれない教科書を手で持って行かなければならない。搭載されているGPSは中国では使えない。さらに、ランドセルには金属部品が使われており、それ自体がかなり重く、地震や水におぼれる可能性の少ない中国の都市では、子供の負担が増すことになる。

こうした、「中国での使用に向かない部分」こそ、中国製造業のチャンスと言える。

中国のモノづくりを考える

ランドセルはただの「魚」だ。中国人消費者のニーズに合わせ、人にやさしい、機能的なデザインを行うことこそ、中国製造業が学ぶべき「漁」だ。

中国伝媒大学産業経済学の金雪濤教授は、
「製造企業は、価格競争ばかりしていてはいけない。消費のアップグレードに適応するためには、製造業は生産と消費のかい離という現状を変えなければならない。

製造企業は、消費者のニーズに関するデータを集め、消費のトレンドを発掘する必要がある。また、より多くの生産関連サービスを提供し、産業チェーンを伸ばさなければならない。

これは、我々が長期的に提唱してきた製造業の『規模の経済から質の経済』への転換でもある」と語る。

アップグレードした消費者ニーズを満たすためには、技術も大切だが、工業デザインも重要だ。姚林青教授は「中国製造業の技術レベルは、数十年間の発展を経てある程度の基盤を築いているが、製品のマーケティングはもっと差別化を強調しなければならない。差別化のためには、工業デザイン体系を強化する必要がある」と語る。

金雪濤教授は、
「デザインなくして製造業はない。両者は共に成長し、相互補完する関係にある。中国製造業は工業デザインの面で製造業強国に大きく劣る。

工業デザインは消費者の立場に立ち、製品の全ての要素を統合・融合し、向上させる。技術を革新すると同時に、製品デザイン、機能デザイン、構造デザインなどを通じて最終的に新製品を完成させる。

また、工業デザインは様々な部門に関わり、多くの技術を融合させることで革新的な新製品を生み出すことができる。

このため、製造業は生産関連サービス業と手を組み、デザイン資源を統合し、デザインの革新体系を打ちたて、工業デザインを細分化し、総合的に運用することによって、最良の効果が得られる」と語った。

日本のランドセルだけでなく、温水洗浄便座、ストッキング、セラミックナイフなど、中国人に人気の商品にはどれも「愛すべき」ポイントがある。中国の製造業はこの中から商機を掴み、品質を向上させ、消費者をもう一度取り戻さなければならない。

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