インバウンドコラム

トリップアドバイザー外国人口コミランキング4年連続トップ10入りした旅館のwithコロナ時代に向けた取り組み 支援を受けるだけでなく社会貢献も

2020.06.04

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新型コロナウイルス感染症の新規感染者が減少し、日本国内では緊急事態宣言が解除されました。休業していたお店もソーシャルディスタンスを保ちながら徐々に再開をはじめています。徐々に日常が戻りつつあるが一方で、観光業回復には時間がかかることも予想されます。
今回は、トリップアドバイザーが発表する「旅好きが選ぶ!外国人に人気の旅館ランキング」にて4年連続でトップ10入りを果たした京町家楽遊でマネージャーをつとめる山田氏に、コロナ禍における取り組み、緊急事態宣言解除後の今後の対応を伺いました。

 

—簡単な事業概要及び、通常(新型コロナウイルス前)のお客様の利用状況について教えてください。

運営会社AIS(アジア・インタラクション・サポート)は京都市内で京町家建築の旅館を2軒(京町家 楽遊 堀川五条、京町家 楽遊 仏光寺東町)運営しています。私は現場で統括マネージャーをつとめています。2019年のインバウンド比率は、2軒あわせて延べ宿泊数ベースで94.5%でした。
国籍、地域のシェアが高い順で見ると、中国、アメリカ、フランス、イギリス、イタリア、オーストラリア、日本の順番になっています。1位は中国ですが、それ以外は欧米豪圏の方が多いのが特徴です。

 

—新型コロナウイルスの拡大を受けての現在の観光客や訪日客の状況について教えてください。

1月下旬より決断力の早い中国のお客様のキャンセル連絡

キャンセルの連絡が入り始めたのは1月下旬からですが、月を重ねるごとにキャンセルが増えていきました。

1月は2020年の春節休暇とも重なり、中華圏の方を中心にたくさんの予約が入っていました。しかし、中国での感染症拡大の影響で訪日できなくなった人や、感染リスクを恐れて訪日を取りやめた人、日本に迷惑をかけることを懸念して旅行をキャンセルした人などが3割ほどいました。

中華圏からのお客様のキャンセルがひと段落した2月中旬からは、国内の感染者が徐々に増えたことで、日本を渡航先として危険と判断した国や地域からのキャンセルがではじめました。それでも2月は、欧米圏の方を中心に6割以上は予定通り宿を訪れていました。

3月以降は欧米圏の一部地域でも感染症が爆発的に拡大したことを受けて、さらにキャンセルが相次ぎました。ただ、そのころから週末を中心に日本人のお客様の予約が入ったことで助けられた部分もあります。しかしながら、その後国内でも感染者数がどんどん増加し、芸能人や有名人が感染したというニュースが大々的に報道された3月末以降、自粛ムードが一気に高まり、日本人客の利用も減りました。4~5月はほぼゼロ、実質休業状態になっています。

 

—2019年12月には、楽遊1号店の堀川五条店の別邸増築に向けた改修が始まったと聞きました。

そうです。運よく堀川五条店のすぐ隣の敷地が工面できたため、12月から別邸増築に向けた工事が始まりました。3月に建物引き渡し、1カ月の準備期間を経て5月からゲスト受入を予定していたのですが、新型コロナウイルスの影響が直撃しました。このころは「別邸増築後のリニューアルオープンに向けた準備」と「緊急事態宣言を受けた旅館の休業準備」という真逆の準備を同時並行で進めており、自分がどの方向に進んでいるのか分からないような状態でもありました。

▲別邸増築に向けた工事の様子

なお、緊急事態宣言解除を受け、6月からはまずは週末のみオープンする予定です。一時期は閑散としていた京都ですが、解除を受けて店舗の再開も少しずつ進んでいる印象です。人も徐々に戻りはじめ、観光客の姿もまばらながら見かけるようになりました。ただし、ある程度お客様が戻られるのは少し先、数カ月後になるのではないかと思っています。

 

—コロナによるお客様減少の影響を受けて、直近で始めた取り組みがあれば教えてください。

衛生環境の維持とこまめな消毒

現場での新型コロナウイルス対策は欠かせません。従業員の体調管理やマスク着用、こまめなアルコール消毒は行います。またゲストに対しては、3密を避けたチェックイン体制や、チェックイン時に手指消毒、マスクをお持ちでない方にはお渡しするなどの取り組みもします。共用スペースのドア、手すり、テーブルなどは特に重点項目として計画的に除菌・消毒を行うほか、チェックアウト後の清掃も、ドアノブやリモコン、スイッチなどきめ細やかな対応を行います。感染リスクが高いとされる朝食ブッフェやフリードリンクは従業員による個別対応に切り替えます。

 

未来の宿泊に使えるクラウドファンディングには台湾からも支援が

また、未来の宿泊に使えるクラウドファンディングを始めました。私たちがクラウドファンディングを行う理由は「資金集め」はもちろんですが、「お客様へのご案内」であるとも思っています。楽遊はコロナに負けずに元気に頑張っていることをお知らせすると同時に、現在の取り組みを知っていただく機会になればと思っています。告知はSNSやメールマガジンを通じて行いました。おかげさまで過去にお泊まりいただいたお客様、関係者の皆様から多くのご支援をいただいています。

国内向けのクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」を活用しているのですが、これを知った台湾人のリピーターのお客様も支援くださいました。Webサイトは日本語でしか書かれていないのですが、翻訳ツールなどを使って内容を把握したうえで申し込んでくれたのだと思います。

クラウドファンディングには参加いただけなくても、これまでに宿泊してくださった世界中のお客様もメールやSNSを通じて応援のメッセージを送ってくださっていて、私たちの励みになっています。

 

宿が持つ世界観が伝わるHPにリニューアル

休業期間を利用して、公式WEBサイトのリニューアルにも取り組んでいます。2016年開業前に作ったHPは、必要な情報が載っている機能優先のWebサイトです。開業から4年がたち、宿の強みや特徴も見えてきました。より楽遊の世界観が伝わるWEBサイトを目指して製作中で、7月には公開できるかと思います。

 

助けてもらうだけでなく、世の中への社会貢献も

最初にお伝えした衛生面の対策や、クラウドファンディングで支援をいただくといった取り組みは、現状に欠かせない、不可欠なことだと考えています。ですが、それだけだと少し受動的かな、という感じもありました。経営状況はもちろん苦しいのですが、私たちなりに社会のお役にも少しは立ちたい。そんな思いから、医療従事者へのキャッシュバックの取り組みも始めました。小さな宿ではありますが、コロナ禍で大変な思いをしている皆様のサポートを通じて社会貢献もできればと思っています。

 

—緊急事態宣言が解除され、徐々にではありますが観光客が戻ってきます。これから宿泊するゲストへの対応として考えていることはありますか。

コロナに関わらず、日本人が納得し、満足するサービスを提供し続ける

今年の4月にトリップアドバイザーが発表した「旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本の旅館 2020」で、京町家 楽遊 堀川五条は2位に、仏光寺東町は11位にランクインし、外国人のお客様が9割超という状況ではありますが、新型コロナウイルスが拡大する前からずっと変わらずにスタッフに言い続けていたことがあります。それは「日本人に納得していただけるサービスを心掛ける」ということです。

外国人が多いからといって、サービスを外国人向けにしない。外国人用に置いた案内ボードにも、必ず日本語を添える。そして、「京町家に泊まる」良さ、楽遊の建物の良さをしっかり伝えて、京都の滞在を楽しんでいただく。外国人ウケするように用意されたものは、外国人にも見抜かれます。日本人が納得して、満足してくださることで、外国人も「自分たちはホンモノを体験した」という納得感、満足感を得ていただけて、それが今までの高評価にもつながっていたように感じます。

3月下旬、外国人ゲストのキャンセルが相次ぎ、そのぶんを日本人のお客様が埋めてくださっていた時期がありました。そのときにスタッフに何度も伝えたのは、「この日本人ゲストの皆さんに満足いただくことが、私たちの夏のシーズンを助けるからとにかく全力で取り組んで」ということ。コロナの影響が長引くことはすでに見えていたので、いままで以上に、日本人のお客様に満足いただけるよう頑張りました。いままでも手を抜いていたわけではないのですが、外国人のゲストが多いとどうしても接客がカジュアル寄りになります。また、髪の毛1本でも落ちていたらクレームにつながる、良い意味での厳しさがある日本人のお客様にしっかり対応することは、いままでちょっと緩んでいたかもしれない部分を引き締めるのにいい機会だとも思いました。そう考えると、このコロナ禍は、私たちのオペレーションやサービスをもう一度見直すいい機会にもなっているかもしれません。

 

—最後に、観光同じような状況にある観光事業者の方たちへ一言メッセージをお願いします!

先行きが見えない状況で、心配事は尽きませんが、コロナ禍の中でおかれた状況は皆同じではないかと思います。そんな中で、地域や社会に積極的にかかわり「宿」としてできることに取り組み、みんなで乗り切っていくという姿勢が大切だと思っています。そして、お客様が戻ってきたときは笑顔で迎えられるように、精一杯前向きにがんばっていきましょう。

(取材 執筆:堀内祐香)

 

プロフィール:

山田 静(やまだ しずか)

『京町家 楽遊 堀川五条』および『京町家 楽遊 仏光寺東町』の統括マネージャー。『京都で町家旅館はじめました』(双葉社)で、町家旅館の建築から開業準備、京都の観光事情や宿の運営についてつづる。旅の編集・ライターとしても活動中。半年に1度1ヶ月の休暇をとって世界中を旅する。

 


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