インバウンドコラム

【コロナの先のインバウンド業界⑦】収束するXデー、台湾市場に「組織」で素早くアプローチする準備—WEBマガジン「初耳」小路 輔氏

2020.04.14

外島 美紀子

印刷用ページを表示する



インバウンド業界の各分野で活躍する方々より、お寄せいただいている応援メッセージ。今回は、日本と台湾、相互でのカルチャーやライフスタイルの交流をテーマに活動されている小路氏よりのメッセージです。
WEBマガジン「初耳 / hatsumimi」を運営されている小路氏は、東日本大震災から2カ月後に開催されたインバウンド復興セミナーにも登壇くださいました。

 

—コロナショックはどのようなインパクトを与えているか

日本でも大きく報道されておりますが、台湾は迅速かつ適切な新型コロナウイルスへの対応をした結果、日本や欧米諸国とはまた別フェーズに移っています。ただ、ご存知の通り、現時点(4月13日)では、台湾人の日本への渡航について厳しい制限があり、台湾からのインバウンドはしばらくは期待できない状況です。

今回のような世界規模の感染症によるインバウンドクライシスの場合、地震や洪水などの自然災害とは異なり、V字回復には発地と着地の双方での事態収束が必須条件となります。日本国内で新型コロナウイルスの問題が収束したときに、発地の国において訪日旅行ができる状態にあるかという点が今後のポイントとなってくるかと思います。

 

—過去のピンチを踏まえ、今回、どう対応しようとしてるか

私は2003年からビジットジャパンキャンペーンなどインバウンド関連の業務に携わっておりますが、SARSやリーマンショック、尖閣諸島問題、東日本大震災などインパクトのあるインバウンドクライシスは5年に一度は必ず起きています。今回は、そのことを前提にリスクマネジメントしていた日本の地方自治体や民間企業も少なくないように思えます。

台湾でも有名観光地にある飲食店では、観光客がほとんど来なくなった今、Urber EatsやFoodpandaなどでのデリバリーにシフトして売上が好調の店舗もあります。それらの飲食店は、以前からFacebookやInstagramなどのSNSでのコミュニケーションがとても上手くできており、今回はそれらを最大限に活用して難局を乗り越えています。また、短期的な回復は見込めないと判断して、長期の臨時休業をして店舗の改装などをする宿泊施設や飲食店もあります。このような対応は台湾では2010年頃から目にする機会も多いです。

以前、台湾観光局の方が「インバウンドはそのエリアの産業を活性化する為のひとつの手段。外国人が一人も来なくなっても困らない産業づくりのヒントがたくさんある」と話していました。日本の地方自治体や民間企業も、これまでのインバウンドで得たノウハウやナレッジを組み合わせて現状を乗り越えることが必要かと思います。

 

—今だからこそ、やるべきことは?

弊社では地方自治体や民間企業のインバウンドに関するコンサルティングを年間30件程度実施しているのですが、その多くはまずは日本国内で新型コロナウイルスの問題が収束するXデーを設定して、それに向けたシミュレーションを立てることからスタートしています。SARSや東日本大震災を参考にするのであれば、発生から8カ月から10カ月後がXデーとなりますが、今回のような世界規模での感染拡大や不確定な情報が多い場合は、長期的な視点で捉えておき、新しいトピックスがでてきたらその都度の細かいチューニングが必要になってくるとは思います。

次に、日本の地方自治体や民間企業は、インバウンドに対して良くも悪くも「組織」で動く傾向にあるので、Xデーに向けて「組織」がすぐに動けるよう準備をしておくことが大切です。例えば、ビフォーコロナのコミュニケーションとどう異なるのかなどの答えを「組織」として持っておくことも、その一つでしょう。

動き出しが遅れてしまうと、韓国やタイなど、変化の激しい台湾のインバウンドのトレンドを掴むために、一点突破で素早くアプローチをする国にマーケットを取られてしまうこともあるでしょう。

最後に、どこのマーケットのどの層をターゲットにして動き出していくのかを細かく明確にする必要もあります。これまでターゲットを曖昧にしてインバウンドのプロモーションをしてきた日本の地方自治体や民間企業には良い機会かもしれません。過去の事例を見ると、台湾の個人旅行マーケット(特にリピーター層)はインバウンドにおいてV字回復の早い層のひとつです。2016年の熊本地震のときには、他の国が九州地方へ行くのも敬遠していた時期に、台湾からの観光客が熊本に溢れていたのがとても印象に残っています。

これを機に、自分たちの地域や商品を伝えたいターゲットをしっかりと考えて、たとえ、そのマーケットが大きくなくても「身の丈にあったインバウンド」と捉えて、丁寧にコミュニケーションをとっていくことがV字回復への近道だと思っております。

 

小路 輔氏
WEBマガジン「初耳 / hatsumimi」 代表
1979年生まれ。2002年よりJTBグループでインバウンドやビジットジャパン関連の業務に従事する。2012年よりスタートトゥデイ(現ZOZO)にてZOZOTOWNの海外事業を手掛ける。2014年にFUJIN TREE TOKYOを設立、2019年に朝寝坊屋(創業70余年)を事業継承する。台湾最大級の台日カルチャーイベント『haveAnice Festival』、日本国内で8万人以上を集客する台湾カルチャーイベント『TAIWAN PLUS』のプロデューサーを務めるなど、日本と台湾のカルチャーやライフスタイルの交流をテーマに活動中。著書に『TAIWAN FACE Guide for 台湾文創』『+10 テンモア 台湾うまれ、小さな靴下の大きな世界』などがある

 

最新記事