インバウンドコラム

【コロナの先のインバウンド業界⑨】未来のインバウンドマーケットに求められる2つの観点・取り組み—インテージア・片岡 究氏

2020.05.01

外島 美紀子

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インバウンド業界の各分野で活躍する方々より、お寄せいただいている応援メッセージ。今回は、”食”を通したインバウンドの受入、マーケティングをされていらっしゃる株式会社インテージアの片岡 究氏です。ビジネスは100%減という厳しい状況の中においても、未来のインバウンドマーケットを育む最良の機会と捉えられる片岡氏は、新たに求められていくであろう視点を共有してくださっています。

 

—コロナショックが与えているインパクトは?

パンデミック、ロックダウン、都市封鎖…
数カ月前、このような言葉が一般的に使われる世界がやってくるとは、一体誰が予想したでしょうか。コロナは多くの産業、及び私たちが取り組んでいたインバウンド・観光・そして外食産業にも甚大な影響を与え、世界的に先行不透明な混乱状態を生み出しています。弊社も多分に漏れず、前年比ほぼ100%減となってしまっています。しかしながら現在の状況は、今までとは違う視点・考え方を育む最良の機会と捉え準備しています。

 

—過去のピンチを踏まえ、今回どう対応しようとしているか?

私たちは2011年より、インバウンドの『食』を専門とした事業を展開して参りました。具体的には宗教等禁忌や嗜好による食制限のある訪日観光客日本滞在時の食事専門調整・手配、そして受け入れを希望する飲食店へのメニュー開発・コンサルティング支援業務です。現在お客さま数は激減しておりますが問い合わせベースでの案件は続いています。

その内容はコロナ前と大きく様変わりしており、多くはコロナ後を見据えた、『健康関連視察ツアー』造成依頼です。健康関連企業や食文化視察を中心とした内容。コロナ禍収束後には、世界中がより健康で持続可能性の高い食生活を求めるようになり、日本人の持つ衛生的な習慣や、ローカロリーで季節性を表現する繊細な料理、そして発酵などを含めた独自の食文化を学ぶ学習欲求が高まるでしょう。私たちも様々な方面に働きかけ、準備をしているところです。

 

—今だからこそ、やるべきことは?

コロナ収束時期に関しては、今年中という方もいれば、数年続くという方もいらっしゃいます。いつになるのかは誰にも判りませんが、長い謹慎生活は、外に出たい、旅に行きたいという、レジャーや観光、旅行への渇望を世界中で生み出しています。いつかは必ず多くの観光客や旅人が世界から再びやってくることは間違いありません。

さらに今回のコロナは世界の人々のマインドや生活行動を大きくシフトするきっかけになっている現状もあります。食の世界から観た未来のインバウンドマーケットは、過去の延長線上ではなく、少なくとも新たな2つの観方・考え方・取り組みが求められるのではないかと考えています。既に取り組んでいる方もいらっしゃるかもしれませんが、今だからこそ、未来を見据え準備する機会です。

 

1つは【地球環境】についての取り組み

日本は『フードロス』、また低い食料自給率により、食品を輸入する際、高い運搬エネルギーをかけている『フードマイル』についての大きな課題を抱えています。当たり前のように食卓に並んでいた食べ物が変わることもあるかもしれません。特に大型ツアーを受け入れていた飲食店やビュッフェを提供していた宿泊施設などでは、ロスにならないよう細やかな対応が求められるようになり、その内容をきちんと発信することが重要になるだろうと考えられます。

 

2つ目は、【野菜・農】をメインとした食について

既に世界トレンドとして菜食は存在しており、インバウンドを受け入れているレストランではここ数年メニューを準備するのがデフォルトとなりました。しかし多くのインバウンド業界で菜食というと、通常料理から食べられない食材を省いた、『引き算の調理法』で提供しており、本来の食材の良さが伝えられず、高い満足度を提供することができていない現状がありました。今後は料理人の技術やテクノロジーにより菜食のクオリティとバリエーションの豊富さを飛躍的に高め、お客様に魅力的な料理を提供することが必要になるでしょう。

また、このコロナをきっかけに、世界中で更に健康な食への関心は高まり、今まで菜食でなかった人も徐々に食べるものをシフトしてゆきます。年々農業人口は減少しているとはいえ、日本には豊かな自然環境や伝統的な食文化が存在します。古来より、虫の音で季節の機微を感じとり、小さく儚げでも小さな生命やものをかわいいと愛でる『日本の精神性』が、日本観光の『真の魅力』を生み出し育ててきました。自然と共に生きてきた、日本の文化や歴史、生活そのものを、料理の提供場所に於いて伝え発信するプレゼンテーションこそが求められる、そんな時代に入っていると感じています。

かつて、諸外国から鎖国した江戸の時代、職業軍人であった武士の生き方が『武士道』という在り方、道に昇華し、同時に世界でも稀に見る、貴族や宮廷中心ではない『庶民』中心の文化が独自に育まれ、進化し、豊かに熟成されてきました。停滞しているように観える現在の状況も、視座を変えると、外国人が魅了されてきた日本の持つ独自の精神性、歴史、文化を改めて見直し、新たに育み、少しの間熟成するための最良の機会なのかもしれません。

 

今こそ、必要な考え方。

日本は、古来より多くの自然災害や逆境と共に生きてきました。しかし、どんなことがあろうともその度に、私たちひとりひとりが持つ、『逆境に打ち勝つ、底しれぬ強さ』で、艱難辛苦を乗り越え、新たな時代を切り拓いてきたのです。

 

観光の本質とは『光』を観ること、そして魅せること。と言われます。コロナ後の世界は、日本国旗にも表される『円』を囲み、周りを慮る【大和心(やまとごころ)】のある、やさしく光り輝く世界観を求め、日本のプレゼンスも必然的に高まります。ぜひ、今こそ私たちの持つ価値や強さを見直し、未来のあたたかなインバウンド創造の準備をして参りましょう!

 

株式会社インテージア 代表取締役 片岡 究氏
幼少時より海外へ強い関心を持ち、手に職をつけ世界を廻るため飲食業界へ。様々な店舗にて調理、店舗運営、マーケティング企画・開発責任者を経験しながらアジアを中心にバックパッカーとして旅をする。2007年より飲食店舗インバウンド誘致と現場改革に関わり、僅か1年で前年比売上最大400%UPを実現。2011年株式会社インテージア設立。インバウンド受入希望飲食店と、食手配業務を改善したい旅行社や企業、相互をサポートする【Oicee !! Japan~オイシィジャパン~】を通じ、独自のマーケティング・メニュープロデュースを実施。売上を急増する店舗と生産性向上する旅行社、企業が続出している。現在では、訪日観光客をあたたかく受け入れられる店舗を日本全国に増やすため、教育事業にも積極的に取り組んでいる

 

 

 

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