インバウンドコラム

【コロナ:世界の動きまとめ】EU、移動制限緩和へ。観光業、夏のバカンスシーズンに間に合うか?

2020.05.16

外島 美紀子

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夏のバカンスシーズンを前に、欧州連合(EU)が、新型コロナウイルス(COVID-19)対策でとっていた移動制限の緩和に動き出している。今回の世界の動きまとめでは、ヨーロッパを中心とした動向をお伝えする。

 

欧州委員会は、移動再開に向けガイダンスを発表

EU経済のGDPの10%、雇用の12%を占める観光産業は大きく打撃を受けている。EUの欧州委員会は5月13日、『旅行を安全に再開し、2020年以降にヨーロッパの観光を復興するためのガイダンス』を発表し感染拡大防止策の例を示した。なるべく接触を減らすためにチケットの事前オンライン購入、旅行中のマスク着用を強く推奨。旅行者に症状が出た場合の対策や、予約制にすることで入場制限、可能であれば旅客輸送の乗客数を減らすといった対策をとるよう推奨している。また、乗客が降車ボタンに触れなくていいよう全てのバス停に停車することなども提案している。

欧州委員会は、移動制限を緩める基準として、①その国の感染状況②旅行先で取られている感染防止策の実施状況③経済とのバランスの3つを提示し、加盟27カ国に対して、国境を開放していくことを促した。また、ヨーロッパ以外の国との国境は、6月中旬まで閉ざすよう推奨している。
しかし、この提案には拘束力はなく、制限緩和の判断は各国に委ねられる。

 

EU内で観光解禁にもっとも積極的なギリシャ

観光復活へ前向きな国と、慎重な国にその対応は分かれている。 EU加盟国の中でも、観光再開にもっとも積極的なのがギリシャで、CNNの報道によると、6月15日からの観光客受け入れ再開を目指しているという。

2019年ギリシャを訪れた観光客は3400万人。GDP(国内総生産)の30%を観光業や関連するサービス業が占めており、新型コロナウイルスの感染拡大で深刻な打撃を受けている。

徹底したコロナ対策を行い、早期に都市封鎖に踏み切ったことで、これまでの死者数が160人ほどにとどまっているギリシャは、新型コロナウイルスの早期封じ込めに成功したと主張。キリアコス・ミツォタキス首相は慎重な姿勢を保ちながらも今夏の観光客受け入れに意欲を示した。さらに、ドイツ、オーストリア、イスラエル、キプロスや、ブルガリアなどの北部バルカン諸国と、感染拡大が収束し安全であると認めあった国同士が往来を再開させる「トラベルバブル」の構築に向け協議を始めている。

ギリシャでは、ウイルス感染者の流入を防ぐために検査態勢を強化しており、現時点で外国からギリシャに入国する旅行者は全員が新型コロナウイルスの検査を受けている。財政破綻に陥ってから10年間、経済的混乱を繰り返した同国にとって、観光業を救うことは喫緊の課題となっているようだ。

 

ドイツは6月15日までに国境を開放予定

ドイツは、国境封鎖を段階的に緩和させ、コロナウイルス危機の影響を最も受けたイタリアとスペイン以外のシェンゲン圏でのすべての国との国境を6月15日までに開放することを目指していると発表した。ツアーオペレーターはすでに、フランス、オーストリア、ギリシャ、スイスなどへのホリデーパッケージの販売を開始している。一方、メリケル首相は早急な正常化によって感染の再拡大を引き起こさないよう警告している。

チェコもオーストリアとスロバキアの国境を6月上旬に開放する予定。バルト三国では既に5月15日から互いの国境を開放し、「トラベルバブル」を構築している。スイスはパンデミックの状況を見ながら、6月15日にイタリア以外の近隣諸国との国境を開く計画を立てている。

ポルトガルでも6月中旬に規制が緩和される可能性を見越して、国内の観光当局や海外のツアーオペレーターは動き出している。

 

イタリアは6月3日から、EU諸国よりの入国再開へ

イタリアのコンテ首相は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための制限を大幅に緩和し、6月3日 から欧州連合(EU)諸国からの入国制限を解除することを発表した。イタリアでは、3月10日より続いている外出禁止措置を段階的緩和を進めており、6月3日を予定していたレストランやバールの再スタートも5月18日よりスタートとする。

 

観光客受け入れ再開に、慎重派のスペイン

一方で、新型コロナウイルスの爆発的拡大を経験した国は、まだ急いで多くの観光客を受け入れる段階ではないと考えているようだ。スペインの外務省関係者はロイター通信に対し、7月まで海外からの旅行者を受け入れないという計画を明かしている。

 

英政府、フランスとの自主隔離相互免除を撤回

2020年1月末にEUを離脱したイギリスは、欧州委員会で開かれた国境再開のための協議に呼ばれることはなく、蚊帳の外に置かれた。イギリスでは3月から続いていた全土ロックダウン(都市封鎖)が今週から一部緩和され、在宅勤務できない労働者の出勤の奨励や、屋外での運動制限も撤廃された。

現在、海外からの入国者には14日間の自主隔離を求めているが、フランスからの入国者は相互免除するという方針を一旦、発表した。しかし、EUからの「一国だけを特別扱いしないように」との警告を受け、15日にこれを撤回した。

イギリスは今やアメリカ、ロシアに次ぐ感染者数、死者数もアメリカの8万7530人に次ぐ3万3998人となっている(5月16日現在)。

 

トルコは今夏よりヘルシー・ツーリズム認証をスタート

トルコ共和国大使館は、2020年夏季より「ヘルシー・ツーリズム認証」プログラムを開始することを発表した。この認証プログラムは①旅行者の健康と安全、②従業員の健康と安全、③各施設における予防措置、④輸送機関の予防措置の4項目で構成されており、国際機関が、交通機関、宿泊施設、飲食施設での健康と衛生の要件を満たしていることを証明する。

トルコ厚生労働省は、海外からの入国規制を緩和する一環として、5月20日よりイラク、ギリシャ、イギリス、ドイツなど31カ国からのPCR検査で新型コロナの陰性が確認された外国人患者の受け入れを再開させることを発表した。トルコでは、近年ヘルス・ツーリズムに力を入れており、2018年には100万人が治療目的でトルコを訪れている。

(やまとごころ編集部・外島美紀子、深谷昌代)

 

やまとごころでは、重点20市場における入国規制の状況を一覧にまとめています。
詳細はダウンロードしてご覧ください。

各国・地域の入国規制まとめ

※最新版も更新されました
7/7 更新【新型コロナ:各国入国規制まとめ 】

 

 

 

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