インバウンドコラム
感染予防の先進国の台湾では、アフターコロナの観光を見据え、旅行業界関係者向けのツアーを実施するという。国内観光が回復している中国では、ビフォーコロナと、アフターコロナでは旅に求めるものが変わったという。韓国はアメリカとの航空路線が再開したが、日本との相互入国開始はいつになるのか。今回は台湾、中国、韓国の動きをお伝えする。
台湾。5万人が参加予定、感染対策のポイントを学ぶためのツアー
新型コロナウイルスの徹底的な水際対策を行ってきた台湾では5月20日、13日間連続で新たな感染者が出なかったことを発表した。しかし世界の感染状況は未だ厳しい状況にあり、台湾観光局は中央感染症式センターの防疫措置に従い、台湾の旅行会社による国内外ツアーの催行および海外からの観光客の受け入れ禁止を6月30日まで継続することとなった。
一方で明るい兆しもある。台湾本島と離島を結ぶ航空旅客便の搭乗率は過去2カ月間で5割を下回っていたが、現在は7割超えにまで回復しているという。
台湾政府が観光回復に向けて3つのステップを設けていることは当コラムでも紹介したが、第1段階となる「防疫旅行」では、旅行業界関係者5万人に下見としてツアーに参加してもらい、グループツアーでの感染対策のポイントを学んでもらうとともに、そのノウハウを市民にフィードバックしていく考えだ。台湾政府は3ステップで観光振興を進める上で、40億台湾元(約140億円)の予算を投じる方針を示している。
将来的には、感染状況を見ながら入境者の出身国を「低リスク国」「高リスク国」に分け、その指標を基準に隔離期間を入境後5〜10日間に短縮する計画を検討している。
中国人旅行者のニーズも、安全・安心な旅行が提供されているか
武漢と成田空港を結ぶ貨物臨時便が19日、運航を開始した。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻だった武漢では4月8日にロックダウンが解除されており、現地の工場も操業を再開している。そのため、全日空グループの「ANA Cargo」は成田空港と武漢を結ぶ貨物臨時便の運航再開を決めたという。
中国全土でも、国内の観光市場の回復が加速している。5月19日は中国の「観光の日」で、この日の前後1週間の間に全国100カ所以上もの観光名所のチケットが半額、もしくは無料となった。中国ではこうした旅行消費者の需要を刺激する動きが急速に起こっているという。
中国人観光客の意識にも変化が訪れている。以前はどこへ行ったのかを重視していたのに対し、現在は環境への影響を考慮しながら何を体験したのかに関心が寄せられているという。また、観光地側はこれまでのように良い商品やサービスを提供するだけではなく、美しい景色を見ながらいかに安全・安心な旅行を提供できるのかが、中国人観光客を誘引する大きなカギを握っているようだ。
中国と日本の間でまだ国境が開かれていないが、上海に住む日本人駐在員によると、中国と日本を結ぶ航空会社の「上海浦東-成田」間の7月1日以降の予約はすでに満席状態だという。入国規制の緩和に備え、両国間で前もってフライトを予約する動きが出ているようだ。
日韓両国間でのビジネス目的の入国制限緩和は?
韓国では、第1四半期の業績が大幅に悪化した航空各社が立て直しに向けて動いている。韓国の大手航空各社は来月から国際旅客便の運航を一部再開するという。大韓航空はアメリカのワシントンとシアトル、カナダのバンクーバーとトロントの各路線の運航を50日ぶりに再開し、全110路線のうち32路線の国際線を再開。アシアナ航空も来月から追加で13路線の運航を再開し、全73路線のうち27路線の国際線を再開することが明らかになった。
大韓航空の第1四半期の営業損失は2000億ウォン(約174億円)台に達すると予測されており、旅客需要の回復は急速には見込まれないものの、まずは貨物需要とビジネス需要で挽回を目指す考えだ。
一方で韓国のLCCは、各国の入国制限措置の緩和を期待し、一部路線ですでに予約の受け付けを始めている。
日韓両国間でのビジネス目的の入国については、まだ議論が行われていないという。5月15日には日本、中国、韓国の3カ国の保険担当相がオンラインで会合を開き、科学者、医師、ビジネスマンなどの移動を広げていくことが提案されたが、日本は自国内の感染状況が改善するまで入国制限の緩和は難しいとの反応を示したことを、ソウル聯合ニュースが伝えている。
(やまとごころ編集部・外島美紀子、深谷昌代)
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7/7 更新【新型コロナ:各国入国規制まとめ 】
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