インバウンドコラム

【コロナ:世界の動きまとめ】旅行再開に向けた『世界の旅のガイドライン』。アメリカ、EU、タイ、それぞれの観光への姿勢如実に。キーワードは「デジタルの活用」「衛生」など

2020.07.07

外島 美紀子

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新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きを見せ始めた欧州ではEU域内の往来が6月15日に再開され、域外からの入国受け入れに関しても、欧州委員会が規制緩和第1弾として、日本を含む15カ国の国のリストを提示。それを参考に、フランスやスペイン、イタリアなどでも日本からの入国受け入れを再開させるなど、いったん閉ざされた国境が開き始めている。

とはいえ、世界中の観光業に大きな打撃を与えた新型コロナウイルス、旅行再開の手始めは国内旅行となるが、受け入れ側には何らかの指標が必要だ。ウィズコロナ、アフターコロナの時代に旅行者の健康と安全を促進するガイドラインを持ち、全員がそれまでとは異なる意識を持つことが求められる。それを踏まえ、今回はUNWTO、アメリカ、EU、タイが発表している旅行再開のガイドラインを見ていく。

 

国の観光への取り組み姿勢が表れる「世界のガイドライン」

全体を通して特徴的なのが、序文や小見出しで「自信」という言葉が使われていることだ。ガイドラインが「自信を持って旅行をする/させる」ための拠り所となるべく出されているのがわかる。また、キーワードは「デジタルの活用」「従業員の保護(顧客だけではない)」「衛生」「非接触の運営」といえるだろう。

一方、ガイドラインには、それぞれの国の観光への取り組み姿勢や特徴が表れる。
アメリカのガイドラインはシンプルでわかりやすく、旅行をしても大丈夫だというメッセージを発信することの重要性が見てとれる。また、州ごとに独自のルールを決められる余地を残しているのも特徴だ。

EUでは、観光が非常に重要な産業として重視されていることが、その緻密なガイドラインから伝わってくる。EUでは域内で休暇を過ごし合っていて、お互いがお互いの大切なお客さんであるため、どうしたら感染を広げずに、再び観光が復興するかを本気で徹底的に考えている。また、それを実現できないと死活問題という危機感もが漂ってくる。

観光大国であるタイのガイドラインは、自分たちが実際どう動くべきかの指標の側面よりも、欧米など外側からの観光客にまた来てもらうために、安全に取り組んでいることを大々的にアピールすることも主な目的だという印象を受ける。そのため、EUのような緻密さはなく「タイでは安全基準を徹底してやっている」ことを大声で叫ぶことが、ガイドラインの役割としても重要だと考えた上で策定している印象を受けた。ガイドラインは決して一律ではないのだ。

 

UNWTO

まずは、国連世界観光機関(UNWTO)の「観光の再開に向けたグローバル・ガイドライン」のなかで参考になるのが以下だ。

1 世界規模で調和のとれた保健・安全・衛生に関する規範を実行に移す

2 安全なサービスの提供とともに、安全・安心規範に関する人材を育成する

3 顧客にそれぞれの規範・責任を発信するとともに、デジタルメディアやソーシャルメディアを通じて常に現地の情報を伝える

4 接触度が高い面に特別な注意を払いながら、条件に合った製品や消毒剤を使用して、すべての表面部分をより頻繁に洗浄する

5 ゲストや従業員がその場で病気になった場合の計画を立てる

6 規範やそれに基づいたサービス提供の導入・実践に関するフォローアップを目的とした、組織内に新型コロナウイルス感染症に関する調整委員会を設置する

7 接触が想定されるすべての場所で、より多くのデジタル機器を活用した非接触での運営ができるようにプロセスを再設計する

8 地方・国の観光関係者及び統計関係者との十分な連携の下、観光の計画・管理のための統計情報を記録に残しておく

9 労働者の衛生、福祉、労働環境を確保するために、社会的対話を推奨し、これに取組む(従業員が自らの衛生状態をモニタリングできるよう支援し、人事方針に適応させる)

10 官民セクター間の対話を促進し、回復メカニズムに積極的に携わる

また、業種別のガイドラインとして、宿泊施設など積極業では、共用スペースや接触面の清掃頻度、接触を伴わないチェックインの実施、病気の可能性があるゲストや隔離が必要なゲストのために予備の部屋を用意する、共用スペースの使用では身体的距離を維持、衛生管理責任者、ゲストの見守り役といった新しい役職など。ツアーオペレーターや旅行代理店に対しては、自然、地方、文化に焦点を当てた持続可能な商品の開発、新たな観光体験を生み出すストーリー、レンタカーサービスとホテル・車を組み合わせたパッケージの販売促進、金融セクターと提携、新たなデスティネーションと体験のプロモーション、保険会社と連携するなどを挙げている。

 

アメリカ:米国旅行協会発表「ニューノーマルの旅行」

続いて、米国旅行協会が発表した「Travel in the New Normal(ニューノーマルの旅行)」という旅行事業者に向けたガイドラインを紹介する。これはCDCとホワイトハウスが共同で策定した「Guidelines for Opening Up America Again(米国の再開に向けたガイドライン)」に 基づいて作成されたものだ。

従業員と顧客を保護するため、任務の運用と従業員の慣習を見直し、公共スペースを再設計

2  前向きな旅行体験を可能にしながら、ウイルス感染の危険を減少させるため、可能な場合はタッチレスソリューションの導入を検討

3  COVID-19の感染を防ぐために特別に設計された、高度な衛生手順を導入

従業員のための健康スクリーニング対策を促進し、COVID-19を発症している可能性のある従業員を隔離し、医療リソースを顧客に提供

5  従業員や顧客がCOVID-19に陽性反応を示した場合、CDCガイダンスに沿った一連の手順の確立

6  従業員と顧客の健康を促進するために、飲食サービスの成功事例に従う

米国旅行協会の会長兼CEOロジャー・ダウ氏は「従業員とゲストの健康は常に旅行業の最優先事項だ。さらに、旅行需要が急速に回復し、業界が堅調な経済と雇用の回復に貢献できることを願って、旅行に対する消費者の信頼を回復すること。公衆衛生の専門家や当局が今がそうするのに適切な時期であることが明らかになるまで、我々は人々に旅行を勧めない。旅行業界は、その瞬間に備え、専門家委員会から情報を得て広範囲な準備をしていると示すことに焦点を置いている」と話した。

 

EU:「2020年以降の観光と交通」

6月15日に域内での往来を再開したEUは、「Tourism and transport in 2020 and beyond(2020年以降の観光と交通)」のなかで、まず、以下のように説明。

「これは、すべてのヨーロッパが、今年の夏から次の冬、そしてその後にかけて恩恵を受けることができるように調整された枠組みを設定したもの。そうすることで将来の世代のために私たちの貴重な観光エコシステムの持続可能性をサポートすることも目指している」
「ただし、対策を急ぎすぎると、感染症が突然再発する可能性がある。ワクチンまたは治療法が利用できるようになるまで、旅行と観光のニーズとメリットは、ウイルスの感染を拡大するリスクと比較検討する必要がある。このため、EUや国のレベルから個々の施設、運輸業者、観光に関わるあらゆるレベルで準備計画を立てて、適切な行動を迅速かつ適切に行えるようにする必要がある」

そして、旅行を再開するための能力、自信、安全を人々に与えることが大事だとして、以下のガイドラインを挙げている。

1 安全に留意して自由な行動を回復し、国境を再開する

2 安全な輸送の回復  

3 健康リスクを最小限に抑えた観光サービスの再開 

4 デジタル技術の使用

5 旅行者の権利を守る  

さらに、国をまたいだ移動が想定されているため、国境を超えても、基準を満たした安全が得られるよう、飛行機、列車、バス、車、船、様々な移動方法についての細かいガイドラインがあるのも特徴だ。

 

タイ:タイ安全衛生局による10業種の衛生安全基準

タイでは、「Amazing Tahiland Safety & Health Administration (SHA)Sanitation and Safety Standard  in 10 Types of Business(タイ安全衛生局による10業種の衛生安全基準)」というデジタルの小冊子を用意。10の業種(飲食、宿泊、アクティビティ、交通、旅行会社、美容健康、デパート、スポーツ、劇場、土産物店)における公衆衛生と安全基準についてのガイドラインを発表している。

こちらは国内だけではなく最初から外国人観光客も対象にしているのが注目すべき点だ。SHAのチェックリストに沿った対応をすることで、SHA認証を取得できる。

小冊子では、すべての職場にて、職場や施設衛生管理、除菌や空気の入れ替えなど、ウィルスやバクテリアの蔓延を防ぐためのアルコール消毒液などの設置、従業員の保護に心がけるように呼びかけるとともに、業種別の対応についても詳細に案内している。

また、”Thai Chana” projectとして、スマホのアプリを用意。SHA証明書を得ることで、安全基準に則っていることを証明できるので、業者はQRコードを取得しそれを店舗や施設に掲示。顧客は施設の利用時にQRコードをスキャンしてチェックイン・チェックアウトをし、評価を残すこともできる。

入国制限緩和には慎重な姿勢を見せ、まずは国内旅行を推奨するが、その手法をそのまま外国からの観光客にも移行できる点が世界屈指の観光立国ならでは。外国人観光客も英語でのわかりやすい認証制度の発信や、日本語でのAmazing Thailand JPによる発信からもその姿勢が伺える。

 

外国人旅行者に安心して旅行してもらうためには、訪問先が安心・安全に旅行ができること発信し続けることが大事だ。ガイドラインを作るだけでなく、それに沿ったサービスをきちんと実施していることを発信することで、安心して日本に来たいと思ってもらえるよう、しっかりと世界に向け打ち出していくことが求められる。

(やまとごころ編集部:刈部、清水、外島)

 

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各国・地域の入国規制まとめ

 

 

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