インバウンドコラム

【世界の動きまとめ】コロナによる世界の観光業の損失34兆円。日本、在留資格をもつ外国人の再入国制限緩和へ。中国も居留許可もつ日本人のビザ発給へ

2020.08.23

印刷用ページを表示する



新型コロナウイルスにより大きな打撃を受けている世界の観光業。1〜5月期の損失は、すでにリーマンショックの約3倍に以上になるという。そんな国際観光が2019年のレベルに到達するのは2024年になるだろうとの見解をイギリスの経済分析機関「オックスフォード・エコノミクス」が発表した。一方、日本政府は在留資格をもつビジネスマンと留学生の入国を認める方針としており、中国も本日より居留許可もつ日本人のビザ申請受け付けへを開始する。

 

UNWTO: 世界の観光業の損失は、すでにリーマンショックの約3倍

UNWTO(国連世界観光機関)のスラブ・ポロリカシュヴィリ事務局長は、新型コロナウイルスのパンデミックがもたらした観光業界への損害を明らかにした。同氏によると、今年1月から5月にかけて海外へ旅行した人は、1年前の同じ時期に比べ3億人減り、観光業は3200億ドル(約34兆円)の減収になったという。これはリーマンショック後の損失の約3倍以上だという。

また、先月19日の時点で、世界の217の国と地域のうち53%にあたる115の国や地域で国境を完全に閉鎖し続けているといい、現在旅行制限を緩和を始めている 87の国のうち、すべての制限を完全に解除したのはわずか4カ国のみだという。

ポロリカシュヴィリ事務局長は「UNWTOが今回の危機の初期段階から言っているように、各国政府は自国民の健康を最優先する義務がある」とした上で、「しかし同時に、各国政府には企業や生活を保障する責任もある。長期にわたって多くの地域が国民の健康に焦点を合わせたため、今その代償を払っている状態だ」と述べた。

最近行われている国境の再開は、観光業に従事している何百万人もの人々にとって歓迎されるものだと言われているが、国境の再開だけでは不十分だと強調。「特にパンデミックが発生して以来、UNWTOが求めてきた国際的な協調から遠ざかっているようにみえる」とし、「この不確実な時代に、世界中の人々は強力かつ明確で一貫性のあるメッセージを必要としている。一方で今直面している課題を克服できるという、事実を無視した政策は必要とされていない」と説明した。

各国のリーダーたちには「新しい現実」を踏まえた上で、旅行を促すためにできることは全て行うよう求めた。その一例として「港や空港での迅速かつ厳格な検査、追跡や追跡アプリは観光業の安全な再開を促進する可能性を秘めている」と語っている。

  

オックスフォード・エコノミクス:2019年の水準に戻るのは2024年と予測

イギリスの経済分析機関「オックスフォード・エコノミクス」はこのほど、国際観光が2019年のレベルに到達するのは2024年になるだろうとの見解を発表した。同報告書によると、北米の国際観光は最も落ち込みが大きく、昨年比70%減になると予想。また、南北アメリカで2024年までに2019年の水準に戻ると予想される国は84%で、世界のどの地域よりも低い。また、新型コロナウイルスのパンデミックによって打撃を受けた旅行業界では、2020年後半に国際観光の初期回復が見込まれ、2021年以降は下方修正されるなど、緩やかな回復になるとの見解を示した。

オックスフォード・エコノミクスはまた、アジア太平洋地域は北米に次いで2番目にインバウンド観光が減少し、インバウンド客数は57%減少すると分析。比較的迅速に国境を開いたヨーロッパでも国際観光客は56%減少し、2024年以前に完全に回復することはないと予想している。この他に、カリブ海と中南米へのインバウンド観光はそれぞれ、59%と51%減少すると見込んでいる。

インバウンド客の減少を都市別に分析したデータでは、インバウンド客数が最も減少すると予測されたのはニューヨークで79%減、次いでオーランド、マイアミ、サンフランシスコは78%減、ロサンゼルス、ホノルル、ボストンは77%減となっており、トップ10はすべて米国の都市となっている。米国以外の都市でインバウンド客の減少が予想される都市はカンクンで41%減だった。

 

フィンランド政府:日本からの入国を再制限

フィンランド政府は、新型コロナウイルス対策として24日より、日本からの入国を再び制限することを発表した。

フィンランドでは入国できる国を、①EU・シェンゲン域内国等欧州の国で感染拡大状況がフィンランドと同程度に良いと認められる国、②EU・シェンゲン域内国等欧州の国で感染拡大状況がフィンランドと同程度とは認められない国、③EU理事会の勧告で入国を認めてよいとされる国、の3つのカテゴリーに分けており、①と③からの入国に関しては、入国後の14日間の自主検疫は不要としている。

日本は、7月27日よりフィンランド政府が③のカテゴリーからの入国制限を解除した際に含まれていたが、日本国内の感染状況が悪化しているとの判断から、再度入国が制限されることとなった。

アイスランド、ギリシャ、マルタ、ドイツ、ノルウェー、デンマーク、アイルランド、キプロス、サンマリノとの往来においても、国境管理を復活させる。

 

日本:在留資格をもつ外国人、留学生の再入国を認める方針

日本政府は、新型コロナウイルス感染拡大防止のために行っている水際対策をめぐり、中長期の在留資格をもつ外国人が再入国する際の制限を緩和する方針で調整を始めた。現在、日本は146の国と地域からの外国人の入国を原則拒否している。拒否対象国に追加される前に日本を離れた人や母国での親族の葬儀への参列や外国での手術など「特段の事情」がある場合を除き、在留資格をもつ人でも再入国を認めていなかった。

在留資格をもつ外国人は約243万人。8月中旬時点で約20万人が日本から出国しており、このうち入国拒否の対象に指定された後に出国した人は約3万人いる。政府は9月から1日1,500人程度を新たな入国枠として設定する方針だという。

政府は、すでに入国拒否前に出国した外国人に対しては、再入国を認める緩和措置を取っているが、在留資格をもつ外国人の再入国の制限を行っているのは主要7カ国でで日本だけで、緩和を求める声が内外から出ていた。

また、政府は月内にも外国人留学生の入国制限も緩和する。日本政府が学費などを支給している「国費留学生」の受け入れから始める。

感染拡大防止のため、在留資格をもつ外国人や留学生にも、出入国時にPCR検査や14日間の自宅待機などを求める。9月中に成田空港、羽田空港、関西国際空港にPCRセンターを開設し、検査能力をいまの2.5倍の1日1万件に引き上げる。

 

中国:9月1日より居留許可もつ日本人のビザ申請受け付けへ

駐日中国大使館は、有効な居留許可をもっているものの、新型コロナウイルスの影響で中国から一時帰国したまま中国に戻れずにいる日本人駐在員らに関し、再入国に必要なビザ(査証)の申請を9月1日から受け付けることを公表した。日本にある中国大使館や領事館で申請できる。帯同家族のビザ申請手続きもできるようになる。居留許可証の期限が切れている場合は、中国の地方政府の招待状などが必要となる。

中国では、3月28日から居留許可もつ外国人に対しても新型コロナウイルスの蔓延を防ぐために中国への入国が停止されたことで、1月の旧正月の連休や感染回避のために日本に戻ってきていた駐在員などが戻れなくなっている。

 

やまとごころでは、重点20市場における入国規制の状況を一覧にまとめています。
詳細はダウンロードしてご覧ください。

各国・地域の入国規制まとめ

最新記事