インバウンドコラム

【コロナ:世界の動き】変異種拡大で再び厳戒体制の欧州 感染増加の日本からの入国も拒否へ。豪「2021年内に国境完全再開の可能性は低い」

2021.01.27

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欧州各国、ロックダウン延長や夜間外出禁止措置へ

欧州では再び外出制限の強化や国境封鎖の動きが広がっている。19日の世界保健機関(WHO)の発表によると、イギリスで見つかった変異種はすでに60の国と地域で感染者が確認されており、従来型より感染力が強いとみられていることから、周辺国では厳戒な対策を急いでいる。欧州連合(EU)の欧州委員会は25日、水際対策の強化として、域外からの渡航者に対してPCR検査での陰性証明を求めることを発表した。

ドイツのメルケル首相は19日、1月31日を期限としていたロックダウン措置を2月14日まで延長することで各州首相と合意した。同国では新規感染者数がわずかながら減少してきたが、英国で確認された変異種の拡大が懸念されている。ロックダウンの導入で学校は閉鎖されているほか、企業には3月15日まで可能な限りリモートワークをするよう要請している。また、入国制限を厳しくし、変異種の感染が広がっている国との国境を閉鎖し、航空便数をほぼゼロに減らすことも検討しているという。

現在午後6時〜午前6時までの夜間外出禁止令を全土で行っているフランスでも、1日あたり1万人以上の感染者が出る日もあることから、マクロン大統領も3回目となる都市封鎖を検討しているとの見解を、仏紙ジュルナル・デュ・ディマンシュが23日に報じている。

オランダ政府は20日、全国的な夜間外出禁止令を提案した。議会の承認を経て週末から実施される見通しとなっている。23日からは入国制限も強化し、変異種が確認されている英国や南アフリカ、南米諸国からの入国を禁止した。外出禁止令は、午後8時30分から翌朝4時30分までとし、違反者には95ユーロ(約1万2000円)の罰金が科せられる。オランダではバーやレストランが約2カ月間閉鎖され、学校や生活必需品を扱わない店舗も12月半ばから閉鎖されている。

イギリスでは1月5日から3度目のロックダウンを導入しているが、感染の勢いはとどまらない。英大学インペリアル・カレッジ・ロンドンが「3度目のロックダウンは、現時点で感染抑制にさほど効果がない」との報告書を発表。同大学が1月6日から15日に実施した調査では、新型コロナウイルス感染症の罹患率は2020年5月の調査開始以降最も高くなり、昨年12月中旬から50%上昇したという。すでに医療機関がパンクしているロンドンのカーン市長は「新型コロナウイルスは制御不能」と言及している。

 

EU、日本をホワイトリストから除外

欧州連合(EU)加盟国政府は、現在認めているEUへの入域を認める国のホワイトリストから日本を除外する予定であることを、27日Bloombergが報じた。

EUは、 新型コロナウイルスの感染防止のため2020年3月中旬より実施しているEU域外からの渡航制限の緩和策として、同7月1日より15カ国からのビジネス、観光目的での外国人の入国を認めた。日本は、当初作られた渡航を許可する15カ国のホワイトリストに入り、これまでEUへの入国が認められていたが、日本国内で新型コロナウイルスの感染件数が増加していることからリストから除外されるという。1月27日、ブリュッセルで開かれる会議で承認される見通し。

日本が除外されることでEUへの渡航が認められるのは、オーストラリア、ニュージーランド、ルワンダ、シンガポール、韓国、タイ、中国の7カ国からの入国者となる。EUのホワイトリストは、ほぼ2週間に一度、更新されている。

 

日本、2020年のインバウンド客87%減

日本政府観光局(JNTO)は20日、2020年の訪日客は前年比87.1%減の411万5900人だったと発表した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、政府が掲げた「2020年に4000万人」の目標は達成できなかった。年間客数は1998年(410万人)の水準に戻り、1964年の統計開始以来最大の減少率となった。夏以降は入国制限を緩和し、11カ国・地域でビジネス関係者などの往来を認めていたが、感染再拡大を受けて現在は外国人の新規入国を停止している。観光庁長官は20日の記者会見で「本来であれば訪日客4000万人の受け入れに取り組む年だっただけに、非常に残念に思う」と述べた。

 

ANAが「ご帰国あんしんサービス」サイトを開設

ANAグループは15日、海外から日本に帰国する利用者向けに「ご帰国あんしんサービス」サイトを新設した。新型コロナウイルス感染拡大の予防に関する取り組みの一環として、帰国後の待機場所に利用できるホテルや、ハイヤーやレンタカー、リムジンバスなどの空港からの交通手段、日本国内の自宅でPCR検査を受けられるサービスの紹介までを網羅している。ホテルは羽田空港、成田空港、品川近郊エリアで計9カ所掲載し、羽田・品川エリアのホテル6カ所では、8連泊以上の利用者を対象にANAのファーストクラスで提供されるリラックスウェアやソックスなどの機内アメニティを用意する。

 

やる?やらない? 東京オリンピック

2012年ロンドン五輪組織委員会で副会長を務めたキース・ミルズ氏が、19日放送の英BBCラジオに出演し「東京の組織委員会は中止プランを準備していると思います」と私見を述べた。同氏はさらに、「中止の計画はあると思うが、劇的な状況の改善やワクチンの供給が加速した場合を期待して決断を先送りするだろう」と指摘し、開催可否の判断は1、2カ月以内になると推測した。

一方、ロンドン五輪組織委員会で会長を務め、現在は世界陸上競技連盟会長や国際オリンピック委員会(IOC)委員を務めるセバスチャン・コー氏は英スカイニュースに対し、東京大会が中止されるとは思わないと述べている。

 

補正予算案可決、Go To トラベル延長費用盛り込む

政府は、26日の衆院本会議で今年度第3次補正予算案を可決。その中には「Go To トラベル」を6月末まで延長させる費用として、1兆311億円が盛り込まれた。

なお、オンライン旅行メディア「トラベルズー」が行った「Go To トラベル」キャンペーンに関する調査によると、旅行者の7割以上が2回以上同キャンペーンを利用し、その目的地は沖縄県、京都府、北海道、静岡県の順で人気が高かったことがわかった。詳細はこちらの記事を参照されたい。

 

国連の国際民間航空機関、2020年の国際旅客は6割減

国連の国際民間航空機関は15日、航空業界におけるパンデミックの影響についての報告書を発表した。これによると、国際旅客は2019年の45億人に対し、2020年は18億人にとどまり、60%減少したことがわかった。航空便による旅行は2003年の水準に戻ったという。航空会社は、2020年に3700億ドルの財政的損失を被った。さらに、「需要の低迷が長期化し、2021年第1四半期には世界の航空旅行の回復に対する下振れリスクが優勢となり、さらに悪化する可能性が高い」としている。一方で中国やロシアでは、国内旅行で強い回復力を見せており、乗客数がすでにパンデミック以前の水準に戻っていると指摘。2021年の第2四半期までには世界的な改善が見込まれるが、パンデミックへの対策とワクチンの接種状況によって左右すると書かれている。

 

世界各国で「ワクチンパスポート」が検討段階に

欧州連合(EU)は、ワクチン接種歴を記録した「ワクチンパスポート」の導入について議論している。旅行や移動の自由を確保するための許可証として、観光業が低迷するギリシャなどが導入を求めているが、ワクチン接種の強制や健康状態による差別につながりかねないとの反対意見もある。

新型コロナウイルス感染拡大により深刻な打撃を受けている観光・航空業界の間では、需要が高まる夏のホリデーシーズンまでに導入されるかどうかが焦点となっている。

 

アメリカ、マイクロソフトなどがデジタル・ワクチンパスポートを発表

大規模なワクチン接種が進められているアメリカでも、企業や学校は対面での運営を安全に再開するために、「ワクチンパスポート」の導入が検討されている。マイクロソフト、オラクル、セールスフォースは、新プロジェクト「Vaccination Credential Initiative」を発表。携帯電話のアプリ「Health Wallet(ヘルス・ウォレット)」に接種履歴を登録し、アクセスできるようにする技術を使い、日常生活の速やかな再開に役立てていくとしている。一部の専門家は、現在PCR検査の陰性証明書を要求している州や国が、最終的には予防接種記録も受け入れるだろうと予想している。

 

ワクチン接種への意欲が高いのは1位タイ、2位イギリス

イギリス世論調査会社YouGovが発表した、世界24カ国・地域のワクチン接種への意欲に関する調査によると、タイとイギリスの人々の接種意欲が最も高かったという。1位のタイでは83%の人がワクチン接種を受ける意思がある、または受けたことがあると回答しており、世界で最も高かった。2位のイギリスは、80%の人がワクチン接種を受ける意思がある、または受けたことがあると回答した。3位以下には、デンマーク(70%)、メキシコ(68%)、インド(67%)、スペイン(66%)、オーストラリア(64%)、イタリア(64%)、中国(61%)、マレーシア(60%)が続いている。

 

オーストラリア、陽性者判明で混乱の全豪オープンテニス

オーストラリアのブレンダン・マーフィー保健相付政務官は18日、国民の大半が予防接種を受けたとしても今年中に国境を完全に再開する可能性は低いとの見解を示した。オーストラリアではこの日、新型コロナウイルスの新規感染者がゼロを記録した。

2月に開催されるテニスの全豪オープンに先立ち現地入りした選手や関係者のなかに新型コロナウイルス陽性者が確認され、混乱が生じた。18日には新たに4人の陽性が判明し、全豪オープン関係者で9人の陽性者が確認された。陽性者が確認された3便に同乗していた72選手は陰性でも2週間のホテル隔離が義務付けられ、部屋から一切外出することができない状態となっている。陽性者のいなかった便に乗っていた選手は1日5時間までの屋外練習ができるとあり、“不公平”との声もあがっている。

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