インバウンドコラム

コロナとの共生時代へ、米英豪はワクチン接種で入国可能に。東南アジアでは受け入れ延期も

2021.09.29

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新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、多くの国が水際対策として国境を閉ざした。今年に入ってからは、先進国を中心にワクチン接種が急ピッチで進み、「ワクチン接種」が国境再開のカギを握ると言われ続けてきた。そして現在、各国・地域がワクチン接種を条件に国境再開や規制緩和をしつつある。今回は、ワクチン接種を条件とした入国規制の緩和をめぐる状況についてまとめた。

 

米国、ワクチン接種完了を条件に11月から外国人の受け入れ開始

米国政府は9月20日、外国から空路で入国する渡航者に対し、11月上旬から新型コロナウイルスワクチン接種完了を条件に隔離なしの入国を認めると発表した。

現在は、海外から米国へ空路で入国する際、搭乗3日以内に受けた検査での陰性証明書の提示が義務付けられているほか、入国後3〜5日以内に検査を受けて陰性であれば7日間、入国後に検査を受けない場合は10日間の自主隔離が義務付けられている。しかし、今回発表された新規制では、搭乗前にワクチン接種証明の提示が義務付けられるが、搭乗3日以内に受けた検査での陰性証明書と、米国内での連絡先を提示すれば入国時の隔離が不要になる。予防接種を受けられない人には例外措置も用意されている。最終的な詳細は11月前に発表される見込みとなっている。

これまで原則入国禁止となっていた、シェンゲン協定圏内の欧州26カ国、英国、アイルランド、ブラジル、南アフリカ共和国、インドについても、ワクチン接種完了証明を提示すれば入国が許可される。一方、カナダやメキシコから陸路で入国する際には引き続き制限が課される。

 

英国、ワクチン接種完了を条件に、入国時の隔離や渡航前検査が不要に 

英国政府は9月17日、新型コロナウイルス対策の入国規制を緩和し、日本を含む17カ国・地域で発行されたワクチン接種証明を認めると発表した。この措置はイングランドを対象に10月4日から実施される。

これまでは、各国・地域を高リスクから低リスクの順にレッド(赤)、アンバー(黄)、グリーン(緑)の3種類に分類していたが、今後はレッドとそれ以外の2種類に簡素化する。現行の規制では、レッドは入国不可、アンバーは陰性証明書の提示と入国後2回の検査、10日間の自己隔離が義務付けられ、グリーンは陰性証明書の提示と入国後1回の検査で隔離が不要となっている。今後はグリーンとアンバーを統一し、ワクチン接種証明書を提示すれば、陰性証明書の提示や入国後10日間の自己隔離が不要となる。引き続き、ワクチン接種完了者には入国後2日目の検査が必要となるが、PCR検査よりも安価で迅速に結果が出る抗原検査(ラテラルフローテスト)で済むようにする。

 

オーストラリア、クリスマスまでには国境再開へ

オーストラリア政府は9月22日、新型コロナウイルス感染症の水際対策として行ってきた国境閉鎖を、「遅くともクリスマス」には再開すると発表した。同政府は国境再開に向けて、ワクチン接種率を80%以上にまで引き上げることを目標にしているが、必要回数のワクチン接種を完了した人は、9月25日時点で総人口の約40%となっている。

外国からの渡航者には、入国前にワクチン接種証明の提示が義務付けられる。また、同政府は「ワクチンパスポート」を試験的に導入すると発表し、相手国の候補に、米国、日本、シンガポールなどを挙げた。この発表に伴いカンタス航空は、10月から国際便の運航を段階的に再開する方針を示した。

 

東南アジア、ワクチン接種の遅れで、外国人観光客の受け入れを延期する動きも

欧米ではワクチン接種を条件に入国規制緩和が進むが、ワクチン接種が遅れる東南アジアでは外国人観光客などの入国延期が相次ぐ。

フーコック島での外国人観光客受入11月中旬以降に延期

ベトナム政府は、屈指の観光地であるフーコック島で、10月から外国人観光客の受け入れを再開する予定だったが、国内のワクチン接種の遅れやクラスターの発生により、10月中の実現が困難になった。同国は、ワクチン接種を完了した外国人を対象に、「ワクチンパスポートプログラム」の試験運用を10月から6カ月間にわたって実施する予定だった。今後は、島民へのワクチン接種状況を踏まえ、11月中旬から観光客の受け入れを試験的に再開し、11月末から12月初旬を目処に本格化する方針を示している。受け入れ再開事業の対象国・地域には、中東、米国、韓国、中国、インド、台湾、香港、ロシア、イタリア、オーストラリアなどが挙がっている。

タイでは隔離なしの外国人観光客受入、バンコクなどで11月以降に

タイ政府は、10月1日からバンコクなどの主要5都市で、ワクチン接種済みの外国人観光客の受け入れを隔離なしで認める予定だったが、11月1日に延期すると発表した。対象となる都市のワクチン接種率が目標の70%に達していないことが理由。ただし、10月1日からはこれまで14日間だった隔離期間が7日間に短縮される。

同政府は、11月1日にはバンコクを含む10都県、12月1日からは、チェンライやスコータイを含む20県、2022年1月1日にはさらに13県で外国人の受け入れを開始すると発表している。現在、同国で外国人観光客の隔離なしでの受け入れが実施されているのは、プーケット島とサムイ島のみ。

カンボジアでは、一部の地域で入国規制緩和を検討

カンボジア政府は9月17日、ワクチン接種を完了した外国人観光客に対し、現行の14日間の隔離期間を7日間に短縮し、サンドボックス方式で隔離期間中の観光も可能にする方向で検討を進めていること明らかにした。同国で1回目のワクチン接種を完了した人は総人口の78.5%、必要回数の接種を完了した人は65.5%(成人では85%)と、東南アジアの中では高い水準にある。外国人観光客の受け入れの検討が遅れていることに対し、観光業界からは不満の声が上がっていた。入国規制緩和については、観光向けとしてアンコールワットのあるシェムリアップと、ビジネス向けのプノンペンで検討するとのこと。観光大臣は21日、外国人観光客の受け入れ再開の準備がまもなく整うことから、スカイアンコール航空に対してフライト再開に備えるよう指示したという。

 

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