インバウンドコラム

日本人気はこれからどうなる?! オーストラリア人が日本にスキーに来る理由とは

2019.05.16

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オーストラリア人の日本旅行への関心は、バブル時期にビジネストラベルとして始まった。しかし、当時は日本円が強く高かったため、ビジネス・デスティネーションとしての日本は存在したが、観光地として訪れるには為替の関係もあり、すべての物の値段が高くなりすぎて無理だった。オーストラリアドル今でもこちらのベビーブーマーと話をすると「日本には遊びに行きたいけれど高いからねえ」とため息をつく人もいる。そんな人たちに、現在の日本での物の値段を説明すると、「そうか、だったらいけるかも」という。日本はまだ高いと思っているのは、団塊の世代だけでなく、オーストラリア在住のアジア人たちも同じだ。
彼らもやはり「行きたいけれど物価が高い」というので、また日本での物の値段の説明をすると顔が輝き、「なんだ、オーストラリアの方がずっと高い」と叫ぶ。オーストラリアの物価が高すぎるというのは、日本人にはあまり知られていないが、コンビニで500mlの水1本の値段が約400円するというと、驚く人がほとんどだ。

「2011年の津波の影響は、1年しかありませんでした。その後、日本に対する関心は高くなるばかりで、この人気はこれまでのオーストラリアの観光の歴史上でも他に類をみないほどです」と、ディープ・パウダースノーホリデーズ社のデール・グールディングス氏は語る。実際、彼の競争相手でもあり、同じくオーストラリアの観光産業で実績を持つリクイッドスノーツアーズ社のオーナーであるクエンティン・ノーラン氏は、「日本はオーストラリアに最も近いスノーデスティネーションであるのに、その日本がオーストラリア人に知られるのになぜこれほど時間がかかったのだろう」と首をかしげる。彼は9年前に40人のスキー客を日本に連れていった。2018-19年のウィンターシーズンは6000人のオーストラリア人を日本へ送客、前年比30%増だという。

スキー好きのオーストラリア人に人気のある雑誌『スノーアクション』の発行人、オーエン・プライス氏は、世界中のスキーリゾートを体験し、日本へも20年も通っているスキーヤーでもあるが、彼もまた「時差もないし、近いし、雪も世界でも最高の質だ。何よりもジェットラグ(時差ぼけ)がないのがいい」と日本のスキーリゾートを絶賛する。

これまでオーストラリア人はスキーをするのにアメリカまで出掛けていく人が多かったが、オーストラリアドルは米国のドルに対して弱くなっていることもあり、日本円に替えた方が強さを発揮できる(5月10日現在約77円)。しかも、オーストラリア国内のスキー場の利用料金よりも、日本の方が断然安い。リフトも、貸スキーも、オーストラリア国内の方が高いのだ。しかも、欧米とは異なる文化圏での旅行を楽しむことができ、今や世界的に人気の高い日本食を味わうことができるのが、日本へのスキー旅行の魅力をアップさせている。

このように日本のスキーリゾート人気が高くなるにつれ、これまでオーストラリア人が訪れていたアメリカやカナダなどのスキーリゾートの人気にも陰りが出てきた。それだけでなく、アメリカやカナダからのスキー客たちまでもが日本に流れてしまう恐れも出てきている。

そのせいだろうか、実は最近、アメリカのヴァイルリゾーツとその傘下にある英国拠点の会社が、オーストラリアの2つのスノーリゾート(ビクトリア州のフォールズクリークとホッサムリゾート)を、丸ごと買収するというニュースがあった。スキービジネスを、ヴァイルズエピックパスという彼らの世界的なサービスで提供していくのだという。スキー場のユーザーとして彼らが狙うのは、地元オーストラリアをはじめ、アメリカ、カナダ。そして日本からのスキー客も彼らの視野に入っている。

これまでスキービジネスは現地ユーザーをターゲットとしたローカルビジネスであったが、LCCの発達によりグルーバルビジネスへと変貌している。そんな国際的なビジネスグループの傘下に入っていない日本企業は、果たして対抗できるのだろうか。

 

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