インバウンドコラム

伝わる英語サインのためにできること—オーストラリアから提案

2019.11.05

外島 美紀子

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「どうして日本人は英語がダメなんだろう?」という内容の記事をオーストラリアのウェブ記事でみかけた。そういえば、20年以上前に、オーストラリアで爆発的に売れた本がある。それは、『The Joys of ENGRISH』という本だ。ENGLISHは正しくは“L”で、“R”では間違ったスペリングとなるが、日本人がしばしば“L”と“R”の発音を使い分けることができず間違った英語となっていることから付けられたタイトル。つまり“変な英語を楽しむ”本ということだ。この本は日本製品や日本を旅した際に見かけた、文法が変な言葉が書かれた看板だったり、不思議な言葉が書かれたTシャツの写真だったりの、変な英語表記の写真が集められている。その人気はシリーズものとして出版される程で、今もEngrish.comというサイトで人々が投稿した写真を見ることができる。これらは決して、日本人をあざ笑っているのではなく、日本人の英語は面白いね〜という視点で投稿されている。「思わずクスッと笑っちゃう」「疲れている時にボ〜と眺めていると気分転換になる」などと、私の周りでも根強いファンがいる。

少し話がずれるが、“L”と“R”の発音の使い分けができないと問題になることがある。拍手をするはCLAPだが、これをCRAPというと、うんちになる。日本人のお母さんが子供の学校に行って、みんなで手を叩きながら「拍手拍手」と歌をうたっていたら教室がシーンとなった。なぜなら、そのお母さんは大声で「CRAP CRAP(うんち、うんち)」と言っていたからだという、本当だか作り話だかわからない伝説もある。

しかし、例え英語力がなくとも、ちょっと考え方を変えるだけで通じる英語を使うことができる。かれこれ、30年以上前のこと。我々夫婦は宇都宮のグランドホテルで、日本式結婚式をした。日本語がほとんどできない主人は、紋付に着替えるために着替え室に連れていかれた。ホテルの着替え担当の女性は英語ができなかったのだが、実は、二つの言葉を知っていたために、日本語が通じない外国人である主人がするべきことを、きちんと伝えることができのだった。着替え室で、まず着ているものを脱いでくださいというのに、彼女は、「ストリップ」と言った。そこで、主人は脱ぎ始めた。パンツは脱ぐのだろうかと迷っていたら、その女性は「ストップ」と言ったらしい。そこで、主人は、あ、パンツはそのまま穿いていていいんだと思ったのだという。すごい!このホテルの女性は、英語は話せないかもしれないが、何を伝えるべきかを明確に持っており、シンプルな単語でしっかり伝えていたのだ。

日本にある英語のサインは、間違ったものを見かける。長々と書くので小さい字になり読んでもらえないことも多い。以前、横浜のある政府関係の事務所に行った際、入口に誰もおらず机の上にノートがあった。日本語で「お手数をおかけして大変すみませんが、ここにお入りになるときには、このノートに名前と、お客様の会社名と、訪問部署を記入してください」とあり、英語のサインは間違った英文で長々と書かれていた。
Please fill following detail to access this facility.(この建物に入るときには、下記の必要事項を記入してください)でいいのではないかと思った。建物に入るための条件であれば、Pleaseも必要ないぐらいだ。

オーストラリア 2019-10-23 19.55.40

▲文字が多過ぎて読む気がしないサイン。何を伝えたいのか意味も…

英語にこんな諺がある「Don’t reinvent the wheel.(すでに車輪はできているのだから、わざわざ新しく作る必要はない)」。この諺を借りるとすると、「すでに似たようなサインは外国にもあるのだから、わざわざ自分達で苦労して英語のサインを作るのではなく海外ではどう表現しているかを調べて使うと参考になるよ」ということになるだろうか。

日本人の英語が急にできるようになるのは難しいかもしれない。しかし、大切なのは絶対伝えねばならないことを明確にすること。サインを作る際には海外でどのようにしているかを参考にしながら作る。そして、これで意味が通じるか、ネイティブチェックのひと手間も加えたなら随分と違ってくるはずだ。

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