インバウンドコラム

第7回 クルーズが大好きなオーストラリア人を日本に呼ぼう!90歳のシニアもクルージング

2014.01.02

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世界ではクルージング市場が伸びている。新しい旅のスタイルとして注目され、海外でクルージングを楽しむ日本人が増えている。一方、海外から受け入れる環境面でいうと、遅れをとっている状況は否めない。それはまだ遊覧船の域に留まっているからだ。日本国内にもクルージングというエンターテインメント性の高い文化が根付くのだろうか。

目次:
●年々伸びている世界のクルージング市場とその魅力
●多様化するクルーズの形
●まだ遊覧船の域でしかない日本のクルーズ
●オーストラリア人が喜びそうな日本のクルーズ
●地中海に匹敵するクルーズ市場の可能性
●クルーズ市場を創り出すポイント

昨年のクリスマスは、メルボルンに家族と出かけた。90歳になる主人の母から、「今年は最後のクリスマスかも知れないからぜひ来てほしい」と懇願され、片道1000kmの道のりを出かけたのだが、おかげさまで義母は元気で、今年、90歳の大台を迎えた。車も近距離なら運転しているし、ウォーカーという器具を使い、近所にも歩いて出かける。そして、その母が大好きなのは「旅行」だ。昨年も、バス旅行を何回か、また、クルーズにも出かけた。メルボルンからタスマニアまで、オーバーナイトのフェリーがあるが、この船とタスマニアバス旅行をミックスしたパックで出かけている。

クリスマスにメルボルンまで出かけたときには、義母は若い人たちに「いかに、クルーズが楽で楽しいか」ということを綿々と話していた。まるで、クルーズ会社の営業マンのようだった。さて、彼女は、新年が明けたらまたクルーズなのだという。そして、我々夫婦にこう言った。「もう、飛行機では旅ができない。といって、シドニーまで、車で行ったり汽車で行くのもしんどくてイヤ。でもメルボルンからシドニーまでフェリーがあるから、それなら、貴方達をシドニーに訪ねられるかも知れない」。

彼女は一生の間に何回クルーズをしているのだろう。義父が元気な頃は、フィジーにクルーズに出かけたし、カナダに汽車とビクトリア湖クルーズの旅に2度も出かけている。当然ながらオーストラリア国内のクルーズも多数ある。うちのハイランド一家内では、例えば主人は若いときにエーゲ海クルーズをしているし、主人の兄たち夫婦も若いときに船で働きながらヨーロッパに渡り、ヨーロッパ周遊旅行をしている。弟夫婦も、数年前に兄夫婦と一緒にベトナムまでのクルーズをした。姉たち夫婦は、数え切れないほどの旅行をしていて、当然ながらクルーズも何度か入っている。とすると、正直クルーズをしていないのは、日本人の私だけである。

年々伸びている世界のクルージング市場とその魅力

img01-1実際、我がファミリーだけでもこれだけクルーズをするのだから、オーストラリア人のクルーズ好きはお分かりいただけると思う。これは、数字にも表れている。そして、最近はその数字の伸びが大きくて、オーストラリアのクルーズ市場は「スカイロケットのようだ」と専門家は表現している。オーストラリアは、最近6年間連続で、その増大が二桁の数字を出した。このままでいくと、2020年までに、オーストラリア人の4.2%、つまり100万人がクルーズに出ると予測されている。
もちろん、クルーズ市場が伸びているのは、オーストラリアだけではない。今、世界中でクルーズ産業が大きな飛躍を見せているのだ。昨年は、全世界でおよそ2千万人がクルージングをしたという結果が出ている。そして、この大きな需要を受けて、大型のクルージングボートも、続々と建造された。ちなみに、世界最大のクルージング会社、ロイヤル・カリビアン・インターナショナル社の持つ、2隻のボート、2009年に建造されたOasis of the Seas(2009) とAllure of the Seas(2010)号だ。両方とも乗客を6千人以上乗せることができる。

では、なぜクルーズが好まれるのだろうか。気が短い筆者は、考えただけで気が狂いそうになるが、先の主人の母に聞くと、船の中にエンターテインメントがすべて存在し、飽きる暇がないと語る。

img02-1クルーズの一番のメリットは、「Destination Sampling(デスティネーションサンプリング)」だと言っている人もいる。乗っているだけで、船がさまざまなデスティネーション、つまり訪問地に運んでくれるのだ。とりあえず、その訪問地はどんなものなのかを知る大変いい機会になるという。

それから「All-Inclusive(オール・インクルーシブ)」も、その魅力のひとつ。オール・インクルーシブとは、旅行経費、宿泊費、食事代、そして船内でのエンターテインメントが全部「含まれている」ということだ。
また、デスティネーションを移動するごとに、スーツケースを開けたり閉めたりしなくていいという「簡便さ」も、クルーズの大いなる魅力のようだ。
クルーズを食わず嫌いな筆者が、旅で最も嫌いなのが、スーツケースの詰め替えだから、「なるほど、クルーズだと、それがないのか」と、クルーズのよさが、少しずつわかり始めてきた⋯⋯。

多様化するクルーズの形

 

img03-1Berlitz Guide to Crusingによれば、最近は、大きなリゾートシップの増加とともに、少し小型だけれども、ラグジェアリーなボート、さらに、エクスペディションシップといわれる探検型のクルーズボートも人気が出てきているという。船内にショッピングモールがあるボートも人気を集めているし、陸上でのアドベンチャーツアーなども出てきている。現在、クルーズボートが錨を下すデスティネーションは世界中で2000ヵ所にものぼるらしい。

クルーズには、さまざまなタイプがある。オーストラリア国内でいえば、私の住むシドニーでは、世界三大美港のひとつ、シドニーハーバー(湾)クルーズが有名であるが、そのハーバークルーズにもさまざまな工夫が凝らされている。ディナークルーズでも、ショーボート風のディナーもあるし、普通のディナーもある。ランチクルーズも人気だし、コーヒークルーズもある。湾が入り組んでいるシドニーは、クルーズ船に乗ってみるのが一番だ。

他にもシドニーでは、ホークスベリーリバークルーズがある。200年前オーストラリアに白人がやってきた頃には、この川を遡って開拓していったので、歴史的な町を訪問するという意味もある。船に乗るということは共通だが、時間も目的も異なる多彩なクルーズがオーストラリアには用意されている。

 

img04日本の人々の参考になるかも知れないので、オーストラリアのクルーズ事情をもう少し説明する。

リバークルーズといえば、オーストラリアで最も有名なのは、オーストラリアの命の河と呼ばれるマレー河のリバークルーズだ。これは120名が宿泊できる南半球で最大級の外輪船『マレープリンセス号』でのリバークルーズで、3泊、4泊、7泊のコースがある。
南オーストラリアの アデレードから約90kmほど内陸に入ったマナム港から出航しており、開拓当時の面影が残るアウトバックの街並みを堪能できる。マレー川流域に住むペリカン等の野生の動物と遭遇するのもこのクルーズが人気を集める秘密のひとつだ。

リバークルーズで知られるのは、ヨーロッパのドナウ川のクルーズ。オーストラリア人に大人気だ。リバークルーズは、川岸の国から国、あるいは、町から町を訪ねて観光をするか、各訪問地の歴史を遡るというのが一般的。単に美しい風景を見るだけではないのが、リバークルーズの楽しみのようである。

 

まだ遊覧船の域でしかない日本のクルーズ

さて、日本国内のインバウンドを考えた時に、海外から見てみると、あまりイメージが湧かない。遊覧船というくくりだけである。

img05私の実家は仙台なので、前述のように、私は子供の頃から松島の遊覧船に乗っていた。この前、久しぶりにオーストラリアの家族と乗ってみたが、松島そのものの観光地としてのインフラ整備の貧しさとともに、外国人観光客はこれでは呼べないと思った。船も昔ながらの船で、新しい工夫は何もなかった。
余談だが、松島は長い間その風光明媚に甘えていて、観光地としての努力を怠ったような気がしてならなかった。観光後、オーストラリア人である主人の「松島の風景は素晴らしかった」という言葉が救いではあったけど⋯⋯。

では、この風景を活かして、外国人観光客に楽しんでもらえるためには、何をどのようにしたらいいのか? 例えば松島では、湾の観光がその命である。したがって、その湾を回るクルーズ船の質を高めることや、船で揺られるだけでなく停泊をして楽しむ場所を作ること、つまりストーリーの作り方(当然ながら英語で)が必要だと思う。さらに、船の発着場や、その近辺のインフラなどをどのように整備していいのかも、十分に考えるべきではないだろうか。

オーストラリア人が喜びそうな日本のクルーズ

img06

オーストラリア人のビジターと一緒に乗った船が過去にもうひとつある。鵜飼の船だ。これは「鵜飼」という歴史と伝統とアクションが詰まっていて、オージーたちは、皆、最高に喜んでいた。しかし、「長良川のリバークルーズ」という視点で捉えると、まだまだ工夫がいるかも知れない。まずは、松島と同じように発着場の整備は必要であるし、なにかストーリーも加える必要がある。

先日、青森で青函連絡船の博物館を訪ねた。その話をしたら、主人が「北海道から青森まで行くクルーズ船は、観光客にきっと喜んで貰える。それがあれば俺も行きたい」と言った。

オーストラリア人を呼ぶには、目的に応じて大小さまざまな船を用意して、アクションの詰まったクルーズを準備すればいいと思う。

連絡線博物館は、日本人の私には大変興味深かった。しかし外国人を呼ぶとすれば、その説明等も必要だろう。ちょっとしたアイデアだが、青森から連絡線で北海道に行き、北海道の沿岸をクルージングしながら、おいしい魚などを食べるのはいいかも知れない。船から、陸の熊がみえたりすれば(そんなことはないと思うが)、そのクルーズはまさに世界的になるだろう。

 

地中海に匹敵するクルーズ市場の可能性

img07

この瀬戸内海を、外国人用に、クルージングの場所にすれば、地中海に匹敵するクルーズ・スポットになると考えるのは、私の妄想だろうか? 歴史、伝統、温泉。おいしい食事。そして、美しい島々。

どのような船で、どのようなルートで、どのように外国人観光客を喜ばせるかを“よく考えて”売り出せば、ここに、世界中のクルーズ好が集まることは必至だ。

クルーズ市場を作りだすポイントを考えてみた。

1.船の発着場の整備(トイレとかレストランとか)
2.船およびクルーズを点で売らずに、陸を含めて動線でのパッケージを考える
3.きれいな風景だけでは売れない。アートや歴史、伝統、野生動物、風景プラスなどを考える

近い将来、日本が世界のクルーズのデスティネーションになり、日本を海から眺める、インターナショナルなクルーズ市場ができることを期待している。

最後に川柳。

「オージーはクルーズボートにクルウズってる」

お後がよろしいようで。

 

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