インバウンドコラム

やる気あるメンバーでつながる「横連携」がカギ! —インバウンド推進協議会OITA

2018.08.29

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DMO(Destination Marketing Organization)やDMC(Destination Management Company)、広域連携協議会など、地域やエリアでまとまって施策を行う団体は、国の方針も背景にあって、急速に増えている。そんななか大分では、地元でインバウンドを推進する同志による「インバウンド推進協議会OITA」が2018年3月に立ち上がった。この協議会が取り組む具体的かつ効果的な連携についてレポートしたい。

 

大分での横のネットワーク構築と具体的な行動を目的に

初代会長である大分の「旅館 山城屋」の二宮謙児さんには、「大分でインバウンドを志す人のネットワーク」の構想について、1年以上前からお話をきいていた。その構想が今年の3月にいよいよ発会された。

インバウンド推進協議会OITAが作ったFacebookページに掲げられた目的は下記のようになっている。

「(前略)インバウンドを推進するうえでのさまざまな課題と情報を共有し、その解決の糸口を見つけるための具体的な行動および効果的なプロモーションを実施するとともに、地域で活動している人たちのネットワーク構築と、大分県 全体としての観光・地域振興に資することを目的とする」。

地域で活動し、趣旨に賛同する人は、観光関係者でなくとも誰でも会員になることができる(年会費:個人会員2千円、特別会員(法人・団体)2万円)。インバウンド受入の課題や推進に関する情報を共有し、地域間の連携を図り、効果的な解決策や推進を行うという。現在は2ヶ月に1回、有識者や実践者を呼んでの発表や意見交換を行う例会を開催しており、会員でなくても聴講料500円で参加できる。

これだけをみても、インバウンドに関心がある、大分に関係がある人であれば誰でも参加したくなる、自由な雰囲気だ。

 

本当に知りたい、推進したい人との連携

会長の二宮さんに、協議会発会の狙いをきいてみた。

「大分でも試合が開催される2019年のラグビーワールドカップや、2020年のオリンピック・パラリンピックに際し、今のままでは受入環境の整備も間に合わないのではないかという危機感があります。

また、現場で一生懸命インバウンドに取り組んでいる人や企業に必要な情報が届いていないのではという懸念も感じています。私自身もいろいろな人の話をきいて、試行錯誤しながら、インバウンドに取り組んできました。今はさまざまなインバウンドの講演や補助金もありますが、観光協会などの団体にその情報が届いても、末端の会員は知らないことも多い。

『知りたい』『他の人の知恵を借りたい』と願っている、やる気がある人が、横でつながってネットワークを構築することが必要だと感じていました。大分という地域で実現できるのがこの協議会です」。

取材当日も二宮さんが経営する宿「旅館 山城屋」に、協議会運営委員の常文静さんと会員の「山荘どんぐり」の松下さんが相談に。大分の体験プログラムや自分の施設への集客、現状の情報交換などについて活発な意見交換が行われていた。

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「旅館 山城屋」のインバウンドへの地道な取り組み

ご存知の方もいるかもしれないが、二宮さんの宿「旅館 山城屋」はトリップアドバイザーの宿泊施設満足度ランキング「日本の旅館部門2017」で全国第3位に選ばれた。そこまでの経緯や理由は、2017年7月に出版された「山奥の小さな旅館が連日外国人客で満室になる理由」で詳細に語られている。そして今年4月にはお隣・韓国で韓国語版が出版され、家族経営の小さな旅館の成功の秘訣が好評を博しているという。

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私が湯平温泉にある山城屋の二宮さんに初めてお会いしたのは2005年、今もアドバイザーをつとめる韓国向けの宿泊サイト「九州路」に参画いただき、ブロガーやメディアをお連れし、ガイドブックで紹介した時からである。

今では想像できないかもしれないが、韓国をはじめ外国人旅行者で賑わう由布院温泉でさえまったくといっていいほど知られていないころのこと。二宮さんの本にも書いてあるが、由布院から車で約20分の「湯平温泉」の石畳の坂道が韓国人の心をつかみ、旅行雑誌の特集の表紙を飾った。「日本らしい風景」と韓国人記者から評価されたことで、「湯平温泉の持つ魅力」に改めて自信を持ったという。

この本にはインバウンドのポイントが非常にわかりやすく書かれている。外国人旅行者の満足度が高いのは「海外の個人旅行者がいかに安心して過ごせるか」の工夫がたくさんなされているからだと改めて思う。

例えば、空港から旅館までのアクセスを動画にしてYou Tubeにアップ、駅への送迎、客室のテレビでの観光案内やマナーなどの動画での紹介、宿泊客の翌日のスケジュールを把握し、それを考慮した朝食時間や送迎時間の提案など。これだけで特集ができるほど枚挙にいとまがないので、改めて書きたいと思う。
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▲お土産を持ってきてくれた韓国人家族と。浴衣はチェックイン時に選んでもらう。女将さんは英語や韓国語などで明日のスケジュール確認をし、駅への送迎などのプランをたててくれるので、旅行者は安心して滞在を楽しむことができる

 

二宮さんはこれらを10数年かけて地道に行ってきた。「インバウンド推進協議会OITA」では、会員がリアルな悩みや課題をぶつけ、お互いにアドバイスしたり、知恵を出し合うことで、スピード感をもって解決の糸口を見つけだす。そして、実際にスピーディーに解決する協議会になっている。

 

今後の協議会で見えてくるもの

現在会員は102名。
2ヶ月に1回の例会は、4月25日の設立総会、6月の2回目の例会は元JNTO(日本政府観光局)香港事務上席次長の清水泰正氏の講演、3回目の8月23日は杵築市観光協会事務局長の三浦孝典氏による「多言語音声翻訳アプリ<ボイストラ>の活用」と実施されている。特に、先日開催された3回目の例会の後半では、会員に行ったアンケート「個人がかかえる課題、おこなってきた工夫、協議会に期待すること」を受けて、課題解決に向けてのディスカッションを行った。

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「言葉の問題」「意識の問題」「インフラの問題」の3つの課題ごとにグループ分けをし、今すぐ出来る解決策から、行政や関係機関(電車・バス等)へ要請することなど様々な意見が飛び交った。その結果、先ずは自分たちの意識を高めて、成功モデルなど全国レベルでの必要な情報を収集し、改善へ向けての具体的な行動を起こすことが必要と感じたという。

会員の知恵を絞った協議会の成果は、全国のインバウンドを志す人すべてに刺激と勇気を与えるものになるだろう。

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