インバウンドコラム

第29回 中国訪日レポート 2015年前半

2015.06.28

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中国からの訪日観光はビザが今年さらに緩和され、より個人旅行者が多くなりました。ニーズも多様になり、日本側もさまざまな対応が求められます。この半年のトピックスをピックアップしました。

目次:
日本企業、中国人観光客を狙う作戦
韓観光の主役は、「80後」中国人女性

 

日本企業、中国人観光客を狙う作戦

在日本中国大使館の情報によると、今年1月に日本が中国大陸の観光客に発給した訪日査証(ビザ)の件数が25万件に達した。これは、1月としての最高記録となる。今年の春節に訪日する中国人観光客は前年より大幅に上昇した。

春節期間の中国人観光客による「買い物」のピークを迎え、日本企業は早々に豊富で多彩な質の高い商品を取り寄せ、中国人観光客の財布を狙って、さまざまなプロモーション活動を行っている。

三越伊勢丹ではわざわざ専任のファッションデザイナーを雇い、中国人が好む素材を使って、中国人男性の体型的特徴に合わせた高級スーツを国内でデザイン・生産している。このウールブレンドスーツの価格は、14万4000円となっている。

西武百貨店では18Kのゴールドフレームを使用した眼鏡を販売。
大丸松坂屋ではダイヤモンドのリングやネックレスなどが入った100万円の宝飾の福袋を用意している。
高島屋百貨店では、近年10万円から20万円の鉄瓶が中国人観光客の人気を集め、売れ行きが好調となっている。このため、同百貨店では、中国人の鉄瓶ブームに対応して、春節期間に中国人観光客向けの129万6000円の高級鉄瓶を追加注文して販売している。
また、シチズンは、中国人観光客の好みを取り入れてデザインした、5万円前後の自動巻き腕時計を生産している。

日本の各百貨店は、中国人観光客を迎え入れるため、最近相次いで社員向けの中国語講座を開催し、売り場で必要な中国語会話を教えている。また、ある百貨店では、売り場のスタッフに中日電子辞書を配布し、中国人観光客が買い物をする際の言葉の障害をできるだけ取り除こうとしている。

中国経済の急激な発展にともない、中国人の収入は増加し、生活水準も高まってきた。このため、中国人の休日の過ごし方の重要な選択肢となってきているのが海外旅行だ。

国土交通省観光庁が発表した統計データによると、2014年に日本に訪れた中国大陸部の観光客数は240万9200人で、前年同期比83%の激増となり、各国の中でも最大の伸び率を記録した。

東京の大部分の免税店や大型百貨店では中国語が話せる販売員を配備している。また、通訳センターが設置されている店もある。客とコミュニケーションがうまく取れない場合、販売員が通訳センターに連絡すれば、代わりに通訳をしてもらえる。このため、中国人観光客は日本での買い物に際し、基本的に言葉の障害に悩まされることはない。

中国人観光客の大幅増加は、日本の観光業や飲食業の景気回復の後押しにもなっている。特に中日間の旅行業務を取り扱う会社は、かなりの利益をあげている。主に中日旅行業を取り扱っている日中旅行社は数年前の苦境から完全に脱却し、昨年の利益は大幅に増加。今年の営業利益は昨年の勢いをそのまま引き継ぐ形で好調を維持し、創業以来の最高益を計上した。

韓観光の主役は、「80後」中国人女性

銀行に勤める岳さんはこのところ毎日カレンダーを見ている。1日過ぎれば、カレンダーに丸をつける。岳さんが待ち望んでいるのは、20日の春節明けの2日目だ。なぜか? それは、海外旅行に出発する日だからだ。「平日の仕事は忙しく、休みも取れない。旅行へ行くには、春節を待つしかない。前回旅行に行ったのも、昨年の春節。今年の春節は特に時期が遅く、待ちくたびれてしまった」と岳さんは語る。岳さんが今回向かう目的地は日本。すでに昨年の11月には航空券やホテルを予約して、いろいろと情報を仕入れてきた。間もなく、その待ち望んだ日がついにやってくる。

実際、岳さんのように春節に海外旅行に行く人は少なくない。オンライン旅行サイトや旅行会社に問い合わせたところ、今年の春節期間に出発する日韓ツアーが大人気だという。また、欧州へのクルーズ船ツアーも、ユーロの対人民元の為替レートの変動により人気を集めている。

「今回の日本行きでは、自分に対してある任務を課した。それは、ハローキティに関わる場所や物で、行けるところはすべて行き、買えるものはすべて買うこと」と岳さんは旅行への抱負を語った。岳さんは多くの「80後」(80年代生まれ)と同様、ハローキティ―の忠実なファンだ。

一方、1月20日に日本旅行から戻ってきたばかりの安楽さんは、神奈川県鎌倉市の江ノ電電鉄「鎌倉高校前」駅のそばにある踏切の写真を撮影し、それをSNSのコミュニティにアップしたところ、200を超えるコメントが書き込まれた。これは、中国でもファンが多いアニメ「スラムダンク」の有名なオープニングシーンだからだ。

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岳さんや安楽さんのような人は決して珍しくない。旅行会社も明らかに80後の特殊な旅行へのニーズや目的を察知している。中国の大手旅行サイト・携程旅行網日本商品部マネージャーは、「伝統的な花見ツアーのほかに、我々はアニメをテーマとしたツアーも売り出している。三鷹の森ジブリ美術館やサンリオピューロランド、ハウステンボスの『ONE PIECE(ワンピース)』の主人公たちが乗る海賊船を模したクルーズ船『サウザンド・サニー号』のクルーズもその中に含まれている」と説明する。

日本政府観光局のデータによると、2014年に訪日した外国人観光客の中で、中国大陸部からの観光客は第3位の240万9200人で、前年比83%の急増となっている。

携程旅行網の最新データによると、今年の春節の日本旅行市場の人気は例年の2倍となっている。
主な要因は2つある。
(1)19日から日本は中国人向けの個人観光の3年マルチビザの発給要件を緩和するとともに、高所得者層に対するマルチビザの有効期限を5年に延長したこと
(2)2014年の免税対象品の範囲が徐々に拡大されたこと。さらにこれに円安傾向も加わり、日本は比較的便利で、買い物でもお得な海外旅行先となった。

日本の隣国・韓国も同様に春節期間の人気の海外旅行先となっている。携程旅行網が最近発表した「2015年春節海外旅行の需要・動向レポート」によると、2015年春節の最も人気の海外旅行先は韓国と日本でそれぞれ1位と2位となっている。

今年は、昨年7月に習近平国家主席が韓国を訪問した際、両国首脳が決定した「中国観光年」だ。また、韓国観光局の最新データによると、2014年の訪韓中国人観光客の数は、延べ610万人を超えている。携程旅行網のデータによると、韓国はすでに中国人最大の海外旅行先となっており、その主役は80後と女性となっている。
ビザ手続きの簡略化や交通の利便性、文化の魅力などが中国人観光客にとって韓国旅行を選択する主な要因となっている。

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