インバウンドコラム

コロナ禍で倒産をしないため、企業の経営者が「今」やるべきこととは? 〜融資や助成金、申請のポイント〜

2020.05.01

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GW直前の4月27日に宿泊施設経営者向けに緊急開催されたオンラインセミナー『コロナショックで倒産させないために、経営者が今やるべきこと』からのレポート。Part1では、宿泊業向けのコンサルを行っている株式会社プリンシプルホテルコンサルティング所長の中山晴史氏による、経営者が今大切にすべきことや経費削減のポイントなどをお届けした。Part2では、再生支援の専門家でもある株式会社やまとごころキャリア取締役の坂本利秋氏に融資や助成金について、申し込み方の工夫も含めてお話をいただいた内容を紹介する。

 

事業立て直しを成功させる

経営者が持つべき3つのポイント

村山:坂本さんは事業再生や財務の側面これまで様々な企業を見てこられたかと思いますが、業績を立て直せる経営者の共通項、あるいはそのまま倒産や失敗してしまう経営者の共通項というのはあるものでしょうか。

坂本:外的要因の件はさておき、まずは業績を立て直せる経営者は当事者意識を持っています。自分が率先垂範で行動するんだという強い意志が大事になってくると思います。加えて、優先順位を明確にすること。状況が悪くなればなるほど、すべてのものを守ることはできなくなります。そういう時に、優先順位を決めてそれを徹底的にできるか、これが2つ目です。そして3つめは外部の力をうまく使うことです。この3点がポイントかと思います。

村山:優先度を決めた上で愚直に実行する意志が大事なんですね。

坂本:意志と行動力ですね。

 

無利子・無担保の融資を受けるには

日本政策金融公庫と商工中金へ相談を

村山:次企業を存続させるために資金面で宿泊施設の経営者が取れる打ち手には何があるのでしょうか。

坂本:現在、ほぼ例外なく宿泊施設の経営者は資金繰りに苦しんでいると思います。そんな中で今現在できることは、コストの削減支払いを遅らせること、そして資金の調達しかありません。資金の調達方法は大きくわけて2つあります。金融機関からの融資と、国や自治体からいただける補助金や助成金。これらをすべて使い切ってこの危機を乗り越える必要があると思っています。

村山:どんな種類の融資があるのか、どうやったら申請できるのか。具体的に教えていただけますでしょうか?

坂本:国は中小企業を倒産させないために色々な手を打っています。掟破りとも言えるような対策も打ち出されています。支援策については経産省が毎週HPで更新していますし、67ページにも及ぶパンフレットも出ていますが読み切れないので、融資に関して経産省が一枚にまとめたのがこちらの「資金繰り支援内容一覧表(4/14時点)です。

 

坂本:左端の列は売り上げの減少の状況、左から2番目の列は利用が可能なメニューとなっており、その横がそのメニューを利用する際の融資の条件です。一番右端の列が実際に融資を行う金融機関となっています。

 

ホテル旅館の経営のプロなので、この内容すべてを覚える必要はありません。下記の図は覚える必要のない部分を青く隠したものとなります。経営者が見るべきものは右端の列です。

 

売り上げの減少に関しては、おそらくどこの宿でも前年同月比50%以上の減少をしているはずですので、この表に出ているすべての商品が対象になります。問題はこういった状況下でどこに相談に行くかだけです。

実質コロナに関連した融資を行っているのは2カ所です。右端の列をブルーの四角で囲ったのが、日本政策金融公庫といういわゆる政策系の金融機関、もう一つは黄色で囲んだのが商工組合中央金庫(商工中金)。新聞などに書かれている、無担保無利子の融資を扱っているのが、これらの金融機関となります。
今、経営者がやるべきことは、なるべく早くにこれらの金融機関から融資を得ることです。

次に、融資申請のポイントは3点あります。 「なるべく多めに借りる」、「早く実行してもらう」、「確実に借りる」です。それぞれについて説明します。

1、多めに借りる
コロナがいつ終息するか、いつどのようにお客さんが戻ってくるか、まったく分からない現状では、可能な限り多く資金を蓄えて耐えることが大切です。金融機関の対応としては、おおむね毎月の固定費(人件費+賃料)の3カ月分が融資金額の目安になっていますが、これだと足りないので、固定費を広くとらえ外注費なども含めるとよいでしょう。外注先がいなくなってしまうと、御社が立ちゆかなくなるということなら、実質的には外注費は固定費と考えていただけます。

また3カ月分ではなく12カ月分ということで申し込みをしてください。これによって多めに借りる余地が出てきます。

2、早く実行されること
政策金融公庫も商工中金も、可能な限り1社でも救いたいと考え融資をしています。そのため、申し込み順ではなく優先順位をつけます。
たとえばA社とB社が同時期に金融機関に行きました。A社は7月末の入金で間に合う、B社は5月末の入金でしか間に合わないといった場合は、審査の順序が変わってくるんです。
本当に急ぐのであれば、融資の実行を早めてもらわないと間に合わない、ということを強く主張してください。すでに申し込みをしているのであれば、電話をして急ぐことを伝えてください。それによって審査の順番が変わってきます。

3、確実に借りる
4月19日までに政策金融公庫に対して約26万件の申し込みがありました。うち実行は約半数です。審査中のものも含まれているので、融資実行件数はまだ伸びるかと思いますが、私の肌感覚からすると少ない、という印象です。

なぜ少ないのかと考えると、あくまでこれは融資なので返済する必要があるんですが、「困ったお金を貸してください、返済計画はありません」といった申し込み方をされている方がいるのではないかと考えられます。

確実に融資をしてもらうためには、返済ができるというストーリーを頭の中で整理しておいてください。一番簡単なのは、コロナ前には利益があがっていたので、新たな融資を受けても充分返済できると伝えることです。コロナ前に赤字だったところは、どうして赤字だったのかという特殊要因を考え、この特殊要因が除かれコロナが終息すれば充分な利益が出るということを伝えて融資を実行してもらってください。

 

ここから3枚は政策金融公庫と商工中金の融資の際に必要な申し込み書類の一覧です。いずれも、記入が必要なのは一番上にある借入申込書ぐらいで、あとは集めれば良いだけで非常に簡単です。

まず1枚目は、政策金融公庫の中の国民生活事業。小規模事業者、個人事業主の方々を対象にした融資です。平常時ですと8種類ぐらい提出物が必要ですが、今は4種類と簡素化されています。

 

次は政策公庫の中小企業事業。これは中小企業を対象にしたものですが、こちらも通常時の半分ぐらいの提出物で楽になっています。


3枚目は商工中金。こちらも平常時と比べるとかなり簡単になっています。

 

いますぐ使える助成金など

独立系宿泊施設が現状を守りぬくために使えるもの

補助金や助成金の中で、ぜひ使ってほしいものをお伝えします。
守備系と攻撃系とありますが、現状においてはあくまでも守るということなので守備系をまずはお伝えします。

【守備系】いますぐ系

固定資産税の免除
来年の2021年に関しては、今年の3カ月間の売り上げが50%以上さがっていれば全額免除、30〜50%さがっていたら半額免除になる

リース料の支払い猶予 
3月6日付けでリースの団体に経済産業大臣より支払い猶予を認めるようにとの要請が出された。要請なのでどこまで効力があるかは分からないが、オフィス什器などをリースしている経営者は聞いてみる価値はある

雇用調整助成金
週末に発表された内容を見ると、ある一定条件ならば100%の補助が受けられるようになった。詳細はGW開けに発表される。1日の上限金額(8,330円)の変更はない

都道府県協力金
東京都の場合はは、宿泊は対象外だが、宿泊施設内の大きな宴会場や集会所など密集場所を4月16日〜5月6日に閉鎖した場合には適応となる。申し込みは6月15日まで
東京都以外でも30数カ所の自治体で同じような協力金が実施されている。金額は東京50万円(2事業以上100万円)だが、ほかの自治体は30万円というところが多い

持続化給付金
200万円(個人事業主100万円)の給付。経産大臣より先ほど発表があり、最速で5月8日に入金される予定。申請の詳細はまだ出ていない

国税、地方税、厚生年金の支払い猶予
支払いを猶予してくれる上に延滞金も基本的にかからない

 

コロナ後に役立ちそうな補助金

将来的な売り上げ増に繋がる広告などへの補助

坂本:次に、攻撃系と書いていますが念のため申請をしておくと良いと思われるものを紹介します。下記2つは補助金申請の手間はかかりますが、出して損はありませんので、ご利用いただければと思います。

【攻撃系】これから系

持続系補助金
補助金は出せば必ず通るわけではなくて、採択率=ある種、合格率のようなものがあります。持続化補助金は通りやすく、過去90%は採択されています。これは皆さんがコロナ終息後にもう一度、顧客に対して広告を打ちたいといった場合に使える可能性のある補助金で、3分の2の補助率。今度の補正予算が成立すれば、50万から100万円へと増額されます。リカバリー期に150万円の広告を打った場合に50万円が自己負担、100万円が後ほど国から返ってくる制度になっています。

ものづくり補助金
これは名前の通り、基本的には製造業を対象にした補助金ですが、コロナの現状もあるため拡大解釈されております。広告費と販売促進費を含めて最大1000万円出ます。補助率は3分の2。採択率は低くて40〜50%で、出して通るかどうかは半々ということになります。

 

詳しくはこちらのサイトをご覧ください。

経済産業省:https://www.meti.go.jp/covid-19/

日本政策金融公庫:https://www.jfc.go.jp

商工組合中央金庫(商工中金):https://www.shokochukin.co.jp

 

Part3では、参加者などから寄せられた質疑応答をまとめています。

 

坂本 利秋氏
株式会社やまとごころキャリア 取締役 
合同会社スラッシュ代表。東京大学大学院工学系研究科卒。日商岩井(現双日)にてファンドマネージャーを経験後、国内初SNS企業CFO、三井物産子会社の取締役を務める。2009年より中堅・中小企業の再生コンサル、再生完了企業の売却コンサルを行っている。助言でなく、実際に手を動かし、汗をかくコンサルがモットー

 

 

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