インバウンドコラム
コロナ禍により観光を取り巻く環境が大きく変化するなか、観光再生を左右するキーワードとして声高に叫ばれているのが、DX(デジタル・トランスフォーメーション)である。DXとは「デジタル技術の導入によって、既存のビジネスのやり方を根本的に変革し、よりよい価値を顧客にもたらすこと」であり、政府が2021年秋に「デジタル庁」創設を目指していることでも注目されている。
観光再生シリーズ・スペシャル対談第3弾は、「DXによる観光再生」をテーマに、サステナブルな観光地を目指す佐渡観光交流機構専務理事の清水治慶氏、DX分野の第一人者として活躍する日本デジタルトランスフォーメーション推進協会代表理事の森戸裕一氏、地域の地場産業の支援を含め、日本企業の変革を促す事業を主に手がけるチェンジ代表取締役兼執行役員社長の福留大士氏をゲストに迎え、モデレーターを株式会社やまとごころ代表取締役の村山慶輔が務めた。トークライブは佐渡DMOの取り組みをもとに、森戸氏、福留氏がDX推進による可能性を示唆する形で進行。見どころを一部抜粋して紹介する。
佐渡DMOが目指すブランディングとは
多様な魅力を持ち、「日本の縮図」ともいわれる佐渡。ターゲット層は口コミ力があり、海外旅行に行くことができるゆとりある層で、その地理的条件からも、島外から佐渡を訪れるお客様は日本人、外国人かかわらず「インバウンド」客と位置づけている。
佐渡観光交流機構の清永氏は、「佐渡DMOのドメインは、一本化された窓口として情報を集約し、発信すること」と断言する。佐渡のファンづくりを目的に展開しているのが「さどまる倶楽部」。島外在住者ならだれでも登録でき、会員になるとさまざまな割引特典が受けられる仕組みだ。2019年12月からは、会員向けに佐渡市内だけで利用できるアプリQRコード決済を利用した電子マネー「だっちゃコイン」も導入し、観光客の消費行動を把握するCRMとしても役立てている。ただ、こうしたITを活用した施策を次々と打ち出す一方で、清永氏は「DXを意識したことはない。データ分析についてもビッグデータが必ずしも必要ということではなく、佐渡では 産学連携によるアンケートで消費者行動を把握して戦略立案につなげている」と話す。
コロナ禍はブレークスルーのチャンス
こうした清永氏のプレゼンテーションを受け、「DXは目的ではなく手段。佐渡DMOがことさらDXを意識せず、CRMを通じて旅行者を見える化し、エンゲージメントを高めるための基盤づくりを進めながら、地域全体の将来を考えている点が興味深い」とコメントしたのが、チェンジの福永氏だ。日本デジタルトランスフォーメーション推進協会の森戸氏も、「DXはまさに変容。たとえば、観光も従来は近隣で連携するのが主流だったが、UX(ユーザー・エクスペリエンス)の観点から考えると、特にインバウンド客は距離のハードルが低く、文化をはじめ佐渡と親和性のある地域をつなぐといった新しい展開も考えられる。むしろ、従来の観光の概念をどうブレークスルーするか。 デジタルの力も活かしながら意識を変えるチャンスがコロナ禍ではないか」と指摘する。
対談では、「ITとDXの違い」、「ビッグデータとスモールデータ」、「地方でのDX人財の活用」、「旅におけるリアルとバーチャル」など、福永氏、森戸氏の知見も交えながら、さまざまな話題で白熱。やまとごころの村山は「DXを起点に、単なるIT化との違い、ヒトを含むコンテンツづくり、地域がビジョンを描くことの重要性など、数多くのヒントを得られた。視聴者のみなさんのビジネスにも役立ててほしい」とまとめた。議論の全編は、ぜひ動画で視聴してほしい。
【開催概要】
観光再生 第3弾〜DXによる観光再生を考える〜
日時:2020年12月11日(金) 15:00〜16:00
会場:ZOOMウェブセミナー
主催:株式会社やまとごころ
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