インバウンドコラム

コロナウィルスで冷え込んだ世界の旅行熱に、再び火をつけ得る東京オリンピックは開催されるのか

2020.03.12

清水 陽子

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新型コロナウイルスの影響で欠航便が相次ぐ中、成田空港へ行く機会がありました。駐車場で、「予想以上に車が多いな」と思ったのもつかの間、ほとんどのカウンターが閉鎖され、利用者の姿がまばらな閑散とした出発ロビーを見て驚きました。

 

2月の初め「Flight shame worries airlines(飛び恥が航空会社を心配させる)」という記事を目にして、スウェーデンの17歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリさんの行動で注目される「飛び恥」が、欧州からの訪日旅行に与える影響について考えていました。それからひと月も経たないうちに、他の理由で成田空港がこんな有様になっていようとは想像していませんでした。

昨年初めのUNWTO(国連世界観光機関)の発表によると、国際観光客数は2010年からの8年間で約1.5倍となり、世界中で観光客は急速に増加していました。地球上の移動が、みるみる身近で気軽なものになっていく中、旅行人口の増加は止まらず、今後のテーマはオーバーツーリズムへの対策とサステナブル観光の推進に尽きると信じていました。そんな中、コロナ・ショックは、世界の人々の旅行熱を瞬時に冷却し、世界の名だたる観光地が、去年とは違う春を迎えています。

アメリカNBCの「トゥデイ」の記事は、2018年と今年2月と、ミラノの人気観光地「ドゥオモ広場」を撮影した写真2枚を比較掲載し、現在の旅行サービスの価格について紹介しています。イタリアといえば、オーバーツーリズムに頭を悩ませていた国の一つで、2018年の写真には入口前の行列をはじめ多くの観光客が写っていますが、今年2月の時点で人間よりも鳩の姿ばかりが目立っています。そしてついに今月8日、ついにミラノは封鎖されました。イタリアはアジア以外で感染者が最も多い国で、死者も11日現在631人に達しています。イタリア政府は8日、ミラノがあるロンバルディア州とベネチアなどを含む14の県を来月3日まで封鎖し、美術館やナイトクラブなどの施設も閉鎖すると発表。その後、イタリアのジュセッペ・コンテ首相は、10日よりイタリア全土に対して封鎖の措置をとることを発表しています。

「トゥデイ」によると、コロナの影響による旅行関連商品の価格破壊が進んでいます。航空各社の値下げ状況は、ニューヨークのラガーディア空港からマイアミまでが、フロンティア航空で$51な他、ニューヨークJFK空港からパリまで(約5800km/東京-デリー程度)がアメリカン航空で$248だと言います。トリップアドバイザーが運営する格安航空券サイトAirfarewatchdog.comの編集者によると「今週はハワイ便が本当にお買い得」との事。ホテルやその他の旅行商品も同様で、トリップアドバイザーによると4つ星ホテルに1泊$50ほどで泊まれる他、一人$3,099だった22日間の中東クルーズが、$489になっているなど、ありえない価格で提供されているようです。これ程急速に旅行人口が減少し、旅行の需要と供給のバランスが崩壊するとは、昨年中に誰が予測できたでしょうか。

予想以上の速度で軽くなっていくように見えていた、世界の人々の海外旅行へのフットワークに、コロナウイルスは一旦大きな重石をしてしまいました。今後気候が穏やかになり、コロナが収束したとして、また人々の気持ちを旅行へと向かわせるには、それなりのインパクトが必要でしょう。その役割を担い得るのが、「東京オリンピック・パラリンピック」ではないでしょうか。無事開催されるのか、どのような形になるのか、まだ不透明ではありますが、非日常を体験しに、飛び出したくなるようなエネルギーのある大会になることを望んでいます。その効果は、日本だけでなく世界中の観光地をほっとさせるのではないでしょうか。

また、この危機を乗り切るに当たって、以前の状態に戻すことを目指すのではなく、バランスのとれた持続可能な観光業のあり方を、世界中で考えていくべきなのでしょう。

 

 

 

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