インバウンドコラム

海外メディアが予測する「アフターコロナの旅行はどうなっていくか」

2020.04.28

清水 陽子

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ロンリープラネットの記事「家で挑戦できる世界のダンス5選」を読んでから、「ボリウッドダンス」とも呼ばれる「バングラ」にハマっていて、いま無性にインドに行きたい清水です。

さて、ニューヨークでは23日にクオモ知事が、4月22日の総入院者数 が10日連続で減少したと発表しました。ドイツでは20日から一部の店舗の営業が再開されました。同じく20日イタリアでは、ウイルスの大流行が始まってから初めて、感染者数が減少に転じました。ドイツのメルケル首相が「ただし我々は未だコロナパンデミックの初期段階にいる」と釘を刺したように、人々が自由に移動できる状況には程遠いのですが、海外メディアにはコロナ後の旅がどうなっていくかを予測する記事が目立ってきました。

テレグラフは「ロックダウン解除後の旅行は安くなるの?そもそもどこに行けるの?」という記事で様々な考察をしています。旅行は今後、お金持ちだけの特権になるのか、はたまた、健康な若者だけのものになるのか。「実際のところは水晶玉を持っていないのでわからないけど」と、今回ばかりはテレグラフの旅行記者でさえも、予測は難しい様子。

それでも「例えば、テロの後の動きを例に予測してみると、航空会社もホテルも旅行会社もまず少しでも早く収益を上げるため、一時的に価格は下がるのではないか」とのこと。「しかし長期的に見ると、エアラインは淘汰され、生き残った会社も多額の借金を背負っているため、路線は絞られ、競争が減り、価格は上がるだろう」と見ています。

それに比べて、「ホテルの価格は低く留まるのではないか」としています。宿泊業界は、淘汰はあっても、価格競争がなくなるほどではないとの見方です。「旅行会社は大打撃を受け、多くが潰れるだろう」とし、旅行形態としては、若者の個人旅行には、可能性を感じています。

世界の状況について、「中国は規制を緩め始め、日本は今第二波に苦しんでいる」と伝えています。「オーストラリアやNZは効果的に鎖国状態にすることができたため、いち早く旅行者を迎えられる可能性があるが、そのリスクを取らない決断をするかもしれない」との見方を示しています。

ロンリープラネットの「コロナ後に飛行機に乗る時、変わっているかもしれない8つのこと」では、「航空券価格の上昇」、「マスクは必須」、「座席は一席あける」、などがコロナ後の変化として予想されています。また、「国によってそれぞれのルールができてくるかもしれない」とし、「シンガポールのコロナ追跡アプリのようなものかもしれないし、国によっては書類の提出が必要になるかもしれない」と見ています。

シンガポールの「コロナ追跡アプリ」とは、3月20日に政府が国民に提供した「Trace Together」というアプリです。感染者の行動経路と、濃厚接触者がデータとして迅速に割り出せますが、プライバシーの観点から思ったほど普及していないのが課題です。シンガポールではさらに、ホテルの衛生状況を検査するSG cleanというキャンペーンが始まりました。衛生チェックリストを遵守して基準を満たした施設に認証マークが与えられます。

タイでも、施設の清潔さをアピールする「アメージング・タイランド・セーフティー・アンド・ヘルス・アドミニストレーション(SHA)」という独自の認証制度が始まりました。タイ政府観光局が官民合同で設定した公衆衛生基準で、宿泊施設や飲食店の消毒の徹底や、保健省のガイドラインに従うことなどが認証基準となっています。

中国では、個人の健康状態や旅行歴がわかる「健康QRコード」の導入が、多くの都市で進んでいます。スマートフォンのアプリ上にその人の健康状態が「赤」「黄色」「緑」で示され、街の各所設けられた検問所で、「健康」を示す「緑」を見せられないと、市内を自由に移動できません。

コロナ後の旅行は、交通機関や施設、それを利用する個人がお互いに、「わたしはクリーンです」ということを証明し合ことから始まるのかもしれません。

私がインドでバングラを踊れるのはいつになることでしょう。

 

 

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