インバウンドコラム

海外メディアななめ読み:観光の終焉から未来の観光へ。北欧に学ぶ、新しい観光のあり方

2020.05.12

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私たちは今、誰も想像していなかった日常を送っています。以前と同じ世界にはもう戻れないと、地球中のみんなが感じています。移動も交流もできないので、観光業界への影響は計り知れませんが、こうなったからには、以前より良い世界を構築するより他ありません。
新しい世界の観光のあり方を考える時、北欧の観光との向き合い方が参考になります。

2017年、デンマークのコペンハーゲン市が「THE END OF TOURISM(観光の終焉)」という驚きの宣言を発表しました。これは、人魚姫像を求めて、カメラを携え、観光バスで訪れられる観光地を自ら降りるという宣言でした。その代わりにコペンハーゲンは、訪れる人々を観光客として扱うのではなく、一時的な住民として歓迎するとしたのです。観光資源は人魚姫像ではなくコペンハーゲン市民であり、未来の観光は、企業、地域と観光客が協力し、地域の発展と住民の幸福をも作り出すものでなければならないとしています。

フィンランド政府観光局は昨年、観光事業者にフィンランドの自然の保護と環境への負担削減を奨励する「サステナブル・トラベル・フィンランド」というプログラムを開始しました。SDGs(持続可能な開発目標)を元に企業に持続可能性の観点からも事業を評価するよう促す動きを、より具体化したものです。旅行者側には、どうしたら環境に負担の少ない旅ができるかを実践しやすい例で紹介し、そのように旅することを誓う「サステナブル・フィンランド誓約」にもウェブ上から署名できるようになっています。エコ製品表示等も紹介され、旅人がエコな選択をしやすくなっています。

ナショナル・ジオグラフィックは、「持続可能な旅を求める運動はコロナウイルス後も生き残るか」という記事の中で、昨年欧州を中心に盛り上がりを見せた、環境負担の少ない旅を求める運動が、パンデミックをきっかけに収まってしまうのかという問いについて、むしろ、そのような旅の重要性がより高まるのではないかとしています。今回のウイルスがこれほど急速に世界中に広がったことが、私たちが今日どれ程世界と繋がっているかを表しているからです。

世界は繋がっています。持続可能な世界を目指すことは、一部の意識の高い人たちの運動ではありません。美しい世界が持続していかなければ、それを見に行く観光旅行は消滅してしまうのです。新しい世界と新しい観光を作るために、事業者は具体的に何をすればいいのか、消費者は何を選べばいいのかを示す基準が必要となるでしょう。

今年、観光庁は「持続可能な観光指標」の導入を予定しています。数を追い求める観光から、訪れる人も迎える側も、共に満足度の高い旅ができる国を目指して行きたいところです。

 

清水陽子
スイス訪日旅行手配 Hase & T 代表
早稲田大学で哲学とチアリーディングを学んだのち、日本航空に客室乗務員として入社する。退社までの6年間、与えられた乗務を休んだことがない花マル健康優良児。行った事があるのは37の国と地域。暮らしたことがあるのは、カナダの小麦畑に囲まれた街、スイスの湖水のほとり、台湾の焼き餃子屋台裏のアパート。2010年からやまとごころでインバウンドニュース配信を担当しつつ、現在は故郷ヨコスカを拠点に、スイス富裕層向け訪日旅行手配業を営む。自らの海外経験から「地元の人との触れ合いこそ旅の醍醐味!」と信じて、誰かに会いに行く旅づくりを目指している。英語とドイツ語を話す一児の母

 

 

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