インバウンドコラム

【海外メディアななめ読み】広い世界の捉えきれない「食の多様化」と、実はシンプルな「サステナブルな食」

2020.07.09

清水陽子

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ミシュランガイドに、登場したサステナブル部門

2020127日、パリで行われた『ミシュランガイド フランス 2020』の授賞式で、新しい評価のシンボルとして緑色のクローバーがお目見えしました。サステナブル(持続可能)な食の提供に取り組んでいるレストランに与えられるもので、今年のフランス版では50のレストランが受賞しました。

「サステナブル」は観光業界全体で取り組んでいくべき課題として注目されていますが、飲食業のサステナブルとはどういうものなのでしょうか。今回受賞したレストランを見てみると、例えばパリにある二つ星フージョンフレンチのDavid Toutainは、「季節にあった献立をつくり、小規模経営の事業者や職人と協力して環境に優しい取り組み」をしており、イタリア国境付近の二つ星レストランMirazurでは「環境に配慮した自家農園で育った野菜にもぎたての果物、地元で養殖された魚を味わうことができる」といいます。

「今のトレンドはサステナビリティ!」と聞くと、何やら新しい概念のように感じますが、旬のものを使って、素材を活かした調理をする和食はそもそもサステナブルです。東京は最もミシュランの星の多い都市として知られていますが、今後、クローバーも増えていくことが期待されます。

 

「食の多様性」にはコミュニケーションが大切

「インバウンドと食」を考える時、ハラルやヴィーガンなど、「食の多様化」も、現在の重要な視点です。イスラム教のハラルに代表されるように、宗教上口にしてはいけないという感覚を実体験として共有できる日本人は少ないのはないでしょうか。実は、どの程度厳格に教えを守りたいかは、「許されたもの以外絶対に受け入れない」という人から、「外国にいる間はなんでも飲食していいことにしている」というマイルールを持っている人まで、人それぞれなので、コミュニケーションが大切です。

欧米人に多いベジタリアンにも、色々なタイプがあります。肉は食べないけど魚は食べる人。肉も魚も食べないけど卵や乳製品は食べる人。肉や魚に加え卵も乳製品も一切口にしないのがヴィーガンです。そして、その理由も様々です。美容や健康のための人。無駄な殺生をしたくないという人。また、食料事情を世界規模で考えて、肉を食べないという人もいます。牛を1Kg太らせるには8kgの穀物が必要だとされていて、家畜の飼料として消費されている穀物が全て人間に分配されれば、世界の飢餓は解消されると言われてます。ベジタリアンである理由によっては、あらかじめ断ることができずに出てきてしまったものは、なんでも残さず食べる人もいます。

 

例えば、スイス人が受け入れがたい朝食

私の経験から、スイス人に受け入れられないことが多い、意外な食のパターンをご紹介すると、「朝食にサラダ」「朝食にパンケーキ」「フォアグラ」などがあります。日本の一般的な「洋風の朝食」にはサラダが出てくることが多いのですが、スイス人は朝に生野菜を食べる習慣がありません。朝食に果物を好む彼らには「え?朝食にサラダ?果物はないの?」と不満げに聞かれることがよくあります。特に洋食であるが故に「自分達が慣れ親しんだものが出てくるはず」という期待がガッカリを助長するようです。パンケーキも「西洋人が喜びそうな朝食」と日本人は考えがちですが、スイス人に言わせると「これはデザートで朝食ではない」とのこと。「フォアグラ」は動物愛護の観点から嫌悪感を示す人が多いです。朝食にパンケーキはアメリカ人であれば、フォアグラはフランス人であれば喜ばれるのかもしれません。

このように、食の習慣はまさに十人十色で、「イスラム教の人」「ベジタリアン」「西洋人」といったグループ分けで「こうするといいのではないか」と思い込んでしまうと、望まれていないサービスをしてしまうことがあります。

 

地産地消こそが「サステナブル」

そんな中、万能なのが「サステナブルな食」の提供です。サステナブルな食と聞いて、身構える必要はありません。地元で採れた旬のものを使う事がそれだけでサステナブルなのです。フード・マイレージ (food mileage) という言葉を聞いたことがあるでしょうか。食料の産地から消費される場所までの移動距離と輸入量を掛け合わせた「食料輸送距離」と訳される数字で、食料輸送による環境負荷を意識するためのものです。遠くから多くの食料が運ばれれば、輸送によって排出される二酸化炭素排出や窒素酸化物が多くなり、環境負荷が大きくなります。近くで採れたものを食卓に並べるだけで、地球に優しい行動なのです。

結局は、地元の食材とそれにあった調理法を基本とする事が、お客様満足への近道のように思います。多少食べられないものが提供されたとしても、その土地との繋がりがあれば、出されたことに不満を持つ旅行者はいません。地産地消を当たり前に行なっているお店は、それこそが「サステナブル」だということを認識して、自信を持って発信することをお勧めします。

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