インバウンドコラム

【海外メディアななめ読み】東京のイルミネーションはクリスマスの本場に負けない美しさ?

2020.11.25

清水 陽子

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我が家では11月末の連休にクリスマスツリーを飾りました。東京や横浜でもクリスマスのイルミネーションが次々と始まっています。

コンデナスト・トラベラーが選んだ「クリスマスを過ごすのに最適な場所」

インバウンド業界ではお馴染みの有名米旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」のトップページに現在、「クリスマスを過ごすのに最適な場所25」という、2019年12月の記事が載っています。この中でなんと、東京が、ベルギーのブルージュに次いで紹介されています。3番目には、カナダのフランス語圏であるケベック・シティー、その次がオーストリアのザルツブルク、アイルランドのダブリンと続きます。クリスマスの本場である欧米の都市を押さえて、2番目に掲載されていることに驚きました。

その記事は「この街は、毎年冬のイルミネーションとともに、ボルテージが上がる。いくつかの界隈が競い合って、本当にセンセーショナルな飾り付けを創り上げている」とし、「東京イルミネーション 2020-2021」という東京ガイド「TimeOutTokyo」の今年の記事へのリンクが貼られています。本文中では「東京ミッドタウンのイルミネーションと恵比寿ガーデンプレイスの巨大なバカラのシャンデリア」について言及されており、特にクリスマスを彩るものとして「青の洞窟SHIBUYA」も紹介されていますが、このイベントは今年は中止が発表されています。

東京のクリスマスイルミネーションは、ヨーロッパのものとは本質的に違うものですが、洗練されたデザインと新しさは、本場の都市のものに勝るとも劣りません。キリスト教国ではない日本の、イベントとしての飾りつけが、独自のクリスマスイルミネーションとして、見る価値があると欧米で認められるとしたら、面白く、嬉しいことです。

伝統のイルミネーションとツリー

スイスに住んでいた時、1年目のクリスマス、街中がひとつになるイルミネーションの壮大さとマーケットの活気に、本場の熱量を感じました。寒くて暗くて雨も多めの11月を耐えるとやってくる、ワクワクしたこの時期の雰囲気は格別でした。2年目のクリスマス、「中央駅のクリスマスツリーが今年はどんなだか見にいこう!」と張り切って出かけると、前年見たものと同じツリーがそこにありました。毎年趣向を凝らしてその年限りの飾りつけで楽しませてくれる日本のクリスマスツリーに慣れていたので、正直がっかりしたのを覚えています。けれども、ツリーやイルミネーションはこの街の伝統です。そう簡単には変わらないのです。毎年同じツリーが飾られ、伝統のイルミネーションが通りを照らし、いつもの屋台のクリスマス市が立つ。それが伝統であり、安心なのだと気づいてからは、毎年コロコロ変わらないクリスマスの装いを愛しく思うようになりました。とはいえここ数年は、チューリッヒのオペラハウス前のクリスマス市にはラーメン屋や、餃子などを販売する屋台があって、行列ができているとか。変化は控えめにじんわり訪れるのもスイスらしい傾向です。

クリスマスのアメリカにはあまり行ったことがないのですが、ヨーロッパでは、スイス以外のいくつかの都市を、クリスマスの時期に訪れる機会がありました。街には得てして伝統のイルミネーションが存在し、電球が切れている部分があったりしながらも、それがまた深みとなっているように見えました。

センセーショナルな東京のクリスマスイルミネーション

さて、本場の国の人々の目には、東京のクリスマスイルミネーションはどう映るのでしょうか。「コンデナスト・トラベラー」が東京の飾り付けを「センセーショナル」と表現しているように、「こんな奇を衒うような装飾合戦は我らがクリスマスに相応しくない」と思う人もいるかもしれませんが、東京のイルミネーションは伝統行事とは別物です。日本で発展した独自のクリスマスの迎え方であると理解して、暖かい目で見守って欲しいものです。流行を取り入れたモダンなデザインと、真新しく完璧に輝くイルミネーションを、異国で独自の進化を見せる自国の文化を見守る視点で、一緒に楽しんでもらえたらいいのではないでしょうか。

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