インバウンドコラム
3月4日から7日までポーランドで開催された「2021年ヨーロッパ陸上競技インドア選手権」から約2週間後、スイスのドイツ語公共放送局であるSRFが、選手権派遣団のその後の感染状況がわかってきたことを受けて、東京オリンピックへの影響を懸念する記事を掲載しました。
国際的なイベントは「火遊び」で火の粉は世界に飛散する?
「ヨーロッパ陸上競技インドア選手権」はポーランドのトルンで開催されたもので、選手権後に帰国した派遣団の中から、イタリアで15名、英国で10名、オランダ8名、ドイツ7名を始めとする50名以上の陽性者が確認されました。ヨーロッパ陸上競技連盟会長のカラマリノフ氏は、「我々は47ヶ国から700人以上のアスリートが集まったイベントを安全に開催した。多くの選手と関係者がいる中、何人かの陽性者が出ることは当然あり得る事だが、多くの検査結果の中のこの数例の陽性がどれほどの影響力を持つのか」と発言しているように、大会は安全に終了し成功したとの認識を示しています。
しかしこの記事では「この経験は、47ではなく200ほどの国と地域から、700人でなく1万人以上のアスリートが集まる東京五輪にとってどんな意味を持つのか」との疑問を投げかけ、国際的な総合競技大会は「火遊び」となる可能性があると締めくくっています。日本では、五輪組織委員会と国際オリンピック委員会の運営を巡る問題に焦点が当たりがちですが、各国は自国と地球規模での感染拡大への影響を考え、厳しい目で動向を見つめています。
うっかりワクワクしてしまわないよう細心の注意を払う異例のイベント
そんな中、東京五輪の聖火リレーが、3月25日に福島第一原発事故の際に収束作業の拠点となった福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」から始まりました。このことは多くの国や地域で報じられています。というのも、英国の経済誌FINANCIAL TIMESが「『声援ではなく拍手で』オリンピックを楽しむための日本の奮闘」という記事で伝えているように、「新型コロナウィルス感染症によるパンデミックによって延期を余儀なくされた東京五輪が、この夏に本当に開催されるという強固なメッセージを発信する意味で、大きな一歩を踏み出した」からではないでしょうか。
この記事では同時に、運営にあたっては、コロナウィルス感染症に対する安全対策が最も重視され、世界規模のイベントを楽しむことは二の次になっていることも強調されています。聖火リレーランナーが走る沿道では、人々が「ワクワクして楽しもうとしてしまわないように」、聖火ランナーが到着する3分前には、声援を控え、拍手で応援するよう、アナウンスが繰り返されたと書かれています。
時に日本国民が一丸となってパンデミック下の五輪を成功させることが責務かのような異様な雰囲気さえ漂う中、オリンピックとはそもそも何なのか、誰のためのものなのか、考えさせられます。この大会を巡る全てを通して、日本が何を決断し、どんなメッセージを発信するのか、2022年に冬季オリンピックを控える中国、2024年に夏の五輪開催予定のフランスは元より、多くの国・地域が関心を寄せています。
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