インバウンドコラム

【海外メディアななめ読み】第4回: “日本の朝食”とその響き

2017.05.08

清水 陽子

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 前回のコラムでご紹介したアメリカの旅行誌「コンデナスト・トラベラー」のランキングに、もう一つ日本のホテル「アマン東京」が登場しています。その朝食が、『The Best Hotel Breakfasts in the World』に選ばれているのです。

「和朝食は日本文化の小宇宙である」と、食感、色、香りのバランスの美しさと、きめ細やかさが絶賛されています。ただ、ヨーロッパからのお客様と関わることの多い私の経験によると、「和食は大好きだが、朝食に魚だけは勘弁してくれ」という声が多いのも事実です。寝ぼけた体は慣れた食事しか受け付けないという感覚もわかるので、私の場合、積極的にお勧めはせず、好きな人にだけ楽しんでもらうスタンスを取っています。

 

突然ですが、ミシェル・ザウナーというソウル生まれの韓国系アメリカ人女性ミュージシャンをご存知でしょうか。音楽に明るくない私が、彼女に興味を持ったきっかけは、そのバンド名です。フィラデルフィアでバンド活動をしていたミシェルが、昨年「Japanese Breakfast」という名でソロプロジェクトを開始したのです。

アメリカのエンタメチケット販売サイト「axs.com」のインタビュー記事によると、「Breakfastというアメリカ的な響きとJapaneseという外国風な響きとの組み合わせが好きだった」のがこの名を選んだ理由とか。

 

ドイツには「Tokio Hotel」という名のロックバンドがいます。89年生まれの双子の兄弟を中心に結成された4人組で、2005年のメジャーデビューと同時に国民的スターとなりました。

「Tokio」は東京のドイツ語表記ですが、バンド名の由来を聞かれると彼らは、「Tokioという響きが好きだったこと」と「遥か遠くのエキゾチックな大都市TokioのHotelにいつかバンドとして滞在することを目標としたこと」を挙げます。

2010年に初来日を果たした彼らは、ドイツメディア「WeltN24」のニュースサイト記事『Tokio Hotelが初めてTokioへ』によると、「命名当時、東京は夢見るだけの場所で、実は日本のことは何も知らなかった」と語っています。

 

日本を想起させる名を持つこの2組のアーティストに共通していることは、「日本に深い思い入れはないがエキゾチックで響きが好きだった」から名付けたという点です。流行を発信する立場にある若い外国人の、日本への漠然としたイメージが、神秘的かつ好意的であるらしいことは大きな希望です。ブランドニッポンがまだまだ成長していける可能性を感じさせてくれます。

 

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