インバウンドコラム

2021年度政府予算決定、観光庁関連を徹底解説。前年度比40%減の408億円もインバウンド向けコンテンツ強化に1.5倍、DX推進も

2020.12.25

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観光庁は12月21日、2021年(令和3年)度の当初予算が決定した。2021年度の予算は、2020年度比40%減の408億円となった。ここでは、408億円の主な内訳や、前年度と比較しての変化、2021年度何にどの程度注力していくかなどを詳しく見ていく。

(図出典:令和3年度観光庁関係予算決定概要)


2021年度観光庁関係予算(主な項目のみ抜粋)
1.観光産業の再生と「新たな旅のスタイル」の普及・定着(17億1700万)
2.国内外の観光客を惹きつける滞在コンテンツの造成(177億7200万円)
3.受入環境整備やインバウンドの段階的復活(208億2100万円)


 

国境を越えた往来停止でインバウンド受け入れ環境整備予算は軒並み減少

2020年度は国境を超える往来が停止した影響で、国際観光旅客税財源充当額が前年度比の51億円から26億円まで43%減少、その影響で、入出国円滑化に向けた整備や、多言語対応などのインバウンド客受入に直結する予算は軒並み、前年度比で大きく減っている。

例えば、円滑な出入国の実現に向けた環境整備は81億円から40億円に、円滑な通関等の環境整備は前年度の35億円から85%減の5億円まで下がった。空港におけるFAST TREVALの推進は60%減の12億円、公共交通利用環境の革新等は72%減の12億円、ICTなどを活用した多言語対応による観光地の「まちあるき」の満足度向上が25億円から約60%減の10億円へと減額された。

このほか、戦略的な訪日プロモーションにかかる予算は前年度の87億円から15%減の73億円に、訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業は同54億円から37%減の33億円となった。

また、2020年度には予算計上されていたインフラツーリズムやクルーズ寄稿促進事業や、ナイトタイムやモーニングタイム活用による時間市場の創出に向けた事業は、2021年度予算としての充当はなくなった。

 

インバウンド向けコンテンツ整備に1.5倍、新たな旅のスタイル普及も

2020年度比と比較すると減額になった項目が目立つが、増額になった項目もある。

例えば、新たなインバウンド層誘致のためのコンテンツ強化には前年度の15億円から1.5倍の22億円になったほか、ワーケーションやユニバーサルツーリズム促進など、インバウンドも含む新たな旅行スタイルの普及、定着に向けた予算増額や、新事業の推進と予算の確保の動きもある。特に、コロナ禍で注目を集める観光におけるDX推進に向けては2021年度初めて8億円を確保した。さらに、観光産業の発展に欠かせない人材確保や育成事業にも前年度以上の予算を確保しており、ポストコロナを見据えた取り組みを加速させる決意がみられる。なお、東北復興枠は前年度並みの3億円を確保した。

それでは、2021年度当初予算の内訳を見ていく。

 

ワーケーションやブレジャー普及に向けて、地域・企業・旅行会社をサポート

1.観光産業の再生と「新たな旅のスタイル」の普及・定着(17億1700万円)

2020年度の12億円から1.3倍となる17億円の予算を確保した。

ここでは、従来の日本の観光スタイルから脱却し、休暇取得の分散化や、滞在日数の長期化など、新たな旅のスタイル普及に向けた取り組みに5億400万円を確保。訪問客を受け入れる地域、人を送り出す民間企業、商品を作る旅行会社の3つに対して支援する。

受け手の地域には、ワーケーションやブレジャーニーズへの対応やサテライトオフィスの整備、滞在型旅行実現に向けたコンテンツへの支援を行う。送り手となる民間企業には、企業経営者や旅行者に対して、新しい旅のスタイルの普及啓発を行うほか、旅行会社には、旅行商品の造成支援を行う。

こうした取り組みを通じて、感染リスクを軽減しながら、旅行の機会創出と旅行需要を平準化させ、地域活性化に繋げていく。

また、2020年度に計上されていた、宿泊施設の業務効率化による生産性向上に向けた事業(5800万円)にとって代わる形で、2021年度からは新たに宿泊施設を核とした地域の観光ビジネス展開への支援に1億円を充当。宿泊施設側には、感染症対策やワーケーション対応、宿泊施設の高付加価値化に向けた支援を行い、施設の魅力を高め、誘客に繋げる。また、域内施設や宿泊施設間、異業種間の連携を促進し、訪れる観光客が、宿泊施設を起点にワンストップで多様な選択肢から地域の魅力を選び楽しめるような取り組みを支援する。

また、ウィズコロナ時代においても観光を日本の基幹産業として育てるためには人材育成が重要と捉え、観光産業の人材確保や育成に1億1900万円を確保。宿泊施設での外国人人材受け入れにも取り組み、優良事例や情報をセミナーやHPで発信したり、特定技能外国人のキャリアパスを描くなどの展開もする。また、観光産業界と文部科学省、教育委員会との連携し、教育プログラムの開発に向けた勉強会や協議会も立ち上げる。

これ以外にも、通訳ガイド制度の充実と強化に5600万円、DMOによるデータ取集や分析に1億5000万円、健全な民泊サービスの普及に1億1700万円、ユニバーサルツーリズム促進に1800万円、観光統計の整備に前年度と同額の6億5300万円を充てる。

 

観光DX推進に8億円、訪日層開拓に向けた観光コンテンツ強化に1.5倍

2.国内外の観光客を惹きつける滞在コンテンツの造成(177億7200万円)

前年度予算の236億円から25%減となったものの、費目別では新規計上や増額も見られた。

2021年度に特徴的なのは、新しくDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による観光サービスの変革と観光需要の創出に8億円を計上したことだ。

観光にかかわる消費機会の拡大や消費単価の向上を目指し、これまでの態様に捉われない新たな観光コンテンツ・価値を生み出すため、デジタル技術を複合的に活用しながら、観光サービスの変革と新たな観光需要の創出を目指す。

「観光空間の変革」「観光体験の変革」「地域観光の変革」の3つの視点で事業を展開する考えで、「観光空間の変革」では、コロナ禍で新たに生まれた形態の一つであるオンラインツアーなどを活用して来訪意欲を増進する。「観光体験の変革」では、ARやMR、自立走行や屋内即位といった5Gの普及などが可能にする最新テクノロジーを活用した新しい観光コンテンツ創出を目指すほか、「地域観光の変革」では、顔認証の活用による手ぶら観光や、取得データの適時活用による混雑緩和など、観光地のエリアマネジメントや観光消費増、収益改善に取り組む。

このほか、新たなインバウンド層の誘致のためのコンテンツ強化などに、前年度の14億6000億円から約1.5倍の22億2500万円の予算を確保、政府が掲げる2030年の目標である訪日外国人旅行者6000万人、消費額15兆円の達成や、新たな体験型観光コンテンツの造成により、地方を含む全国各地での消費機会拡大に取り組む。具体的には、3密を避けながら日本の本質を深く体験・体験できるアドベンチャーツーリズムなど、withコロナ時代にインバウンド層への訴求力が高い体験型観光コンテンツ等を造成していく。

このほか、国際競争力の高いスノーリゾート形成の促進事業には前年度の約半分となる10億5000万円、インバウンドに対応するDMOの改革に向け、外部人材登用や人材育成、DMOによる自主財源確保への支援などに前年度と同額の5億4000万円、広域周遊観光促進に向けてDMOが中心となって行うマーケティングへの総合支援に前年度同レベルの7億6500万円を確保。受入環境整備に関しては、地域観光資源の多言語解説整備支援に4億6000万円(前年度比56%減)、文化資源を活用したインバウンド環境整備に69億6900万円(同3割減)、国立公園のインバウンド環境整備に49億6200万円(同3割減)を充て、2030年の政府目標達成を見据えた取り組みを進める。

 

受入環境整備予算は半減も、訪日プロモーションなど引き続き注力

3.受入環境整備やインバウンドの段階的復活 208億2100万円

2021年度の予算は、2020年度の425億円から208億円と大幅減となったが、引き続きインバウンド対応の整備に注力していく。

円滑な出入国・通関等の環境整備に46億1400万円、空港におけるFAST TRAVELの推進に12億6000万円、災害時を含む多言語対応やキャッシュレス等公共交通利用環境の革新に12億4000万円、ICTなどを活用した多言語対応等による観光地の「まちあるき」の満足度向上に10億3700万円、旅行安全情報共有プラットフォームを通じた旅行者の安全の確保に1億2900万円を計上した。

また、訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業として33億8300万円を計上し、引き続き地方での消費拡大、宿泊施設滞在時や移動の際の快適性向上への取り組みを支援していく。訪日外国人旅行者に向けては、デジタルマーケティング等による先進的プロモーションに15億7800万円、戦略的な訪日プロモーションに73億7000万円、MICE誘致促進に1億9000万円なども通じてポストコロナを見据えた準備を進めていく。

令和3年度(2021年度)観光庁関係予算決定概要詳細はこちら

 

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