インバウンドコラム

マラソン参加だけが目的ではない、ゲストを受け入れを通じて見える訪日客のニーズや地域の魅力とは?

2020.03.09

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217日、驚きのニュースが速報版で飛び込んできた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、31日に開催された「東京マラソン」で一般参加者の出場の全面的に取りやめが決まった。一般枠では約3万8000人がランナーとしてエントリーしているが、そのうちの一人は、我が家の民泊を利用するマレーシアからのゲストだった。

 

東京マラソンに参加できずともマレーシアから来日したランナー

私の知人が経営する東京新宿の初台界隈にあるプチホテルでは、東京マラソン参加中止が決まった途端に、宿泊予定者からいっきにキャンセルの連絡が入ってきたという。スタート地点の都庁に近いこともあり、東京マラソンに出場する多くのランナーが宿泊先にと考える人気の宿だったようだ。

私の方はというと、東京マラソンに出場予定だったマレーシアのゲストに連絡をし、一般参加が中止になったが訪日するかどうか聞いてみた。本人は驚いていたようだが、せっかくなのでということで、予定通り日本に来てウチに宿泊することになった。

 

マラソン参加だけが目的ではない

マレーシアからのゲストがウチに来た際に、今回の目的を聞いてみた。すると、彼はすでに転職が決まっており、今は前職を退職したばかり。新しい仕事を始める間の休暇を利用しての訪日だった。また彼は、数年前に仕事の都合で半年ほど東京に住んだことがあり、今回は東京マラソンの出場以外にも、日本で知人に会うことを楽しみにしていたようだ。

本当のところを言うと、私はマラソンコースの沿道に立って彼の応援をしたかったので、非常に残念な結果だ。知り合いが東京マラソンに参加するとなれば、応援のしがいがある。ただ、東京マラソンの取りやめを憂いたところでどうしようもない。

せっかく日本にまで来たのだから、我が家の民泊で一緒に食事をしたり、駅前の焼鳥屋を一緒に訪ねたりと、彼の日本滞在が有意義なものになるよう心掛けた。

 マレーシアからのゲストは30代後半の男性で、ムスリムとのこと。鳥肉が大好きだったので、西荻窪を代表する庶民的な焼鳥屋「戎(エビス)」へ案内した。店の中は焼き台の煙がモクモクと立ち込めており、連日混雑している人気のお店だ。ムスリムの彼はお酒は飲まなかったので、ノンアルコールビールで乾杯し、盛り上がった

 

日々のトレーニングをするに便利という基準での選択

彼がマラソンを始めたのは、約10年前シンガポールに住んでいたときのこと。仕事のストレス解消を目的にジョギングを始めたことがきっかけで、その後マラソン大会にも参加するようになったそうだ。最初のレースは2011年、当時住んでいたシンガポールで開催されたマラソン大会で、その時からしっかり完走したそうだ。

以降これまでフルマラソンには9回参加していて、シンガポールの他マレーシア、さらに東京在住のころに東京マラソンにも参加したことがあるとのこと。自己タイムのベストは、3時間40分ほどで、今回はその記録を抜きたかったのに…、と残念がっていた。

ところで、西荻窪のウチの民泊を選んだ理由について聞いたところ、近隣に自然豊かな大きな公園があることが決め手だったとのこと。ウチから徒歩で7分ぐらいの場所に、都立善福寺公園があり、そこには2つの池があり週末にはボート遊びも可能だ。この池の周りがジョギングにはちょうど良いコースのようだ。実際のところ、滞在中彼は毎朝緑豊かな池のまわりを走って汗を流していた。私が朝のウォーキングをしていると、ばったり会って、手を振ってくれた。

さらに、ウチから自転車で5分ぐらいのところには杉並区のスポーツセンターがあり、そこにはジムやプールがある。彼にその場所を案内したところ、トレーニング目的で何度かジムを訪れたとのこと。駅前にあるスポーツセンターは会員制のため、外国人旅行者には訪れにくい。会員登録なしで利用できる公共施設は、彼らのような外国人旅行者には重宝することも分かった。

 

ゲストをお迎えする立場になって初めてわかること

ところで、うちの民泊には、以前にもアスリートが泊まりにきたことがあった。

韓国から来たプロのアイスクライマーだった彼女は、なんと世界チャンピオンにもなったことがあるそうだ。荻窪駅の近くにボルダリングジムがあり、そこでトレーニングをするため、ボルダリングジムから比較的近い場所にあるウチを選んだとのこと。やはり彼女も毎朝、善福寺公園を走っていた。

我が家は西荻窪の駅から距離があるのが少しばかり難点だが、近隣に大きな公園があるため「体を動かしたい」「トレーニングをしたい」という人にとっては魅力的な場所であることが分かった。自分たちの地域の魅力や、何を基準に選択をしているのかということは、実際にゲストをお迎えする立場になって初めて見えることを実感した。

 

 

 

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