インバウンドコラム

旅ナカマーケティングのOTA活用が観光事業者の可能性を広げる【日本の旅ナカ市場拡大のヒント】

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ツアーやアクティビティなどの旅ナカの消費が盛んなヨーロッパでも、ゲットユアガイドが創業した2009年当初、旅行者がツアーやアクティビティなどの体験をインターネットで予約すると考える人は多くありませんでした。実際に事業として大きく飛躍を始めるまでにも長い時間がかかっています。その主な理由は、当時ほとんどの旅行者がインターネット経由ではなく、トラベルデスクやコンシェルジュを通してツアーやアクティビティを予約していたからです。

長い休暇を取る欧米の旅行者は、飛行機のチケットやホテルに関しては旅マエにパソコンを使ってインターネット経由で予約をとりはじめていましたが、ツアーやアクティビティは旅マエでなく旅ナカの参加直前に予約していたため、インターネット予約は主流ではありませんでした。しかし、スマートフォンなどのモバイルデバイスの登場によって旅行者の予約手段は大きく変わり、従来型のトラベルデスクやコンシェルジュではなくスマートフォンからの予約に大きくシフトしてきました。

さらにコロナ禍を経て、オンライン予約の傾向はより顕著になっています。ゲットユアガイドが2021年2月に実施した欧米6カ国の旅行者の動向調査では、調査を実施した全ての国において半数以上がオンラインでの予約をすると回答しています。このことからもオンラインへのシフトは今後さらに加速していくことが予想されます。

(提供:ゲットユアガイド・ジャパン株式会社)

そんな旅ナカの予約動向を踏まえると、今後本格的に旅行が再開されれば、旅ナカの事業者全てにとってインターネット上でのマーケティングはますます重要になっていくでしょう。今回のコラムでは、旅ナカのマーケティングにおけるOTAの活用について説明していきます。

前回記事はこちら:旅ナカDXの2つの視点、「攻め」と「守り」で旅行者と事業者双方のメリットを生み出す

 

旅ナカのマーケティングの特徴

結論から言うと、旅ナカのマーケティングと他の旅行商品とのマーケティング手法に違いはありません。ほとんどの利用者が検索サイトなどで検索して旅先での体験を予約しています。つまり、検索サイトで上位に表示されるようにしたり、良い口コミをたくさん集めることが重要です。他の旅行商品と大きく異なるのは、商材の特性と利用者の予約タイミングです。

ホテルや航空券は旅行を計画する段階で予約することがほとんどで、特に海外旅行では数週間から1カ月以上先の日程から予約する傾向がありますが、旅ナカの商品は大半のケースでホテルや航空券よりも早く予約することはありません。

これは旅ナカの商品の傾向として、売り切れになることが少ない体験サービスや観光施設など在庫の制限が厳密に固定されていない商品が多いこと、また天候などの気象条件によって体験の質が変わる商品が多いことも要因として考えられます。例えばオーロラを見に北欧やアイスランドなどへ旅行を計画したとしても、自然現象であるオーロラの観測ツアーは、現地についてから予約した方が観測しやすい日程を選びやすく、利用者の予約リードタイムは直前になりがちです。

 

小規模事業者ほど、旅ナカOTAを活用するべき理由

旅ナカの事業者にとっても、マーケティングは重要です。ただ、煩雑で高い専門性が必要なので、その部分はOTAを活用すれば、少ない経営リソースを自社事業に集中させることが可能になります。これはEコマースなどの物販からホテルなどの旅行商材まで同じです。特にインターネットが発達した現代は、口コミなどで容易に商品の良し悪しが広がってしまいます。そのため、仮に大規模な集客に成功しても、商品やサービスそのもので満足していただけなければ短期的な成功にとどまるどころか、むしろ中長期的な成功を妨げる結果にもなりかねません。

マーケティングのOTA活用は、専門性が求められる業務をできるだけ自社で行わず、本質的な自社事業に関する業務以外はアウトソースできる体制を整えることが可能なため、特に創業初期の事業者にとって理にかなっています。

 

旅ナカOTAの選び方のコツ

ホテルの予約サイトというとほとんどの方がいつも使っている予約サイトの名前を挙げるられると思います。ただ、体験やアクティビティの予約サイトについては名前を挙げることができるでしょうか?

プレイヤーの顔ぶれがほぼ決まっているホテルOTAと比べて、旅ナカにおけるOTAはまだまだ世界レベルで突出した特定のサイトがあるわけではありません。またこれまでのコラムでも何度か書いている通り、旅ナカの領域は幅広く多くの商品カテゴリーのなかでさらに無数の商品が存在しています。

そこで、どのサイトに掲載すべきか悩んでしまうのですが、その際に着目すべきは、そのOTAが

・誰に向けて販売しているのか
・どのような商品を掲載しているのか

の2点になるかと思います。

例えばゲットユアガイドの場合、欧米豪のお客様が非常に多く、ヨーロッパでは突出した規模を誇っています。またアトラクションチケットからツアーや文化体験など旅行者にニーズの高いジャンルを幅広く掲載している反面、レストラン予約のような商品や現地での体験との関連が無いお土産品のような物販、バーチャルツアーなどは扱っていません。

販売しようとしている商品がそのサイトの利用者層や商品カテゴリーとマッチしていない場合、掲載できなかったり、仮に掲載出来たとしても効果は薄くなります。

ただ、注意が必要なのは、インターネットサービスの特性として、気軽に利用できる反面、気軽に乗り換えることも可能であることです。そのため、OTAにおいても、利用者層が大きく変わる可能性があります。

例えば、ブッキングドットコムやエクスペディアなどの海外ホテルOTAが日本に参入して多くの国内ユーザーを獲得しているように、ユーザーは、利用者のニーズに応えるサイトを選んでいきます。実際にゲットユアガイドでもワクチン普及に伴い旅行需要が大きく戻りはじめている北米において大きく売上を伸ばしています。

こういったことから、現時点で日本やアジア、欧米など特定の国に強いOTAでも、未成熟な旅ナカの状況では将来的に利用客層が大きく変わる可能性は非常に高いため、常にどのサイトが最適か見極めていく必要があります。

(提供:ゲットユアガイド・ジャパン株式会社)

 

OTAに掲載して終わりでなく、うまく活用する

たくさんの観光事業者と取引を行っていると、OTAはただ商品を掲載しているだけで高い手数料を取っているのではないか? と誤解されている方もいらっしゃいます。

国内外様々な会社が旅ナカにおいてOTAのビジネスを展開しているので一概には言えませんが、OTAとしてのビジネスはページを作って、掲載するだけでは成り立ちません。ゲットユアガイドを例に取ると、利用した旅行者の旅先での利便性の向上と掲載商品をより売れやすくするために下記のようなサービスをすべて無料で提供しています。

・旅行者向けのアプリの提供
・事業者向けのアプリの提供
・掲載コンテンツの14カ国語以上への翻訳
・魅力的な文章表現への書き換えや編集
・世界中でマーケティングの展開
・24時間体制のカスタマーサポート
・クレジットカードなど16の決済方法への対応
・観光施設の自社サイト向け予約システムの提供
・QRコードを利用した非接触型チケット販売のソリューション提供

こうした旅ナカの事業者が提供できない利便性を提供すると同時に、こうした機能を利用者のために改善し続けています。事業者は、ゲットユアガイドに商品を掲載するだけでこうした機能を活用することができるのです。

▲ゲットユアガイドの予約システムを導入したイタリア、ローマのダヴィンチ博物館の自社サイト(提供:ゲットユアガイド・ジャパン株式会社)

 

旅ナカを盛り上げるパートナーとしてのOTA

OTAは特性上、他の旅ナカの商品を広い地域で取り扱っています。そのためOTAを利用すれば、担当者を通じてまだ知見が溜まっていないような課題に対しての解決策を国内外の事例から見つけることができたり、気づいていなかった課題や可能性を客観的なデータなどで気づかせてくれることもあります。世界で成功している観光事業者のなかにはそういった知見を自社サイトなどにも活かすことでより効率を高めている企業も多くあります。

ゲットユアガイドは例年、高い顧客評価を得ている事業者を表彰する「ゲットユアガイド アワード」を実施していますが、2019年に受賞した事業者を招待して会食を催したところ、普段交流する機会の無い、異なる商品カテゴリーで、お客様から素晴らしい評価を得ている企業同士の交流が生まれるなど、業界横断的に活動するOTAならではの介在価値もありました。

マーケティングや集客のツールとしてOTAだけを利用する必要はないと思いますが、特に経営リソースが少ない旅ナカの事業者にとっては、OTAを利用することによって自社のサービス内容の向上に専念することが可能となる点は大きなメリットではないでしょうか?

 

筆者プロフィール:

ゲットユアガイド・ジャパン株式会社 日本オフィス代表
仁科 貴生

英国高校留学を経て米国カリフォルニア州立大学を卒業。楽天株式会社に入社後、楽天トラベルで主に北関東エリアでオンライン集客支援を行い、東日本大震災を契機に楽天社内でエネルギー事業の立ち上げに取り組む、その後メタサーチ大手KAYAKの日本事業の立ち上げやホテル予約サイトAgodaにて首都圏・東日本エリアでのインバウンド集客支援を経て2018年よりゲットユアガイドにて日本法人の立ち上げに従事。

 

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