インバウンドコラム

コロナ禍で重要性が高まるレスポンシブルツーリズム、実現に向けて旅ナカ事業者が取り組むべきこと

2021.07.16

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欧米などを中心にワクチン接種が進み、一部の地域では観光が徐々に戻りつつあります。こうしたコロナ禍において、SDGsや脱炭素など、環境への取り組みが一層注目され、サステイナブルツーリズムという言葉やその取り組みは日本でも浸透してきました。一方で欧米などでサステイナブルと同様に注目されている「レスポンシブルツーリズム」については、それがどういったことを含むのか、旅ナカ事業者がどういったことに取り組むべきなのか、また今後事業を展開する上でどのような点に気をつけ、どこまで踏み込むべきなのか、分かりづらさを感じている人も多いのではないでしょうか。

今回は環境への意識が比較的強い欧米の旅行者が多く利用するゲットユアガイドで、どのような取り組みを行っているかを軸に紹介していきます。

(提供:ゲットユアガイド・ジャパン株式会社)

 

レスポンシブルツーリズムの考えが進むハワイと日本の現状

世界的に見て、レスポンシブルツーリズム(責任ある観光)に積極的に取り組む地域の一つに、観光が主要産業で、2019年には年間1000万人を超える観光客を受け入れてきたハワイがあります。

ハワイ州のレスポンシブルツーリズムに関する情報サイトでは、レスポンシブルツーリズムを、「観光客もツーリズムを構成する要素であると捉え、観光客が意識や行動に責任を持つことで、より良い観光地形成を行っていこうという考え方であり、観光客自身の行動が地域や環境へ負荷を与えてしまうかも知れないことを認識し、自律した行動を実践していく、これからの観光の形」と定義づけています。

ハワイでの最近の調査から、住民の半数以上が観光客数の制限を望んでいること、8割近くが特に繁忙期における人気の観光スポットへの入場料の設定や予約制の導入を望んでいることがわかりました。つまり、観光地における住民の理解と観光の適切なマネジメントの重要性が増しており、レスポンシブルツーリズムへの取り組みは今後の観光業界において欠かせない要素になっています。

日本でもコロナ前には、京都など人気観光地におけるオーバーツーリズムが既に大きな問題として取り上げられ、昨年6月には観光庁とUNWTO駐日事務所が日本初となる「持続可能な観光ガイドライン」を策定するなど、国内での環境整備に向けた動きも本格的に動き始めています。しかしながら、レスポンシブルツーリズムはオーバーツーリズム以外にも非常に多くの分野や取り組みを内包しており、価値観の異なる外国人観光客が急速に増え始めた日本では、まだまだ理解が追いついていない分野となっています。

 

タビナカOTAゲットユアガイドが取り組むレスポンシブルツーリズム

ゲットユアガイドでは、社内有志によるレスポンシブルツーリズムグループがあり、持続可能な観光を実践するツアーや商品を推奨したり、社会、経済、環境にネガティブな影響を及ぼす商品を減らすことで旅行者が将来世代にわたって忘れがたい体験ができるように活動を行うことをミッションに掲げています。

具体的には、従来から新規の商品掲載に際し、全ての商品について、旅行者にとって必要な情報が揃っているか、翻訳に最適な文章表現になっているかなどのコンテンツチェックを行っており、レスポンシブルツーリズムの観点から明確に問題のある商品の掲載をこの過程でチェックしています。また既に販売中の体験についても、動物愛護など、掲載内容に問題がある場合、お客様の声などを元に商品を販売している観光事業者と内容の確認等を行ってきました。

様々なレスポンシブルツーリズムの取り組みの側面があるなかで、弊社内では下記の主に3つの柱に区分を絞っています。

・サステイナブルツーリズム(持続可能な観光)
・アニマルウェルフェア(動物福祉)
・ソーシャルジャスティス(社会的公正)

 

サステイナブルツーリズム(持続可能な観光)

UNWTOの定義によるとサステイナブルツーリズムは、「訪問客、業界、環境および訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光」ということになります。

ゲットユアガイドでは、観光事業者や組織が提供するツアーや体験がNGOや政府機関などの第三者組織にエコ認定を受けている場合に、商品ページにEco認証バッチをつけており、日本の観光事業者でも申請を行うことが可能です。

▲パートナーの旅ナカ事業者向けのエコ認証紹介サイト(提供:ゲットユアガイド・ジャパン株式会社)

エコ認定を受けるツアーや体験は、環境への負荷を最低限に抑え、GSTC(世界持続可能観光協議会)が定める以下の4つの判断基準において環境に望ましい影響を最大化させています。

・資源の保護
・環境汚染の削減
・自然環境の保護
・野生動物の保護

ハワイのマウイ島で体験できる以下のツアーは、Pacific Whale Foundationという持続可能な海洋環境と教育を行うNPOが認定したツアーです。全てのエコツアーは海洋生物学で学士を持ち認定を受けた臨海生物学者がガイドを行うことでツアーの環境負荷を最小限にし、ツアー参加者も理解を深めることができます。また中にはツアーの過程で子供向けに環境保護について短時間のレクチャーを行うツアーもあり、環境保護についての正しい知識をつけられるため、環境意識の高い家族向けに好評を得ています。

(提供:ゲットユアガイド・ジャパン株式会社)

2020年の認定開始から現在1300件以上のツアーがエコ認定を受けており、認定を受けているツアーの方が評価が高い傾向があることから、旅行者も環境に配慮したツアーや体験に参加したいと思っていることが伺えます。

 

アニマルウェルフェア(動物福祉)

欧米を中心に、観光に関わる動物の倫理的な扱いは年々大きなトピックになっています。日本でも倫理的ではないと感じさせる観光商品が訪日外国人からの口コミで否定的なコメントを受けるなど、その影響は無視できないほど大きくなっています。

しかしながら、ツアーの内容を吟味せず見た目の印象だけで非倫理的と誤った判断を受けることもあるため、ゲットユアガイドでは社内外のさまざまな基準に照らしあわせ、口コミ評価などを注視しながら、適宜社内で掲載の検討を行っています。

日本には文化や伝統に紐づいた動物のショーや体験が多くあり、口コミ評価で動物の扱いに関する懸念をあげる投稿も増えていました。しかし、適切に動物を取り扱っている体験も悪い口コミを受ける例もあり、事業者側でも動物福祉の観点は明示的に伝えることが重要ではないでしょうか。

 

ソーシャルジャスティス(社会的公正)

観光において、その土地の歴史や風俗、文化に触れることは旅の魅力のひとつですが、観光ビジネスが地域やそこで暮らす人々や生活を尊重しているかどうかは重要になってきています。
そこで、弊社のレスポンシブルツーリズムにおいては主に下記の5点に着目しています。

・地域社会への影響
・児童福祉
・スラムツーリズム
・性的コンテンツ
・ダークツーリズム

どのカテゴリーについても、観光が偏った意見や政治スタンスを助長することなく中立なスタンスを保ち、教育の観点から催行していること、地域住民や関わる人のプライバシーや人権が尊重されていること、観光体験自体で児童労働を利用をしていないことなどを重要視しています。

オーバーツーリズムなどの問題は地域社会への影響だけでなく、旅行体験の質自体にもネガティブな影響を与え、観光地としての魅力を損なうリスクを伴います。そのためゲットユアガイドでも、時間の分散に繋がる商品の提案を行っています。例えば、バリ島で人気のインスタグラムツアーでは、あえて通常と逆のルートでツアーを運行することで混雑を分散させるなど、地域への負担を減らしながら旅行者の満足度をあげる試みを行っています。

最近では、消費者の意識が、商品の生産過程での人権問題にも及んでおり、地域や環境に悪影響を与えない「責任ある観光」は旅行者のニーズになっています。2030年に6000万人のインバウンド集客を目指す日本では、観光事業者もレスポンシブルツーリズムの意味や意義を理解し、観光公害の助長につなげないだけでなく、それらを付加価値として捉えた上で事業運営や観光地経営を行っていくことが、今後より一層求められるのではないでしょうか。

 

筆者プロフィール:

ゲットユアガイド・ジャパン株式会社 日本オフィス代表
仁科 貴生

英国高校留学を経て米国カリフォルニア州立大学を卒業。楽天株式会社に入社後、楽天トラベルで主に北関東エリアでオンライン集客支援を行い、東日本大震災を契機に楽天社内でエネルギー事業の立ち上げに取り組む、その後メタサーチ大手KAYAKの日本事業の立ち上げやホテル予約サイトAgodaにて首都圏・東日本エリアでのインバウンド集客支援を経て2018年よりゲットユアガイドにて日本法人の立ち上げに従事。

 

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