第29回通訳案内士インタビュー山口和加子氏

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Guide Interview 第29回通訳案内士インタビュー 山口和加子氏 英語通訳案内士

流派にこだわらない実践的な指導

Q5. 講師としてはどのようなお仕事をなさっているのですか?日本人向け、外国人向けそれぞれについてお願いします。

日本人向けには、日本文化体験交流塾が外国人との交流を目的に立ち上げた国際茶道塾の塾長をしています。茶道、書道、華道、着付けができる通訳案内士の養成に力を入れており、こうした技能を身につけることによって、通訳案内士が自分たちでプロデュースしながら外国のお客様をおもてなしできるようになります。
講義と実習を通した実践的なカリキュラムを組み、たとえば茶道では、特定の流派にこだわるのではなく、どの流派のお茶室に行っても対応できるようにしています。

外国人向けには、企業の研修や、学生さん向け日本体験サマーキャンプなどのプログラムに参加する方々に教えています。
私が講師を担当することが一番多いのは、お茶の体験です。飲み方や所作の説明をしたあと、お客様にお茶を点てていただきます。お客様にとっては、浴衣を着て茶室に入るだけでも十分な体験です。
国際茶道塾のプログラムは、単に着付けをするだけでなくお客様が自分で浴衣を着られるようにする内容なので、日本で買った浴衣を帰国後も着ていただくことができます。これは無形のお土産だと思っています。

華道では、企業の研修や学生さんの団体の場合には、グループごとにテーマを決めて生けていただきます。個人で体験なさる方には、お一人でご自身のテーマに沿って生けていただきます。

書道を体験なさるお客様には、インタビューを通してご希望を伺ったうえで何を書くかを決め、私がお手本を書きます。書き順の説明やお客様の手を取って書くことはせず、見て感じたものを表現していただきます。けれども、たとえば「田」という字が水田を表していることを説明すると、お客様はさらにイメージを膨らますことができるようです。

Q6. 外国人に日本文化を教えるうえで、難しいのはどんな点ですか?

書道の時に、墨をするのが苦手な方が見受けられますが、それ以外は外国の方だからといって特に難しいことはありません。

お客様には日本の伝統文化は過去の遺物ではなく、現在生きている人間のものであり、これから先も私たちと一緒にあり続けるものだということをご理解いただくことを心がけています。これは、外国の方ばかりでなく日本の若い方々にも同様にお伝えしてゆきたいと思っています。

Q7. 日本文化を体験した外国の方からはどのような反応がありますか?好評なのはどのようなことですか?

海外のお客様からは、打てば響くような反応がダイレクトに返ってきます。また、言われたことを素直にその通りにやることの多い日本人とは違った反応も見られます。
たとえば、お茶の席ではお茶を飲んだ後「十分頂戴致しました」と言うものですが、1杯だけでなく、もうちょっと欲しいと言われる海外のお客様もいらっしゃいます。なかには3杯飲まれ方もおられました。

華道では、海外のお客様は単に美しい作品を作るのではなく、意味づけをしながら空間を埋めていかれます。
書道では、白と黒のコントラストや余白を残すことを楽しみ、感情によって文字の大小、太さ、かすれ具合を変えたアート作品を創っていらっしゃいます。

海外のお客様に好評なのは、着物の着付けです。着物を着ると大はしゃぎで、すぐに写真を撮ってメールで送ったりフェイスブックに載せたりしていらっしゃいます。

失敗も怪我の功名に

Q8. (前回インタビューさせていただいた平塚春子様からの質問です。)
お客様と初めて会う前には私はいつも緊張します。こうした緊張は何年ガイドの仕事をしても続くのでしょか?また失敗談がおありでしたら教えてください。

長年仕事をしていてもお客様に初めて会う前は緊張しますし、こうした緊張はあった方がいいと思っています。ただ、緊張していると笑顔になることができないので、緊張している自分を楽しむようにしています。

失敗談は、着物を着て東京タワーをご案内中に迷子になったお客様を探し回り、帯が解けてしまったことです。
けれども、ふと気が付いて、お客様の前で解けてしまった帯を直すところを見ていただいたら、着物の構造がよくわかったと喜んでくださいました。おまけに、「迷子になるとガイドが大変だから」と、それ以後はお客様が早めに集まってくださるようになったので、怪我の功名でした。

Q9.海外のお客様に日本に来ていただくためには、どうしたらよいとお考えですか?

日本が安定した治安を維持することがお客様にいらしていただく前提条件だと思います。安全であれば、子どもさんやご高齢の方々も日本にいらっしゃると思います。
昨年の震災後は、日本文化体験のお客様の数はツアーよりも早く回復しました。中国、韓国、インド、台湾、アセアン諸国など近隣諸国から参加される方が多いのですが、こうした国々の方からは日本の安全性が信頼されているのだと思います。

また、ブログやフェイスブックなどインターネットを使って日本についての情報発信を進めることが大切です。東日本大震災後は、インターネットで情報発信が行われたことが、訪日されるお客様の数の回復につながりました。これは、インターネットが普及していなかった阪神大震災の時との大きな違いだと思います。

<取材後記>
日本の伝統を大切にしつつ、新しい流れにも敏感に対応している山口氏の姿勢が新鮮でした。日本の伝統文化を海外に伝えるために今後も斬新な工夫を重ね、通訳案内士の活躍の場をいっそう広げてゆかれることでしょう。

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