第41回 通訳案内士インタビュー 河野貴代美氏

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第41回 通訳案内士インタビュー 河野貴代美氏

日本人の意識改革を

Q6.在日外国人の相談窓口では、どんな相談が多いのですか?

私が担当している英語の相談窓口に来るのはインド、フィリピン、バングラディシュの方が多く、相談内容は子ども手当の申請方法、保育所の入所方法、仕事の探し方、生活保護の受給方法、家庭内暴力など多岐にわたり、深刻な相談を受けることも稀ではありません。

なかには日本には話し相手のいない方もいるので、私はまずじっくりと話を聞き、その後、それぞれの相談内容を担当する窓口を紹介しています。夫の家庭内暴力を受けている人には外国人用駆け込みシェルターを紹介し、経済的な理由で子どもを学校に通わせていない人には就学援助について助言するといった具合です。外国人は日本のシステムを知らずに困っていることが少なくありません。

 

Q7.訪日外国人と在日外国人に接しておられますが、両者の共通点と相違点は何ですか?

私はもっぱらFIT(個人客)が多いので、プライベートでガイドを雇う富裕層のお客様と過ごす時間が長いです。お客様が当たり前のようにミシュランの星のついたレストランでひとり数万円のお食事をして高級ホテルに泊まる一方で、行政の相談窓口を訪れる人の中には帰りのバス代もないという人もいます。こうした両者を見ることで、私自身の中でバランスが取れ、視野を広げるのに役立っています。

また、訪日外国人に在日外国人のことを話すのもよいことだと思っています。他国に比べて厳しい日本の移民政策のことや、日本では日本国籍なしには選挙権を得られないことなど、相談業務を通して学んだことをツアーに反映しています。

一方、訪日外国人と在日外国人が共通して感じているのは、日本は融通がきかないということです。たとえば、外国人には刺青をしている人が多いのですが、日本ではプールでもお風呂でも刺青をしている人は断られます。
これは、単に融通がきかないことにとどまらず、日本の概念と外国の概念の違いを考慮せずに刺青を反社会的勢力と結び付け、日本のものさしを訪日外国人観光客にも当てはめる国際感覚の欠如でもあります。

 

Q8.より多くの外国人に日本に来て快適に過ごしてもらうためには、どうしたらよいとお考えですか?

外国語表記をもっともっと増やすことだと思います。私が以前住んでいたイギリスでは、町の中に何か国語もの表示がありました。
たばこについても意識レベルを上げ、分煙ではなくノンスモーキングをもっと徹底することです。

食事制限に関する意識は日本ではまだ低いと思います。日本にはベジタリアン向け食品の表記もなく、外国に比べると格段に遅れています。
日本では食べてはいけないということを尊重する意識がまだ低く、食べられないのはわがままだとか面倒だと思われがちです。こうした意識を改革しなくてはなりません。

外国人を日本に呼び込むためには、海外で視覚に訴えるPRをして、日本に来たいと思ってもらうことが大切です。
日本はいわゆるリゾートの国ではありません。歴史や文化を求めて日本に来る人がいますが、こうした人たちは日本への関心や意識の高い人たちです。それ以外の人たちに日本に来たいと思ってもらうには、視覚的なアピールが効果的です。
また、サムライやアニメなどの外国で人気のあるものをキーワードとして取り込んで情報発信し、日本への入口を増やしていくのもよいでしょう。

<取材後記>
「失敗談の方が聞く人の中に入ってゆくから」と、研修の講師を務めるときには敢えて自らの失敗談を披露し、ツアーでは不機嫌なお客様の近くにいることを自らに課したという河野氏。
にこやかで明るい語り口の中にも、自分に何ができるのか、何をすべきなのかを客観的に分析し、実行に移してゆく強い意志と精神力を感じました。

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