インバウンド事例

2018.04.28

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秋田犬が歌って踊る動画が大ヒット!インバウンド誘致に成功した「秋田犬ツーリズム」

事例のポイント

1
自分たちが売りたいものよりも、世界から知られているものを見極める
2
リピーター率の高さと交通の便でターゲットを選定
3
エッジの効いたアイデアで、他の観光PR動画と差別化
4
観光情報の検索から宿泊までワンストップ予約

秋田犬(あきたいぬ)のアイドルグループが歌って踊るPR動画を配信し、世界中で話題を呼んだ一般社団法人秋田犬ツーリズム。政府が観光先進国への施策の一環として「日本版DMO」の形成・育成を推進する中、地域連携DMOとしていち早く登録されたことでも知られている。世界的に知名度の高い「秋田犬」を軸に地域活性化とインバウンド誘致に取り組んできた秋田犬ツーリズムの、これまでとこれからを紐解く。

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写真提供:大館市観光課

 

秋田犬ツーリズム設立の経緯

秋田犬ツーリズムは2016年に、秋田県北部の大館市、北秋田市、小坂町の3市町が手を取り合って誕生した。秋田県では人口減少という切実な課題を抱えており、現在約99万人の総人口が、2040年には70万人を割り込むと予想されている。こうした背景から「住む人口は減っても来る人を増やそう」というコンセプトのもと、観光誘致による地域消費の拡大を推進する組織として設立された。現在は上小阿仁村も加わり、それぞれの特徴を生かした広域的な取り組みを進めている。

画像2:秋田犬会館

写真提供:大館市観光課

 

秋田犬の動画が、台湾マーケットを中心に大ヒット!

認知度の低いこの地域に訪日客を誘致するには、メジャーな観光地を巡り終わったリピーターが主要ターゲットになると睨み、リピーター率の高い台湾市場に焦点を絞った。さらに台北からは函館空港と仙台空港に定期便が運航しており、両空港間に位置するこのエリアへは観光の周遊ルートが描きやすいことも台湾客を取り込む後押しとなった。「積極的なデジタルマーケティング」と「受入体制の充実」を柱にインバウンド戦略を進め、中でも秋田犬をフックとしたPR動画は公開2週間で100万回再生を突破るほどの大ヒットを記録。国内外約300件のメディアでも取り上げられた。動画の拡散は、Googleが運営する「TrueView」機能(YouTube内で展開される動画広告フォーマット)を活用したほか、台湾の広告代理店PILOTの協力を得て展開したため、全再生回数の74%が台湾での再生だったという。

 

世界的な人気を誇る秋田犬が、地域の認知度向上に貢献

顔はモフモフの秋田犬、体が女性のアイドルグループが歌って踊る動画『Waiting4U〜モフモフさせてあげる〜』が誕生した背景には、地域の認知度向上という狙いがある。そのため、まずは海外の人にこのエリアを知ってもらうために、世界的な人気を誇る秋田犬(大館市発祥)をフックにした動画を作ろうと考えた。また、動画制作にあたり、全国で多数配信される観光PR動画の中で埋没しないように、エッジの効いたアイデアが採用されたという。その結果、動画は世界中で反響を呼んだほか、「PRアワード・アジア2017」で金賞及び銅賞を受賞するという快挙を成し遂げた。 


動画リンク:
https://www.youtube.com/watch?v=pyobqOPGPCI

 

情報発信と受入体制を強化し、地域全体でインバウンド誘致

動画の配信以外にもさまざまな施策を展開してきた。具体的には、ウェブサイト上での観光情報の検索から宿泊予約までのワンストップ化、台湾の訪日旅行サイト「Travel98」へのエリア情報の掲載、ユーチューバーを起用した農家民宿体験の動画配信など、FIT向けに積極的な情報発信を行なってきた。さらに、台湾旅行エージェントを招聘した「FAMトリップ」の開催、「Visit Japan Travel」での海外旅行エージェントとの商談、「外務省地方視察ツアー(10か国の大使館関係者の受入れ)」などの直接セールスも実施している。受入体制の整備においては「インバウンド対応おもてなし研修」や「地域版指さし会話帳」の作成などに取り組んできた。また、地元の人たちにも参加してもらえるイベントを開催することで、域内の観光に対する気運や意識を高めてもらうよう促している。

台湾旅行エージェントFAM商談会台湾旅行エージェントとのFAMトリップの際の商談会

 

数々の施策が実を結んだ秋田犬ツーリズムの今とこれから

動画配信を突破口にさまざまな施策を進めてきた結果、同地域への訪日客数は堅調に推移している。4市町を訪れた外国人宿泊者数は、2015年の4233人から、2017年には9342人へと増加し、2年間で約2.2倍となった。また、地域内を通る秋田内陸縦貫鉄道の外国人団体客は2016年度に初めて1万人を突破し、2017年度には2万人を突破するほどの好調ぶりだ。小坂町にある日本最古級の芝居小屋「康楽館」も、入館者数が2016年の1400人から2017年は5400人へと大幅に拡大している。

画像3:康楽館
芝居小屋「康楽館」

今後は台湾から主に欧米の秋田犬好きにターゲットを広げていくとともに、より一層秋田犬にこだわり、秋田犬プラスアルファの商品づくりや体制づくりに注力していくという。また、「紅葉」「樹氷」「マタギ文化」「鉱山の歴史」といった潜在的観光資源の掘り起こしや、古民家リノベーションを中心とした地域再生プロジェクトにも取り組んでいる。

「住む人口は減っても来る人口を増やそう」というスローガンのもと、インバウンドに視点を向けて邁進してきた秋田犬ツーリズムの挑戦は、この先もまだまだ続きそうだ。

 

取材協力:一般社団法人秋田犬ツーリズム

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